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チーフの松宮園生です。
今回は食育でもなんでもないんですが、書きたいので書くなり。
僕の印象では韓国は美人と酒豪の国です。
むかしむかし、韓国の群山(クンサン)というところにイムさんという男がいました。
群山は、首都ソウルから南南西にクルマで3時間ほど走ったところにある、港町です。
このイムさんは、ふだんはある会社の事務員ですが、
「依頼者からの依頼にもとづき、日本から出張してきた若造ビジネスマンを潰す」
という特殊な仕事も担当していました。
潰すといっても、お酒の話です。
昼といわず夜といわず、一緒に酒を飲み、相手が潰れたらイムさんの任務は終わりです。
相手が潰れたあと、イムさんは何事もなかったように事務員の仕事に戻ります。
なんの目的で「潰す」のかは、依頼者によってさまざまです。
単に面白いから、というのもあるようです。
ま、その目的が何であれ、イムさんには関係がありません。
イムさんは依頼された仕事を、ゴルゴ13のように淡々と冷徹にこなすわけです。
潰されまい、と頑張る「標的」もいましたが、結局はイムさんの前に敗れ去るのでした。
さて、とある事情で僕もそのイムさんと「対決」しなければならないことがありました。
イムさんの恐ろしさは知っていたにも関わらず、対決を避けることができなかったのです。
もう10年前のことです。
こちら(日本側)は「アベちゃん」と僕の2名で群山に向かいました。
「アベちゃん」が何者なのかは説明を省略します。
体格のよい男だったので「こりゃ助っ人になる」と思って同行を頼んだのですが、体のわりにトウガラシに弱く、韓国に到着した初日からずっとフラフラ状態です。
どっちかっつーと、お荷物になってしまいました。
そういう使えない人物ですので、もう説明しないことにします。
さて、イムさん(日本語わりと堪能)と我々は、イムさんが仕掛けた罠、じゃなかった、イムさんお勧めのレストランで食事を始めます。
ちなみにランチです。
テーブルの上には、豪華絢爛たる韓国料理がずらり。
僕の大好物である、料理名は忘れましたが、まだ動いているタコの吸盤に韓国海苔を散らして食べる料理もあります。
さらに、韓国焼酎の一種、「真露(JINRO)」のボトルが12本…。
(昼間っから12本ですよ)
アベちゃんが僕の耳元でささやきました。
幸運なことにイムさんはこう言いました。
「じつはさっきから歯が痛くてネ。今日はあまり飲めないかナ」
(やったー! 潰されずにすむかも)
アベちゃんも僕も表情が明るくなりました。
ところがです。歯が痛いはずのイムさんの飲みっぷりの凄いことといったら。
韓国には自分が飲んだ酒を相手に返すという「返杯」システムがあるため、飲めないからといって断ることができません。
その返杯が繰り返されるので、自分と相手はいつも同じ量、飲むことになるのです。
したがい、イムさんが「真露(JINRO)」のボトルを5本空けたとすると、われわれも5本空けた計算になります。
アベちゃんはランチ開始後30分で前後不覚となり、僕もそのうちわけが分からなくなってしまいました。
ハッと気がつくと、ソウルに戻る長距離バスのなかにいました。
イムさんが、乗せてくれたのでしょう。
脳髄の半分がまだ、「真露(JINRO)」に浸っているかのようです。
アベちゃんは、座席2人分に横たわっていびきをかいています。
何も考えられずに呆然としていると、窓の外の景色が変わりました。
それまで田園地域を走っていたのが、ビルが濫立する都会の景色に変わったのです。
交通渋滞も始まりました。
ソウル市内に入ったのでした。
「チョソン・ホテルです」
日本語の案内があり、僕はアベちゃんを揺り起こしてバスから降りようとしました。
時刻は夕方の6時。
「やれやれ、今日は夕食抜きで寝ようか」と僕。
「そうっすね」とすっかり枯れた声のアベちゃん。
ところがです。
後ろのほうに座っていた乗客が、つかつかとやってきて僕の肩をたたきました。
振り向くと、イムさんでした。
ああ、イムさん。
呆然とするアベちゃんと僕にむかい、イムさんはニカッと笑って言いました。
「昼間はいい仕事ができなくて悪かったネ。歯が痛いのもおさまったヨ。これから飲みに行こう。店は予約してあるヨ」
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
日本・韓国・アメリカは何だかんだ言って政治的な価値観を共有している3国です。
この3国の、「食育」「保健指導」事情をカンタンに比べてみました。
(「食育」と「保健指導」は違う意味の言葉ですが、ここでは「健康増進の方法」という観点から同じように扱いたいと思います)
「食育」や「保健指導」という考え方がもっとも早くから一般に普及したのはアメリカです。
1977年に「マクガバン・レポート」と呼ばれる報告書が発表されて以来、アメリカでは食育や保健指導に関する法律が次々と整えられ、また民間企業が事業として積極的に取り組むようにもなっています。
重要なのは、これまで多くの企業が食育や保健指導に取り組んだ結果、
多くの成功
多くの失敗
を経験しているという点です。
その結果、
「どうしたら成功するのか、どうしたら失敗するのか」
の知識が蓄えられています。
日本はどうかというと、「食育」という言葉じたいは明治時代にすでに一部の専門家が使っていた記録がありますので、その意味ではアメリカよりも早かったといえます。
しかし当時の食育はまったく普及せず、成功の秘訣や失敗を防ぐノウハウなどが蓄積されるようなことはありませんでした。
その後100年のブランクがあり、近年になって「食育」という言葉があらためて注目されるようになりました。
2000年に「健康日本21」が発表され、
2005年に「食育基本法」が制定され、
2008年(来年)には特定保健指導の制度がスタートします。
「食育」「保健指導」の成功例・失敗例がこれからどんどん蓄えられていくことでしょう。
お隣の韓国はどうなっているでしょうか?
