ホーム > マツミヤ倶楽部 >

2007.06.17 14:49

カリウム・ユニバース 上巻

スポンサードリンク


食育の世界でなにかしてみたい人、活躍してみたい人、必見!
人気「野菜ソムリエ」と「プロダクション・チーフ」が
食育の世界にご案内します。

◆◆◆

チーフの松宮園生です。 

この話は、遅々として進まない「メタボ最北端」のシリーズに出てくる流しの料理人、ラザフォードから聞いたものです。

「メタボ最北端」のシリーズについてはここをクリック(↓)。
メタボ最北端 その1
メタボ最北端 その2
メタボ最北端 その3
メタボ最北端 その4

不届き者ラザフォードの失礼な人柄についてはここをクリック(↓)。
メタボ最北端 番外編

では本編に入ります。

◆◆◆

アラスカ州にあるメトラカトラという無人島に、忽然と姿を見せる木こりのキャンプ。
流しの料理人ラザフォードは、ウルフギャング・パック顔負けの料理を、そんな最果ての地で作っていました。

「ここ(アラスカ)はたしかに辺境の地だけどさ、うまい空気もあるし、おてんとうさまもあるからいいよ」キャンプの食堂でダベっているときに、ラザフォードは言いました。「カリウムのキャンプにはそれがない」
「カリウムのキャンプ?」
「カリウムだよ。原子番号19」

正確にいうと、ラザフォードは「カリウム」とは言わず「ポタシアム」と発音しました。どういうわけかメリケンはそう発音します。
ですので僕は最初なんのことか分かりませんでした。
ラザフォードが紙に
potassium
と書いてくれたのを、手持ちの電子辞書でチェックしてカリウムだと分かったわけです。

食育の講座とかに参加すると、管理栄養士さんあたりがこんな話をします。
「野菜を食べましょう。野菜にはカリウムがたくさん。カリウムは適度な血圧を保つのに重要なミネラルです」

就農準備セミナーなんかに参加すると、農協の営農指導員さんとかがこんな話をします。
「農作物を育てるのにふつうは肥料を使います。肥料に欠かせない成分はチッソリンサンカリ。この呪文、暗記しましょう。チッソリンサンカリ。さあ、みんなで…チッソリンサンカリ。もう一度…チッソリンサンカリ」

この呪文は、農作物の生育に不可欠な3要素、
窒素
リン
カリウム
のことを表しています。

つまり、カリウムを含む肥料で野菜が育ち、その野菜を皆さんが食べてカリウムを摂取し、血圧をコントロールしているわけです。

◆◆◆

カリウムは鉱物資源です。金の鉱脈が地中に埋まっているように、カリウムの鉱脈も地中に埋まっています。

小さな鉱脈は世界各地にあるようですが、カリウムの巨大鉱脈を持つ国は、世界に3ヶ国しかないそうです。
カナダ
ロシア
ドイツ
この3ヶ国です。
この3ヶ国が、皆さんの血圧の面倒を見ています。

先ほど書いたように、皆さんの体内のカリウムは野菜などを食べることで摂取するわけですが、野菜に与えられる肥料にカリウムが含まれています。
肥料に含まれるカリウムはどこから来るかというと、これらの鉱脈から来ています。

このカリウ鉱脈ですが、掘るのがすごく大変です。
鉱脈は地下1000メートルのところにあるのです。そこまで掘らなければなりません。
掘ったら温泉のように沸き上がってくる、というのでもありません。
まず地下1000メートルまで掘り下げたあと、そこではじめて「採掘」ができるわけです。

たいへんな仕事だ。
でも人間はそれをやっちゃいました。

カナダ中部にサスカチワン州というところがあります。
とある、地平線に囲まれた荒野。
まわりに何もないところにポツンと、3階建てのビルディングがありました。
見かけはなんの変哲もない建物です。

形も中肉中背のビルディングです。
人間じゃないけど、無理に BMI を計算すると、30くらいでしょうか。
(むやみに BMI を計算するくせ、われながら気持ち悪いす)

どってことない見かけの、ちょっと太めのビルディング。
そこが、地下1000メートルのカリウム鉱脈につながる入口でした。
流しの料理人ラザフォードがかつて招かれたのは、そんなところでした。

なんの変哲もないビルディングに入ると、なんの変哲もないエレベーターがあります。
ただのエレベーターじゃないのが分かるのは、
乗る前にヘルメットを渡されるとき。
目的階(=行き先)のボタンを押そうとすると、「B39F」なんてとんでもない数字が表示されるとき(戦闘機の名前みたいです)。
さすがにそのときは、ここが鉱山の入口なのだと実感します。

エレベーターを数回乗り換えて3時間もたったと思われるころ、地下1000メートルに到着します。
気圧の問題もあるので、エレベーターでの下降や上昇はゆっくりと行われます。
本来はものすごく暑い、というか、摂氏60度にもなりますので「熱い」はずですが、強烈に温度調節をしているので、地上の涼しい夏くらいの暑さに抑えられています。
温度調節、要するにクーラーですけど、クーラーの稼働エネルギーはすべて地熱でまかなっています。

エレベーターから踏み出したラザフォード。
そこで彼を待っていたのは、フォードのエクスプローラーでした。

地下1000メートルは舗装された坑道(トンネル)が巨大なアリの巣のように何キロもつづく世界でした。
ラザフォードを乗せたエクスプローラーは、その狭い坑道をキャンプまで走ります。
坑道は不必要に長いわけではありません。かつてはカリウム鉱石の採掘現場だったのが、採掘が進むにつれて奥へ奥へと延びていったものです。
それがいまでは、何キロにもなっているわけです。

◆◆◆

場面はメトラカトラのキャンプに戻ります。

「びっくりしたのはさ」コーヒーをすすりながら、ラザフォードは言いました。「キャンプに着いてみたら、小さな町みたいだった。2200人の住民がいる町だよ」
「地下都市になってるってこと?」
「SFみたいな立派なとこじゃないけどな。でもあれは地下都市だ。ケーブルテレビも見れたし、インターネットもできた。携帯電話も通じる」
「酒は?」
「こことは違って酒も OK だ。キャンプというより、普通の町なんだ。銀行もあればバーもある。セブンイレブンとマクドナルドがある。さすがに学校はないが、病院はある。で、おれはその町で、アンダーエスティメイト(過小評価)という妙な名前のレストランでシェフをやることになった。普通にお金をもらって営業するレストランだ。もしメシがまずくて客足が遠のけば、資本主義の経済原理で廃業というわけよ」

「ふーん」僕はいいました。「で、そこにはどのくらいいたの?」
「3か月ごとに2週間ほど、休暇で地上に出るんだが、そんな感じで2年くらいいたかな」
「よく続いたねえ」
「給料がいいからな。都会のサラリーマンなみの給料がもらえて、加えてレストランの利益の半分をもらった」
「なるほど」

「でもな、お前は食育のバウムクーヘン野郎らしいから教えてやるけどな」突然、ラザフォードは意地悪そうな目になって言いました。「カリウムの世界では、オーガニックは御法度なんだぜ」

「オーガニックが御法度?」
「そのとおり。オーガニックは御法度なんだ」
ラザフォードはそう言い、立ち上がりました。
「オーガニックは御法度なんだ」
彼はその言葉を繰り返し、張子の虎のように首を振りながら手洗に行ってしまいました。

(以下次号)

人気ブログランキング ← 応援クリックおねがいします。

  • ブックマーク:
  • このエントリーを含むはてなブックマーク
  • BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク
  • この記事をクリップ!
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • この記事をChoix!
スポンサードリンク

関連記事:3件

コメントを投稿