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2007.06.27 00:34

ホケンシドー年代記 その2

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◆◆◆

チーフの松宮園生です。

前回のあらすじ)
1600人の軍人(=1600の健康保険組合)に対し、デスラー総統(=厚生労働省)から命令が下りました。
「特定検診」と「特定保健指導」を実施せよ、任務に失敗したら罰金ぞ。
という恐ろしい命令でした。
すっかり途方に暮れる軍人たちの前に、謎の集団が現れました…。

◆◆◆

集団はイナゴの大群のように、軍人(健康保険組合)に襲いかかります。
「特定検診はわが社にお任せを」
「保健指導はぜひわが社に発注を」
口々に叫ぶイナゴたち。
松宮園生も仕事が欲しかったのですが、もともと競争に慣れていないのと、
(ここでわめき散らしても仕事にはならんなあ)
と思ったのもあり、声を張り上げるのをサボっていました。
ただ、自分だけ白けていると同業者から何を言われるかわからないので、口パク(くちぱく)だけは、やりました。

その場はひとしきり伊○丹のバーゲンセールみたいな様相を呈していましたが、イナゴのやかましさに辟易したのでしょう、軍人のひとりがとうとう、
「あーウルサイ! おれたちは聖徳太子じゃないんだ。一人ずつ順番に喋れ!」
と叫びました。

へー。ガミラスにも聖徳太子っていたんだ。

いずれにせよ、イナゴたちはその一声でおとなしくなりました。

集団のなかから、比較的落ち着いた感じの女性が進み出ます。
「みっともないところをお見せして失礼しました。私どもは保健指導専門の武器商人の集まりで、アウトソーサー連合と申します」

「なんだその、大リーグ選手みたいな名前は?」
「それはサミー・ソーサ選手のことでございます。しかも彼はソーサです。ソーサーではありません。サミー・ソーサのサは伸ばさないのです」
女性は穏やかに、しかし間髪を入れずに知的なツッコミ。
「おお、そうか」赤面する軍人。

「私どもはアウトソーサーです。アウトソーサーというのは、『業務委託を受ける下請け』という意味です。つまり、私どもは皆様のしもべでございます。デスラー総統から難しいご命令が下ったと耳にしております。ぜひ、皆様のお手伝いをしたいと思ってやって参りました」
「こんなに大勢で、か?」
「私だけでご挨拶に参ろうとしたのですが、他の者も来たがりまして」その声には、迷惑そうな響きが少し、含まれていました。

「おれたちが困っているのにつけこもうというわけだな」と、別の軍人がいいました。
女性は落ち着き払って答えました。「つけこもうとしているのか、お役に立とうとしているのかは、私どもの話をお聞きになってから、お決めいただきとうございます」

「わかったよ」別の軍人がいいました。「で、あんたは代表者かい。おれたちはあんたと話せばいいのかい」
女性が「そうです」と答えようとした瞬間、集団がまた騒ぎだしました。
「わが社の話も聞いてください!」
「ぜひわが社にブレゼンさせてください!」
口々に叫びはじめました。

いつまでたっても収拾がつきません。

その様子に軍人たちはげんなりした表情を見せました。
しかし、デスラー総統の命令を実行するには、この連中に頼らなくてはならないのも事実です。

そのうち、軍人たちと武器商人たちは、思い思いに無秩序に名刺交換を始めます。
運のいい武器商人は商談の約束をすることができたようですし、そうでない商人も大勢いました。