韓国は「伝統的な薬膳料理の国」として最近注目されています。
しかし国民の平均的な食生活の実態はわれわれが抱くイメージとは異なり、日本と同様に西洋化がどんどん進んでいます。
たとえば、韓国の青少年の4割以上は、ハンバーガー・インスタントラーメンといったファーストフード・加工食品を週3回以上食べています。
このように国民の食生活がどんどん西洋化してきているにも関わらず、まだ韓国では「食育」に該当するような活動はほとんど行われていません。
ただ、2005年に日本が「食育基本法」を定めたというニュースは韓国でも話題になったようで、
「韓国も食育に力を入れるべきだ」
という意見がぼちぼち出てくるようになりました。
このように、「食育」「保健指導」といった分野のノウハウがどのくらい進んでいるか、という切り口で言うと、大雑把には
アメリカ > 日本 > 韓国
といった進み具合だと思われます。
これはあくまで技術的なノウハウの蓄積という意味です。
もともとの食文化を比較するものではありません、念のため。
今回はここまで。
次回は、「韓国のゴルゴ13 イムさん」の話をします。
松宮園生です。
(前回のあらすじ)
1600人の軍人(=1600の健康保険組合)に対し、デスラー総統(=厚生労働省)から命令が下りました。
「特定検診」と「特定保健指導」を実施せよ、任務に失敗したら罰金ぞ。
という恐ろしい命令でした。
すっかり途方に暮れる軍人たちの前に、謎の集団が現れました…。
◆◆◆
集団はイナゴの大群のように、軍人(健康保険組合)に襲いかかります。
「特定検診はわが社にお任せを」
「保健指導はぜひわが社に発注を」
口々に叫ぶイナゴたち。
松宮園生も仕事が欲しかったのですが、もともと競争に慣れていないのと、
(ここでわめき散らしても仕事にはならんなあ)
と思ったのもあり、声を張り上げるのをサボっていました。
ただ、自分だけ白けていると同業者から何を言われるかわからないので、口パク(くちぱく)だけは、やりました。
その場はひとしきり伊○丹のバーゲンセールみたいな様相を呈していましたが、イナゴのやかましさに辟易したのでしょう、軍人のひとりがとうとう、
「あーウルサイ! おれたちは聖徳太子じゃないんだ。一人ずつ順番に喋れ!」
と叫びました。
へー。ガミラスにも聖徳太子っていたんだ。
いずれにせよ、イナゴたちはその一声でおとなしくなりました。
集団のなかから、比較的落ち着いた感じの女性が進み出ます。
「みっともないところをお見せして失礼しました。私どもは保健指導専門の武器商人の集まりで、アウトソーサー連合と申します」
「なんだその、大リーグ選手みたいな名前は?」
「それはサミー・ソーサ選手のことでございます。しかも彼はソーサです。ソーサーではありません。サミー・ソーサのサは伸ばさないのです」
女性は穏やかに、しかし間髪を入れずに知的なツッコミ。
「おお、そうか」赤面する軍人。
「私どもはアウトソーサーです。アウトソーサーというのは、『業務委託を受ける下請け』という意味です。つまり、私どもは皆様のしもべでございます。デスラー総統から難しいご命令が下ったと耳にしております。ぜひ、皆様のお手伝いをしたいと思ってやって参りました」
「こんなに大勢で、か?」
「私だけでご挨拶に参ろうとしたのですが、他の者も来たがりまして」その声には、迷惑そうな響きが少し、含まれていました。
「おれたちが困っているのにつけこもうというわけだな」と、別の軍人がいいました。
女性は落ち着き払って答えました。「つけこもうとしているのか、お役に立とうとしているのかは、私どもの話をお聞きになってから、お決めいただきとうございます」
「わかったよ」別の軍人がいいました。「で、あんたは代表者かい。おれたちはあんたと話せばいいのかい」
女性が「そうです」と答えようとした瞬間、集団がまた騒ぎだしました。
「わが社の話も聞いてください!」
「ぜひわが社にブレゼンさせてください!」
口々に叫びはじめました。
いつまでたっても収拾がつきません。
その様子に軍人たちはげんなりした表情を見せました。
しかし、デスラー総統の命令を実行するには、この連中に頼らなくてはならないのも事実です。
そのうち、軍人たちと武器商人たちは、思い思いに無秩序に名刺交換を始めます。
運のいい武器商人は商談の約束をすることができたようですし、そうでない商人も大勢いました。
◆◆◆
健康保険組合を軍人にたとえましたので、彼らにサービスを買ってもらいたいアウトソーサーたちは武器商人というたとえになります。
彼ら武器商人は何を売るのかというと、例えば、
「検診の結果(何万人、何十万人分)を記録するデータベースや解析ソフト」
「1対1の保健指導面談ができるカウンセラーみたいな人材」
「メタボ人間むけ体質改善レシピブック」
「メタボ人間に使ってもらう健康小道具。例えば生活習慣測定器とか体脂肪計」
「メタボ人間に参加してもらう健康イベント。例えば、ガミラス星を歩け歩け大会とか、みんなでやろう朝のラジオ太極拳」
「生活習慣病を予防するためのセミナー」
「スポーツジムでの、メタボ撲滅トレーニングメニュー」
「毎日の食事をデジカメで撮影し、画像をクリニックに送ったらクリニックからアドバイスがもらえるサービス」
「カスタムメイドのサプリメントを選ぶサービス」
「温泉(ただし爆発しない)を活用したストレス癒しメニュー」
こんなものを開発し、ひとつの「健康プログラム」にまとめあげ、武器として売るわけです。
