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食育の世界にご案内します。
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チーフの松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
健康維持に不可欠なカリウム。その源は地下1000メートルのカリウム鉱脈にあり、その採掘現場はひとつの地下都市になっていた。
そこでレストランを経営していた料理人ラザフォードによると、地下都市には
「オーガニック御法度」
という謎のルールがあった…。
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アメリカに来るまでは知りませんでしたが、「オーガニック」という単語を発音するときは「ガ」にアクセントを置くようです。
僕はずっと「オ」にアクセントを置いてましたが、そうぢゃなかったみたいで。
しかもその「オ」、ラザフォードの発音をよ?く聞いてみると、エとウとオを26:9:52で混ぜたような音でした。
(あれ? 足してぜんぜん100にならないぞ)
それ以来、僕は懸命に「オーガニック」の発音を練習したのです。
「エゥオオ」?「ガァァァ」?ニック。
風呂あがりに鏡の前で発音練習をしてみたのですが、僕の口の形はまるで
「そうとは知らずK1ファイターのプラカーオに喧嘩を売ってしまったヒョットコ」
のようでした。
さて、
「オーガニック禁止」のポスターがあちこちに貼られている地下都市。
ラザフォードのレストラン「過小評価」(←店名です)にも、そのポスターが貼り出されています。
ポスターには、キャメロン・ディアスそっくりの美女。
「オーガニック、ノンノン」
という、いまどきかなり恥ずかしいキャッチフレーズ。
地下都市のキャンプには集会施設があり、そこでたまに採掘マンの研修が行われるそうですが、研修のお題目のなかにも
「恐怖のオーガニック」
「怪奇! オーガニック」
というのがあるそうで。
◆◆◆
ここで掘り出されたカリウム鉱は、精製されてから2000キロ離れた港に運ばれます。
そこで巨大な貨物船に積まれて世界各国に運ばれるわけです。
この貨物船もなんとオーガニック禁止になっています。
ちょっとでもオーガニックが混じっていたら、その貨物船は「失格」です。
船体をきれいに掃除しなければならなくなります。
なぜそこまでオーガニックが嫌われるかというと、オーガニックは爆発するからです。
「爆発?」と、僕は言いました。「どゆこと?」
英語の聞き取りに慣れたわけではないので、ラザフォードが本当に「爆発」と言ったかどうか、自信がありませんでした。
いまはアラスカで木こりのために料理を作っているラザフォードは、ゆっくりと言いました。
「爆発だ。バ・ク・ハ・ツ。カリウムは肥料にも使うが、工業用にも使うっていったろ? 何に使うのかはオレもよく知らんのだが、いろんなものを作るんだろう。とにかく工業用に使う。その工業用というのがクセモノでね。原料のカリウムのなかにオーガニックが混じっていたら、工場が大爆発するらしい」
「オーガニックだったらなんで爆発するわけ?」
「オレは化学者じゃない。爆発のメカニズムは知らんよ。とにかく爆発する。これまでにも悲惨な爆発事故がいくつもあったようだよ」
「いやそういう意味じゃなくて…。オーガニックのカリウムって、なんのこと? オーガニックのカリウムと、オーガニックじゃないカリウムがあるってこと?」
「あー」それまで黙って話を聞いていた(正確にはサンドイッチを口の中いっぱいに押しこんでいた)スケタローが、いきなり声をあげました。「自分は化学の学位を持ってるんでね、あんたのいうオーガニックの意味がわかったよ。有機化合物という意味だな?」
(タクアン航空のメタボ操縦士、スケタローについてはここをクリック)
ああそうか。
やっと意味が分かりました。
僕はずっと、「化学農薬や化学肥料を使わない」という意味のオーガニックを想像していたのですが、そうじゃありませんでした。
「有機化合物」という意味の、オーガニックだったのです。
あの、炭素(C)が複雑に並んでいるやつです。
つまり、生成されたカリウムに、ちょっとでも有機化合物(たとえば髪の毛だってそうだし、かじったハンバーガーからこぼれ落ちたパン屑もそうです)が混じっていたら、工場が大爆発するということです。
ですので、採掘現場でも、港でも、カリウムに有機化合物が混じらないよう、神経を使っているのでした。
だから、
「オーガニック、ノンノン」
なのでした。
(カリウムの話はこのへんで終わりとするかあ)