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食育の世界にご案内します。
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チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
人間の健康維持に欠かせないミネラルのひとつ、カリウム。そのカリウムは、もとをただせばカナダの地下1000メートル深くに眠る巨大なカリウム鉱脈から来ているものだった。
流しの料理人ラザフォードは、そのカリウム採掘キャンプにあるレストランで働きはじめる。そこにはなんと「オーガニックは御法度」という不思議なルールがあった。
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採掘キャンプはちょっとした地下都市のようになっていました。
商店街のようなところもあり、ラザフォードのレストランもそこにあります。
キャンプとはいいながら、普通に商品を売ったり買ったりの「経済活動」が行われていました。
ちなみに使われている通貨はカナダドルです。
カナダドルは、貿易にたずさわる日本人のあいだでは
「キャンドル」
と呼ばれています。
俗称ですね。
アメリカのドルのことを米ドル(ベイドル)と呼んだりするのと同じです。
ろうそくの「キャンドル」とはイントネーションが違っていまして、
ろうそくのほうは「キャン」のところにアクセントを置きます。
これに対し、カナダドルのほうはどこにもアクセントを置かず、平坦な口調で発音します。
カリウムのキャンプ一帯はトンネル状の坑道で結ばれ、人々はクルマで移動しています。
複雑に繋がったり延びたりしている坑道の随所に、採掘マン(文法的に正しくは採掘メン)が住居を構えていました。
キャンプ全体の人口は2200人だったそうです。
太陽に縁のないところです。
最近は少しずつ光ファイバーによる採光システムが導入されつつあるようですが、ラザフォードがいたころは普通の電灯が坑道や商店街を照らしていました。
坑道のところどころに
「もっと光を」
というスプレーの落書きがありましたが、これはゲーテの最期の言葉を借用したものです。
地下は温度の高いところでもあります。
通常、地面を100メートル掘るごとに摂氏で3度、熱くなるそうです。1000メートルの深さにあるカリウム・キャンプは、60度ちかい温度になります。
ですのでエアコンは思い切り動いていますし、地上の空気を取り入れるための空気循環システムもフル稼働です。
圧力の問題も無視できません。
地下に降りれば降りるほど気圧が上がります。
まあこれは人間のほうが慣れるしかないのですが。
エレベーターなどは昇降スピードが速すぎないように配慮されていますし、わざと乗り換えを多くしています。
気圧の変化に体を慣らすためです。
圧力で怖いのは気圧よりも地面そのものの重さです。
もの凄い重量がかかっていますので、いつ坑道が潰れてぺしゃんこになるか分かりません。潰れるのは一瞬です。
坑道が潰れなくても、温泉やら天然ガスなんかが突然噴き出したら、これもキャンプ滅亡です。
だれひとり助からないでしょう。
ま、場所がら温泉だの天然ガスだのが出る確率はゼロに近いですが。
そんなところでラザフォードはレストランを開いていたのでした。
だいぶ稼いだはずです。
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カリウムは農作物の成長に欠かせない要素ですし、クドイですけど人間のカラダにとっても不可欠なものです。
しかしそれとは別に、工業用原料としてのカリウム需要というのがありまして、世界各地の工場で塩化カリウムが大量に消費されています。
錫(すず)や金のようなミネラルは(こいつらもミネラルの仲間です)、単独で存在しているケースがほとんどです。
「水酸化錫」
みたいなもの(化合物)はめったにありません。
「塩化金」
に至っては、まず皆無です。皆無どころか、作ろうとしてもなかなか作れません。
逆にカリウムとかナトリウムとかは、ほとんどの場合、
「塩化ナトリウム(食塩のこと)」
「水酸化カリウム」
みたいに、化合物として存在しています。
錫や金と正反対で、単独で存在することはまずありません。
つまり、カリウム鉱脈と言っているのは、単独のカリウムが固まっているのではなく、
「?化カリウム」
という形(化合物)で固まっているのです。
地下1000メートルの採掘キャンプで掘り出された「?化カリウム」は、そのまま地上に運ばれ、精製されます。
「精製」とは、いろんなものが混ざっているカリウム鉱石から、混じりけ無しの純粋な
「塩化カリウム」
や
「水酸化カリウム」
などを取り出すことです。
このときうまく精製できたものは、工業用原料になります。
じゅうぶんに精製できず、混ぜ物が残ってしまったものは肥料の材料になるのです。
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またまたアラスカのメトラカトラに場面を移します。
「そこまでは分かったよ」僕は言いました。「で、オーガニック禁止の話はどうなったの」
「慌てんなよ」ラザフォードはまたコーヒーをおかわりしました。「その話をするためにだな、あらかじめ塩化カリウムの精製の話をしとかなくちゃいかんのだ」
というわけで、オーガニック御法度の話は次回に持ち越しです。みなさんごめんなさい。
(以下次号)