効果的な武器を上手に有機的に組み合わせることができれば、立派な「戦略兵器」になります。
そうでないものは、ただの武器の集合体に過ぎません。
しかしほとんどの武器商人(=アウトソーサー)は、
「武器を上手に組み合わせて戦略兵器にする」
ことができませんでした。
というか、「戦略兵器」という概念がまったくありませんでした。
手近な適当な武器を集めて売ろうとしているだけだったのです。
例えばある武器商人は、たまたま知っている
「リンボーダンス振興協議会」
なる団体と組み、
「リンボーダンスを週に3回行い、管理栄養士▽※先生の考えた食事メニューに従って食べ、内臓脂肪を落とすプログラム」
を作りました。
それをある軍人(健康保険組合)にブレゼンしたわけです。
すると、相手はこんなことを言いました。
「リンボーダンスが体に悪くないのは何となくわかるし、管理栄養士の▽※先生のメニューが良さそうなのも確かにそんな気はするよ。でもさ、いろいろある中からリンボーダンスを選ぶ理由は何なの? 阿波おどりじゃ、ダメなのかい。食事メニューもさ、あんたは▽※先生のメニューを勧めるけど、☆△先生のメニューじゃ、だめなの?」
こんな厳しい(でもまともな)質問を受けて答えられず、凹んでしまいました。
正確にいうと、
「リンボーダンスの素晴らしさ」
「管理栄養士▽※先生のメニューの素晴らしさ」
は説明できたのですが、
「じゃあリンボーダンスは阿波おどりより優れているのか?」
「管理栄養士▽※先生のメニューは、☆△先生のメニューより優れているのか?」
には答えられなかったのです。
実際、同じ軍人のところに
「週に3回の阿波おどり、プラス、管理栄養士☆△先生の考えた食事メニュー」
という提案が、別の武器商人(=アウトソーサー)から出されていたのです。
その武器商人は、たまたま知り合いが役員をしている
「全国阿波おどり普及協会」
と提携していました。
リンボーダンスに阿波おどり。
うーむ。
なんつーか、何だって工夫すれば健康プログラムになってしまう感じだな。
「1日の半分を逆立ちで過ごすプログラム」とかテキトーに作れそうだな。
いいのか、そんなことで?
で、気の毒な健康保険組合さんたちは、
「リンボーダンスをとるか阿波おどりをとるか」
「▽※先生をとるか☆△先生をとるか」
を自分で決めなくてはならないハメに、陥りました。
「困った」全国の健康保険組合からボヤキが漏れました。「どのサービスを導入するか決めなくてはならないのに、決められない…」
「仕方ない、サイコロを振って決めよう」
「美人の営業マンがいるほうにしよう」
「見た目の値段が安いほうを選ぼう」
うーむ。
◆◆◆
デスラー総統が
特定検診
特定保健指導
の大号令を発表した数日後、松宮園生は仕事の都合でイスカンダルに引越をしました。
「宇宙戦艦ヤマト」を見ていらい、いつかは行きたいと思っていた憧れの星イスカンダル。
そこで彼が見たものは…。
数々の「戦略兵器」が蓄えられた保健指導先進国、イスカンダルの華麗な姿でした。
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チーフの松宮園生です。
僕は大和男児ではありますが、しぶしぶとはいえ一時的にアメリカに住んでいるので、どこか
「アメリカかぶれ」
の部分がいろいろあると思います。
世の中には
「ヨーロッパかぶれ」
の人もいます。
ラザフォードではないけど、日本人で「流しの料理人」をしている人と出会ったことがあります。
場所は東京で開かれた、どこかの食関係のパーティだったと思います。細かいところは忘れました。
その人は、世界のあちこちにでかけてさまざまな食材を口にして、帰国すると講演会をしたり出張料理教室をしたりしているのだそうです。
なんだかピリピリしている雰囲気の人でした。
目が怒っているのです。
なんで怒っているのかなー。
恐る恐る会話をしてみると、
「こんなくだらないパーティは不愉快だ」
ということでした。
(じゃあ、無理にいなくても、帰ればいいじゃん)
そう思いましたが、言うと暴れそうだったので言いませんでした。
その人、僕より頭ひとつ背が高かったし。
パーティが不愉快だったら、ふつう帰りますよね。
主催者じゃない限り、居残る義理はないわけだし。
でもその「流しの料理人」、苦虫をかみつぶしたような表情をしながら、いつまでもポツンとそこにいました。
不思議に思って恐る恐る会話を再開してみると、どうやら彼はこのパーティだけが不愉快なわけではないらしく、日本の食環境全体に対して不快感を抱いているらしいことが分かりました。
それを主張したいのに誰も聞いてくれないので、このパーティはくだらない、ということになったようです。
なにを主張したいかというと、たとえば、
「食料を海外から輸入しないと生きられない日本人は、馬鹿だ。もっと地元の食べ物を食え」
てなことを、おっしゃっておりました。
次に、
「自分は世界中の食材を食べた。ヨーロッパの有機農産物は素晴らしい。それに比べて日本の有機農産物のマズイことといったら、腹が立つ。日本では料理をする気にならない」
こんなことも仰せになりました。
同じ有機農産物なのに、どう違うのかと聞くと、
「ヨーロッパの有機野菜は味が濃く、深い。日本のは味が薄く、深みがない」
のだそうです。
その違いはどこから来ているのかと聞くと、