◆◆◆

健康保険組合を軍人にたとえましたので、彼らにサービスを買ってもらいたいアウトソーサーたちは武器商人というたとえになります。
彼ら武器商人は何を売るのかというと、例えば、
「検診の結果(何万人、何十万人分)を記録するデータベースや解析ソフト」
「1対1の保健指導面談ができるカウンセラーみたいな人材」
「メタボ人間むけ体質改善レシピブック」
「メタボ人間に使ってもらう健康小道具。例えば生活習慣測定器とか体脂肪計」
「メタボ人間に参加してもらう健康イベント。例えば、ガミラス星を歩け歩け大会とか、みんなでやろう朝のラジオ太極拳」
「生活習慣病を予防するためのセミナー」
「スポーツジムでの、メタボ撲滅トレーニングメニュー」
「毎日の食事をデジカメで撮影し、画像をクリニックに送ったらクリニックからアドバイスがもらえるサービス」
「カスタムメイドのサプリメントを選ぶサービス」
「温泉(ただし爆発しない)を活用したストレス癒しメニュー」
こんなものを開発し、ひとつの「健康プログラム」にまとめあげ、武器として売るわけです。

効果的な武器を上手に有機的に組み合わせることができれば、立派な「戦略兵器」になります。
そうでないものは、ただの武器の集合体に過ぎません。

しかしほとんどの武器商人(=アウトソーサー)は、
「武器を上手に組み合わせて戦略兵器にする」
ことができませんでした。
というか、「戦略兵器」という概念がまったくありませんでした。
手近な適当な武器を集めて売ろうとしているだけだったのです。

例えばある武器商人は、たまたま知っている
「リンボーダンス振興協議会」
なる団体と組み、
「リンボーダンスを週に3回行い、管理栄養士▽※先生の考えた食事メニューに従って食べ、内臓脂肪を落とすプログラム」
を作りました。
それをある軍人(健康保険組合)にブレゼンしたわけです。

すると、相手はこんなことを言いました。
「リンボーダンスが体に悪くないのは何となくわかるし、管理栄養士の▽※先生のメニューが良さそうなのも確かにそんな気はするよ。でもさ、いろいろある中からリンボーダンスを選ぶ理由は何なの? 阿波おどりじゃ、ダメなのかい。食事メニューもさ、あんたは▽※先生のメニューを勧めるけど、☆△先生のメニューじゃ、だめなの?」
こんな厳しい(でもまともな)質問を受けて答えられず、凹んでしまいました。
正確にいうと、
「リンボーダンスの素晴らしさ」
「管理栄養士▽※先生のメニューの素晴らしさ」
は説明できたのですが、
「じゃあリンボーダンスは阿波おどりより優れているのか?」
「管理栄養士▽※先生のメニューは、☆△先生のメニューより優れているのか?」
には答えられなかったのです。

実際、同じ軍人のところに
「週に3回の阿波おどり、プラス、管理栄養士☆△先生の考えた食事メニュー」
という提案が、別の武器商人(=アウトソーサー)から出されていたのです。
その武器商人は、たまたま知り合いが役員をしている
「全国阿波おどり普及協会」
と提携していました。

リンボーダンスに阿波おどり。
うーむ。
なんつーか、何だって工夫すれば健康プログラムになってしまう感じだな。
「1日の半分を逆立ちで過ごすプログラム」とかテキトーに作れそうだな。
いいのか、そんなことで?

で、気の毒な健康保険組合さんたちは、
「リンボーダンスをとるか阿波おどりをとるか」
「▽※先生をとるか☆△先生をとるか」
を自分で決めなくてはならないハメに、陥りました。

「困った」全国の健康保険組合からボヤキが漏れました。「どのサービスを導入するか決めなくてはならないのに、決められない…」
「仕方ない、サイコロを振って決めよう」
「美人の営業マンがいるほうにしよう」
「見た目の値段が安いほうを選ぼう」

うーむ。

◆◆◆

デスラー総統が
特定検診
特定保健指導
の大号令を発表した数日後、松宮園生は仕事の都合でイスカンダルに引越をしました。

「宇宙戦艦ヤマト」を見ていらい、いつかは行きたいと思っていた憧れの星イスカンダル。

そこで彼が見たものは…。

数々の「戦略兵器」が蓄えられた保健指導先進国、イスカンダルの華麗な姿でした。

(以下次号)

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