(前回までのあらすじ)
デスラー総統(厚生労働省)から、特定検診・特定保健
指導の実施を命じられた軍人(健康保険組合)たち。
勝手がわからず右往左往する軍人たちに、どっと群がる
武器商人(保健指導プログラムのベンダー)たち。
混沌とした状況から逃げるように、松宮園生は故国
ガミラス星を脱出し、隣国イスカンダル星に向かったの
でした…。
「宇宙戦艦ヤマト」を知らないヤング(←死語)の皆様、
分かりにくくてゴメンネ。
◆◆◆
イスカンダルの人々は早くから保健指導に取り組んできました。
多くのトライ&エラーを経験しています。
その結果、さまざまな経験とノウハウが蓄えられています。
イスカンダルでの、保健指導の歴史について説明しましょう。
イスカンダルは建国230年という若い星ですが、今から100年前にはすでにだいぶ、メタボな人が目立つ国になっていました。
当時、メタボな人のことを「チャンキー」と呼んでいたそうですが、地球の日本語に直すと「ぽっちゃり」とか「ふくよか」という感じのようです。
「ぽっちゃり」って言うと、あまり悪いニュアンスはありませんね。
「ぽっちゃり型のかわいこちゃん(←死語)」が好きな男性はたくさんいます。
「チャンキー」も同様に、わりといい意味で使われていました。
とはいえチャンキーも度を超すと不健康だ、という意識もあったみたいで、
「チャンキー・ゴーホーム」
という「反戦ソング」ならぬ「反肥満ソング」をジェシー・ビブカという人が一生懸命歌っていましたが、ぜんぜんヒットしなかったそうです。
その後、イスカンダルはガミラスと戦争を始めてしまったので、メタボについてはどうでもよいと考える時代が半世紀も続きました。
生活習慣病で亡くなるより、戦争で亡くなる人のほうが圧倒的に多い時期でしたから、ある意味、やむを得なかったのかもしれません。
戦争の時代がようやく終わります。
勝ったイスカンダル星は、ガミラスから戦利品をガバチョ(←死語)と奪い取り、たいへん栄えました。
豊かさにあぐらをかいたイスカンダル人は、今度は遊びはじめました。
食べたいものを食べ、飲みたいものを飲み、行きたいところに行くようになったのです。
すると、肥満が増え、医療費もずるずると増加していきました。
遊びはじめてから10年もたったころ、人々は
「なんだかおかしいぞ、この星は?」
と思うようになります。
肥満が増え、いわゆるガンや心臓病に苦しむ人が増えている事実に、ようやく気がついたのです。
ここで、目ざとい商人たちは「チャンスだ!」と考えました。
メタボを治療したり、予防したりするサービスを売れば、儲かるぞ。
商人たちは、こうも考えました。
メタボの治療は、医者の領域だ。商人が素人頭でやれることじゃねえ。手を出すのはやめとこう。
しかしメタボの予防は、素人でもサービスを作れるんじゃねえか?
だって要するに、
「やたらと食うな」
「運動しろ」
「規則正しく生活しろ」
こんな訓練をする道場でも作って、月謝を取って商売すればいいんだろ?
というわけで、そんな道場がイスカンダル星の随所にオープンしました。
不思議な現象が起こりました。
月謝の高い道場には、会社の社長さんたちがこぞって「入門」してきたのですが、
月謝の安い道場には閑古鳥が鳴いたのです。
つまり、このころ保健指導サービスとして生き残ることができたのは、
「企業の経営者個人を対象としたもの」
つまり、パーソナル・ケアでした。
ガミラスとイスカンダルには大きな違いがあります。
ガミラスでは、
「企業の業績と社長の力量にはあまり関係がない」
とされていました。
むしろ組織の力がものを言う星でした。
その証拠に、ガミラスでは、有名企業の社長の名前はあまり知られていません。
これに対し、イスカンダルでは
「企業の業績は社長の力量に大きく左右される」
と認識されていました。
イスカンダルの大企業の社長はヒーローのように扱われ、有名人が多く、社長としての報酬も莫大なものでした。
つまり、イスカンダルでは「社長の価値」がものすごく高いとされていたのです。
そのため、社長にもしものことがあったら企業業績にマイナスの影響が出る。
したがって、社長個人の健康管理が特別に重要視されました。
当時のイスカンダルの保健指導は、この考え方にもとづいて行われています。
次のような特徴を持っています。
* 企業経営者の健康管理を主な目的としている
* 内容が手厚い
* 価格が高い
しかしこの情勢は、20年ほど前を境に、大きく変わりました。
戦略兵器が生まれてくるのです。
どう変わったかについては、次号にて。
(以下次号)
<追伸>
アメリカの権威ある医学雑誌「New England Journal of Medicine」に、
「肥満は伝染する」
という記事が載りました。
日本でも話題になったかもしれません。
「最近、太っちゃった」
「肥満って、伝染するのよね」
なんて会話はときどき耳にしますが、まさかマジでそれを研究している学者がいたなんてちょっとビックリです。
その学者によると、
あなたの同性の友人に肥満の人がいた場合、あなたもつられて肥満になる確率は60パーセント。
肥満の人と恋に落ちたり結婚したりした場合、あなたもつられて肥満になる確率は40パーセントだそうです。