「ヨーロッパの土壌は固い。固い土地で固いまま農業をするので、野菜も鍛えられる。ヨーロッパの農家は野菜を厳しく育てるので、有機肥料をやりすぎたり、水をやりすぎたりしない。だから野菜が鍛えられ、濃く深い味になるのだ」
これに対して、
「日本の土壌は柔らかい。さらに農家がせっせと土壌改良をして柔らかくしている。ふわふわの土が素晴らしいと思っている。そんなところで育てた野菜は甘っちょろい。だから薄味で深みが出ない」
のだそうです。
「ああそうでしたか。よくご存じの方なんですねえ。よい方に出会えて、大変勉強になります」弱気な僕は丁寧にヨイショしました。「日本がヨーロッパのような美味しい有機農産物を作ろうと思ったら、土を固くすることが大事なんですね?」
するとその人はふふんと鼻を鳴らして「無理だよあんた。日本の土ではヨーロッパのような味の農産物はできないね」
「じゃあ、どうしたら?」
「美味しい野菜を食べたかったら、ヨーロッパに食べに行くか、ヨーロッパから輸入しなきゃダメだよ。日本はもっと、ヨーロッパの農産物を輸入するべきだ。そうしたら、自分も日本で料理をしようという気になれる」
「なるほど、日本はもっとヨーロッパの野菜を輸入するべきなんですね」弱気な僕は丁寧に言いました。「でもさっきあなたは、食料を海外から輸入しないと生きられない日本人は馬鹿だ、もっと地元の食べ物を食え、とおっしゃっていましたが…」
するとその人は顔を真っ赤にして、
「自分の言いたいことはそういうことじゃないんだ。分からん奴だな」
と怒りだしました。
◆◆◆
この「流しの料理人」、扱いにくい性格の人だなー、ということは別として、
「ヨーロッパの有機野菜は味が濃い。日本のは味が薄い」
というのはひょっとしたら事実なのかもしれません。
僕自身はヨーロッパの有機野菜を食べたことがないので、何ともいえませんが、
先日、僕を「バウムクーヘン野郎」と名づけた葉竹乃木夫さんからこんな話を聞きました。
レ○ル・マ○リードという有名なプロサッカーチームがスペインにありますね。
彼らがかつて来日したときのこと。
食事中に選手たちが、
「日本の野菜はイマイチおいしくない」
と言い始めました。
レ○ル・マ○リード専属の栄養士がそれを聞き、僕の師匠の葉竹乃木夫さんのところに相談がありました。
葉竹さんはレ○ルの選手が何を不満に思っているか知るために、インタビューをすることにしました。
レ○ルの選手はいいました。「もっと美味しい野菜を食べさせてくれ」
「美味しい野菜って、どんな野菜なわけ?」と、葉竹さん。
「そりゃ、オーガニック(有機)野菜だよ」
「ふーん。でもあんたら、オーガニック野菜とそうでない野菜の区別、つくんかい? 食べて分かるんかい?」
するとレ○ルの選手は目をまるくして言いました。
「えっ? あんたには分からないのかい?」
つまり、オーガニック野菜とそうでない野菜、レ○ルの選手には食べて違いが分かるということです。
しかも、
「えっ? あんたには分からないのかい?」
と驚いたということは、
「ふつう、食べたら誰だって違いがわかるだろ?」
という意味がこめられています。
皆さんはどうですか?
ブラインド・テスト(目隠しをして、テイスティングをする試験)で、有機野菜とそうでない野菜、区別できますか?
松宮園生です。
2000年に厚生労働省(実際には、当時はまだ『厚生省』だったと思います)は
「健康日本21」
という政策を発表しました。
国民のあいだで広く健康に対する意識を高めるために、国をあげてさまざまな
活動を行う、というものです。
「健康日本21」のなかでは、「2010年の日本はこうでありたい」という目標が設定されています。
たとえばこうです。
メタボ男性の比率が15パーセント以下になっているといいなあ。
メタボ女性の比率を20パーセント以下になっているといいなあ。
メタボ小学生の比率が7パーセント以下になっているといいなあ。
みんなが塩分控えめで、1日あたりの塩分摂取量がひとり10グラム未満になっているといいなあ。
野菜を毎日ひとり350グラム以上食べるようになっているといいなあ。
朝ごはんを食べない大人が減っているといいなあ(20歳代・30 歳代の男性の15パーセント以下)。
中学・高校生は全員、朝ごはんを食べるようになっているといいなあ。
その後、2005年に「食育基本法」という法律ができました。
「国も自治体も、それぞれ予算をとって、食育政策を考えて実行しなさい」
という意味の法律です。
同じタイミングで、「食事バランスガイド」というものが発表されました。
タレントの優香さんの CM で知った方が多いと思いますので、
「食事バランスガイドは最近できたもの」
という印象があるかもしれませんが、作られたのは2年前です。
さらに2008年(来年です)には、「特定保健指導」という制度が動き始めます。
これは、40歳以上のメタボな国民に対して、生活改善のための指導を行うというものです。
「健康日本21」
「食育基本法」
「食事バランスガイド」
「特定保健指導」
こうした一連の動きは、じつはある程度アメリカの歴史を参考に作られています。
◆◆◆
というわけで、健康についてのアメリカの歴史をみてみましょう。
マクドナルドが現れる前からアメリカ人にはメタボ傾向があったようで。
100年前のある文献に、
「この国(アメリカ)が肥満社会になっていくのが心配だ」
というようなことが書いてあります。
実際にアメリカ政府も当時から肥満対策をやるつもりがあったようです。
ところが1929年にウォール街で株が暴落し、あの世界恐慌が始まりました。
肥満対策どころではなくなってしまいました。
世界恐慌 → ヒトラー出現 → 第二次世界大戦。
この間、肥満対策はなされませんでした。
生活習慣病よりも戦地で亡くなる人のほうが多かったわけですから、無理もありません。
戦争がおわり、アメリカは「世界一豊かな国」として繁栄を謳歌します。
すると、ふたたび生活習慣病の脅威がムクムクと頭をもたげてきました。
ガンや心臓病で亡くなる人が急増したのです。
当然、治療にかかる費用も増えていきました。
大統領でいうと、ケネディとか、ジョンソンとか、ニクソンとか、フォードとか、カーターといった顔ぶれの時代です。
世界恐慌から半世紀ほどたったころの話です。
この5人のうち誰だったか忘れましたが(たぶんニクソンかフォードです)、
「どうもこの国はおかしいぞ」
と思ったのでしょう。アメリカ国民の生活調査というのを実施しました。
その調査のリーダーになったのが、上院議員のマクガバンという人です。
マクガバン上院議員は2年ほどかけて調査を行い、その結果を議会で発表しました。
有名な「マクガバン・レポート」です。
このレポートが公表されたとき、全米は大騒ぎになりました。
「アメリカ人の食生活はひどすぎる。そのせいで心臓病やガンなどの病気が増えた。このままでは、今世紀(20世紀)の終わりまでに、アメリカは医療費だけで破産する」
という内容だったからです。
どっひゃー(死語)。
大変です。
大統領もふくめ、政治家の皆さんもビビりました。
資本主義の盟主国であるアメリカが、医療費ごときで破産するわけにはいきません。
あわてて政府は、生活習慣病を減らすために「食育政策」を始めたのでした。
その食育政策には「ヘルシーピープル」という名前がついており、今でも実施されています。
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チーフの松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
バナナのムロ会社を買収しようと暗躍するテケテケ商事。腕利きのスパイ松宮園生の魔の手が、ムロ会社に迫る。大丈夫かムロ会社?
テケテケ商事の陰謀を防ぐため、メキマンが横浜に上陸。
テケテケ商事では、その知らせに怯えて大勢の社員が逃亡。残った数少ない社員でメキマンとの対決に挑む。
そんななか、僕の携帯にメキマンからメールが来ました…。
◆◆◆
メールをもらって驚きましたが、無視するわけにもいかない気がしたので、返事を書くことにしました。
「メキマン様。毎度お世話になりありがとうございます。ご依頼の件、検討させていただきたいと思いますが、その前にいくつか確認をさせてください。
貴殿はどのような方なのですか?
貴殿について質問すると、皆が顔を赤らめてモジモジするのはなぜですか?
それなのに貴殿が近づくと皆が逃げてしまうのはなぜですか?
なぜ貴殿はテケテケ商事がキトキト物産を買収するのを防ぎたいのですか?
メキマンからの返事はありませんでした。
返事がないまま、僕は最終調査地、松山に到着してしまいました。
◆◆◆
バナナは世界中で大量消費される果物です。
毎日莫大な金額の取引が、世界各地で行われています。
それもあり、バナナの貿易ビジネスには陰謀の噂が絶えません。
たとえば南米のコロ×ビアもそうで、あの国のマフィアさん(さん付けしちゃいました。怖いので)の資金源は麻薬だけではありません。
かつて、そんなことを知らない僕のところにコロ×ビアの会社から電話がありました。
「お電話ありがとうございます。食育プロダクション株式会社(http://shokuiku-pro.com/)です」
「バナナ・シンジケートちゅー者なんやけど、社長さん、おるかな?」
「社長の松宮です」
「さっそくやけどコロ×ビア産のバナナなんやけど、国として本格的に日本に売りこみたい思いましてな。マーケティングのプランニングをまっつんにお願いしたいんや。ご褒美やけど、バナナ1年分でどやろか? ええ話やと思いますけどなあ」
バナナ1年分って、サルかオレは。
それにまっつんて誰のことだよ。その呼ばれかた、キライなんだよ。トラウマ持ってるし。
なめるな、と答えて電話を切ると、またかかってきました。
「さっきのは冗談や」バナナ・シンジケートと名乗る人物は言いました。「報酬は×××万円くらいでどや思てます。期間は1か月。如何でっしゃろ」
1か月仕事して×××万円。
金額が僕の怒りをかき消しました。
僕はその仕事を引き受けました。
「世界中からこんなにたくさんバナナが日本に輸入されているにも関わらず、いまさら自国のバナナを売り込みたいコロ×ビア政府のために、彼らのバナナを上手にPRする方法を考え、企画書を作る」
そういう仕事でした。
しかし、そんな難しい仕事をたった1人でやる自信はありません。
報酬が×××万円ということは、2名でチームを組んで報酬を折半しても良い金額です。
というわけで、僕は仲間を募ることにし、知り合いに話を持ちかけました。
するとその知り合いが言いました。「あんたそれヤバイよ」
「どういうこと?」
「あんたが受け取るお金、マフィアの資金洗浄とかに使われるんじゃないの?」
「まさか」
「気をつけたほうがいいよ。実はオレも何年か前にコロ×ビアのバナナ会社とつきあいがあってさ…。直接の商売はなかったんだが、縁があってコロ×ビアのバナナ農場を見学に行ったのさ。そしたら本国に入れなくてさ、近くの島で1週間も待たされたんだよ」
「どうして?」
「農場はマフィアが仕切っててさ、よそ者が来たら殺すと言い始めたらしい。バナナ会社のエージェントがあいだに立って、マフィアをなだめようとしていたそうだけど、うまくいかなかった。で、そのまま日本に帰ってきた」
「そんなことがあったんだ」
「オレが知ってたバナナ会社のエージェント、日本人だけど、その何日かあとに行方不明になったよ」
「ひぇー(←死語)」
「あの国には関わらないほうがいい。くわばらくわばら(←死語)」
話を聞いてすっかりビビってしまった僕は、その仕事を断ることにしました。
ところがです。その夜にバナナ・シンジケートのほうから電話がかかってきて、
「報酬、前金で払うたるわ。まっつんの口座に振り込んでおいたさかいに。期待してまっせ」
「ちょ、ちょっと。あの、じつはですね」
「金は払うたよ。しっかり頼んまっせ。逃げたら、あかんで」
電話が切れました。
機先を制された感じです。
気がついたら失禁してしました。
洗濯機を回し、床を掃除しながら僕は泣く泣く決心しました。
生きていたかったら、仕事しよう。
失禁して、かえって気持ちが落ち着いたようです。
いやまてよ。
生きていたかったら、仕事しよう。
これって、普通のことじゃん、よく考えたら。
恐怖で鼻水まみれになりながら、自分にツッコミを入れる松宮でした。
で、それから必死に仕事をしまして、企画書なんかも山のように作って彼らに渡し、1ヶ月後に契約は終了しました。
とりあえず無事に1か月がたったわけです。
あれから数年をビクビクしながら過ごしましたが、今のところバナナ・シンジケートから連絡もなく、刺客が送られてくることもなく、国税局やFBIやCIAに追われることもなく、まだ生きてます。
コロ×ビアのバナナも、たまにスーパーマーケットで見たりします。
◆◆◆
いやー、あの1か月間は生きた心地がしなかったなあ。
でも、あれから連絡がないということは、
「松宮の仕事(企画書)はあきまへんな。あんなアホに仕事頼むのは、もう止めときまひょ」
ということなのかもしれません。
それはそれで悔しい話です。
連絡がほしいのか、ほしくないのか、複雑な心境です。
松山の路面電車に乗りながらそんなことを思い出していると、携帯にメールが届きました。
差出人:メキマン
ようやくメキマンから返事が来たようです。
(以下次号)
松宮園生です。
40歳以上の皆さんへ。
あと10か月です。
なにが10か月かというと。
あと10か月したら、皆さんのところに健康保険組合からたぶんこんな通達が来ます。
「○月×日に健康診断を行います。40歳以上の方は、全員かならず健康診断を受けましょう」
今までもそういう通達が来ていると思いますが、来年はもっと切羽つまった感じで、こういう通達が来ます。
「頼むから健康診断に来てくれ。キミが来てくれないと、オレたちが困ったことになるんだ」
なぜかというと、国の命令でこういうことが決まったからです。
↓
あー。えへん。
全国 1600 のかわいい健康保険組合たちよ。
わたしは厚生労働省である。
ひざまずいてよ?く聞け。
日本はメタボ大国になりつつある。
アメリカやイギリスほどひどくはないが、このまま何もしなければ彼らの仲間入りだ。
なんとかせねばならん。
そこでだ。
諸君のところに加入している大勢の組合員、ようするに保険証を持ってる人たちのことだが、諸君の力で内臓脂肪を減らしてほしいのだ。
自分のところの組合員の内臓脂肪は、自分のところで責任を持て、ということだ。
メタボを減らした組合には、苦しゅうない、褒美をとらす。
メタボを減らせなかった組合には罰金を科す。
来年の4月から、このメタボ撲滅作戦を開始する。
以上である。
諸君の健闘を祈る。
「宇宙戦艦ヤマト」を知っている人は、ガミラスのデスラー総統が軍人を集めて演説しているところを想像してください。
デスラー総統(=厚生労働省)の言葉に、集まった軍人(=健康保険組合)のなかからざわめきが起きました。
(そんなこと急に言われたって、できっこねぇよ…)
(無理だよ…)
そんなささやきがあちこちで交わされます。
ひとりの軍人が立ちあがって言いました。
「総統陛下。いや、総統閣下。いや、総統殿下」
となりの軍人が慌てて耳打ちしました。「総統は閣下だよ。閣下」
「総統閣下。ご命令とあらば必死にやりますが、どのようにやればよろしいのでしょうか?」
デスラー総統は気を悪くしたようすもなく、答えました。
「うむ。そういう質問が出ることは予想しておった。では教えてしんぜよう。まず、加入している組合員全員に健康診断を受けさせるのだ」
「閣下、それは今までもやっておりますが…」
「そうではない。『特定検診』という名前のついた、メタボ専門の健康診断をするのだ」
「はあ…」
「40歳以上の者は、すべてこれを受けさせるのだ。全員だぞ、全員」
「閣下。ぜ、全員でありますか?」
「全員だ」
またもや軍人のあいだでざわめきが広がりました。
「しかし閣下。全員に受けさせるということは、その『特定検診』を受けなかった個人は命令違反で射殺してもよいのでしょうか?」
「ばかもの」デスラー総統は言いました。「射殺してよいわけがなかろう。『特定検診』を受けるか受けないかは、本人の自由だ」
さっきよりはるかに大きなざわめきが起きました。
(意味が分からん…)
(全員に受けろと言っておきながら、受ける受けないは自由? どういうことだ…?)
デスラー総統はざわめきが収まるのを辛抱強く待ち、それから言いました。
「受ける受けないは個人の自由だ。ガミラス憲法により、個人の自由は保証されている。しかし健康保険組合である諸君は、全員が進んで受けるように、あらゆる努力をせねばならん。そういう意味だ」
今度は、その場がしん、と静まりかえりました。
デスラー総統は続けました。
「まだ先があるぞ、諸君。『特定検診』を受けてメタボだと判明した者がいたとしよう。おそらく、全体の何割かはメタボに違いない。メタボ人間が見つかったら、保健指導をするのだ」
「ほ、保健指導とはなんでありますか、閣下?」さっきとは別の軍人が立ちあがって言いました。「今までそんなことはやったことがありません、閣下」
「ではこれから研究したまえ。保健指導とは、メタボ人間を相手に食育をしたり、運動させたりすることだ。生活トレーナーと言ってもよい。この指導のことを『特定保健指導』と呼ぶことにする。諸君は『特定保健指導』のプログラムを作り、メタボ人間にそれをやらせるのだ」
(そんなこと急に言われたって、できっこねぇよ…)
(無理だよ…)
軍人たちはそう思いましたが、声にすることはできませんでした。
また別の軍人が立ち上がりました。「閣下。そのメタボ人間たちですが…。素直に保健指導を受けるとは思えません。『特定保健指導』のプログラムを嫌がった場合は、命令違反で射殺してもよいのでしょうか?」
デスラー総統はその軍人をジロリとにらみましたが、声はおだやかでした。「射殺はならん。プログラムを受けるかどうかも個人の自由だ。ガミラス憲法により、個人の自由は保証されている。しかし健康保険組合である諸君は、全員が進んで受けるように、あらゆる努力をせねばならん」
「し、しかし閣下。その努力もむなしく、メタボ人間がプログラムを拒んだ場合は…」
「その場合は、諸君に罰を下す。処刑はせぬが、罰金を科す」
その言葉に、立ちあがっていた軍人は気を失って倒れてしまいました。
「たとえて言うなら」デスラー総統の声が強まりました。「諸君は学習塾と同じだ。塾生が受験戦争に勝てば、諸君の評判は上がる。だが受験に失敗したら、諸君もただでは済まない。学習塾である諸君は、塾生の合格率を上げるために、あらゆる努力をせねばならん。よいか、メタボ対策は諸君の手にゆだねられている。作戦開始は来年の4月だ。健闘を祈る!」
演説を終えたデスラー総統は、満足げにその場を去っていきました。
残された1600人の軍人(=健康保険組合)はしばらくのあいだ、呆然としていました。
「全員に検診を受けさせろだと? どうやったらそんなことができるんだ?」
「メタボ人間は全員、食育だと? 保健指導だと? そんなの、やったことないぞ…」
不安そうに言葉を交わす軍人たち。
彼らがデスラー総統の宮殿からぞろぞろと外に出てくるのを、待ち構えている集団がありました。
何百人という集団です。
その何百人が、わらわらといっせいに軍人たちのところに駆け寄ってきました。
ほとんど目立ちませんが、松宮園生の地味な姿も、そのなかにありました。
「うわー。なんだこいつらは」
パニクる軍人たち。いやほんと、この集団はいったい何なのでしょうか?
(以下次号)
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松宮園生です。
アメリカにはナチュロパシック・ドクターという専門家がいます。
食育と東洋医学を足したような領域のお医者さんです。
ナチュロパシック・ドクターについての詳しい説明はここをクリック。
シアトルにバスティーア大学という有名な大学があります。
ナチュロパシック・ドクターになりたい人が通う大学です。
日本人留学生もちらほらいます。
友人の1人、ドクター・ヨロオネが2年前、念願のナチュロパシック・ドクターのライセンス試験に合格し、昨年開業しました。
ナチュロパシック・ドクターのところに来るのは、
「病気を治したいが、西洋医学には頼りたくない人」
「病気ではないが、専門家の力を借りて病気予防をしたい人」
こんな人たちです。
ある日、
ターザン栄養学の大家チイタッタ先生(メディカル・ドクター)
ヨロオネ先生(新進気鋭のナチュロパシック・ドクター)
松宮園生(バウムクーヘン野郎)
3人で食事をしました。
食事中、チイタッタ先生は
「誰にどういう口実でここの食事代を払わせるか」
を考えていました。
ホントにそう考えていたかどうかは本人じゃないので分かりませんが、そうに決まっています。
その証拠に彼は一計を案じ、食後のデザートが終わったあたりでヨロオネ先生にこんな提案をしました。
「なあヨロオネ先生。今まで診たクライアント(=患者)のなかで、もっとも風変りなケースを比べてみないか。ただし、治った話だけだ。で、相手より風変りな患者の話をしたほうが勝ちだ。負けたほうは、勝ったほうの食事代を払う。審判は、マツミヤ、お前がやれ」
で、そういうことになりました。
先攻はチイタッタ先生でした。
彼は、ネスレという大企業と契約をしていたころの出来事を話しました。
その話は一度書いているので、ここでは省きます。
(その話について知りたい人は、ここをクリック)
チイタッタ先生の話に大笑いしたあと、今度はヨロオネ先生の番でした。
ヨロオネ先生は話しはじめました。
◆◆◆
ヨロオネ先生の診察室に、派手な格好の年配の女性がやってきました。
「今日はどうしましたか、ミセス・メープル?」患者に安心してもらうため、優しく話すヨロオネ先生。
「オナラがでるのよ、先生」と、ミセス・メープル。「オナラが出るんです」
「人間なら誰でもオナラくらいしますよ」
「わたしの場合は、1分に1度、オナラがでるのよ。1分に1度ですよ。昨日の朝からずっとこんな感じで」
「そうでしたか。それはお困りでしょう」
「ホントですよ。理由は分からないんですが、音も匂いもしないのがせめてもの救いですわ。これで音や匂いがしようものなら、恥ずかしくて外出できませんもの」
「はあ」
「なんとかしてください先生。オナラが出続けるなんて情けなくて、情けなくて」
「分かりました」ヨロオネ先生は何種類かの薬草を混ぜ合わせる処方箋を書き、ミセス・メープルに渡しました。「バスティーア大学の付属薬局にこれを渡してください。ハーブのサプリメントを処方しておきました。3日たったらまた来てください」
3日後、ミセス・メープルが眉をつりあげて診察室に入ってきました。
「先生。先生の処方したサプリメントを飲みましたよ。そしたら症状が悪化したじゃないですか」
「悪化しましたか?」
「そうですよ。オナラは相変わらず続いてます。1分に1度、出てます」ミセス・メープルはメガネの奥からヨロオネ先生をにらみつけました。「悪化したように見えるのは好転反応です、なんて怪しいことを言うんじゃないでしょうね」
「どう悪化したんですか?」
「音が出るようになったんですよ、今朝から。昨日まで音がしなかったのに。音が出るんですよ。どうしてくれるんですか。医療ミスですか」
「そうですか。それは良かった」
「なんですって?」
「ミセス・メープル。これであなたの耳は治りました」ヨロオネ先生は言いました。「次はあなたの鼻を治すハーブを処方しておきましょう」
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(前回のあらすじ)
サプリメント村として名を馳せたテケテケ村ですが、もともとは
農業の村でした。
テケテケ村の村長は、観光農業を推し進めて村の収入アップを
はかりたいと思っています。
しかしひとりミスミのジイサンだけは、観光客が増えるのを頑なに嫌がるのでした。
◆◆◆
ミスミのジイサンが畑にロープをはり、立入禁止の立札を立てた話はあっと言うまに村じゅうに広がりました。
テケテケ村では隠し事ができません。
なんでも噂になってしまいます。
「ド田舎の村はこれだからなー」
小判君はあきれたようにつぶやきます。
「口、軽いし」
でも本件、第一発見者は小判君、あんたです。
村に「通報」したのも、あんたです。
噂をきき、村人たちがぞろぞろと、ミスミのジイサンの畑にやってきました。
張り巡らされたロープと、罰金10万円と毛筆で書かれた立札をながめています。
ミスミのジイサンはムッツリした顔で、野次馬を無視して畑仕事を続けています。
しばらくして村長があらわれ、ミスミのジイサンに声をかけました。
「困るよジイサン。こりゃやりすぎだ」
「ワシの畑だ。何をしようと勝手だろ」
「これから村をあげて観光客を呼ぼうってときだ。こないだの寄合で話したろう。それなのにこんなことをされちゃあ、テケテケ村はよそ者に冷たい排他的なところだと思われるじゃないか」
「それのどこが悪い。どうせワシはよそ者嫌いの頑固者じゃ」
「ジイサン…」
ジイサンはついに癇癪をおこしました。「オラオラ! 仕事の邪魔だ。みんな帰れ。帰れ」
まったく、トリツクシマもありません。
村長は辛抱強くミスミのジイサンの説得をつづけましたが、話は平行線のまま、日にちが過ぎていきました。
その間、農業コンサルタントの葉竹さんは何度かテケテケ村にやってきました。
村人たちが観光客を呼ぶための、準備を指導していたのです。
「ようこそテケテケ村へ」という看板を作ったり。
「テケテケ君」という名前のヘンなキャラクターを作ってあちこちに露出したり。
宝探しイベントのために宝を埋めたり。
「農業っぽいアスレチック」という意味で、「アグレチック広場」なんてものも作りました。
屋台なんかも準備しました。
観光客を迎える態勢が整いはじめると、じっさいに観光客がちらほらやってきます。
葉竹さんが全国あちこちでマメに宣伝してくれたのもあり、ふた月もすると、なんとなくニギヤカになってきました。
「テケテケ君」は不評でしたが、都会の子どもたちは宝探しやアグレチック広場には喜んでいました。
屋台も人気でした。ゆかりさん(ミセス小判)が猛烈に料理上手だったのが役に立ったみたいです。
村人は収入が増えて大喜び。
村長も上機嫌です。
その様子を知ってか知らずか、ミスミのジイサンはあい変わらず難しそうな顔で農作業をしていました。
当然、なにもしなかったジイサンの収入は増えません。
実のところミスミのジイサンの畑は村はずれの位置にあったため、観光客がそこまで足をのばすことはほとんどありませんでした。
ジイサンが心配したようなことは起きなかったのです。
◆◆◆
ある日、村長がミスミのジイサンの畑を通りかかったとき、「立入禁止」の立札が変わっていることに気づきました。
毛筆で書かれていたことには違いないのですが、書いてある内容が少し変わっていました。
不思議に思った村長は、雑草取りをしているジイサンに声をかけました。
「ジイサン。立入禁止の罰金が5万円になっとるようだが…。前は10万円じゃなかったか?」
「ああそれか」ミスミのジイサンは不機嫌な口調で答えました。「誰も入らんので、値下げした」
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「農業の多面的機能」
ちょっと堅苦しいけど、こんな言葉があります。
農家さんはあまり口にしませんが、
農林水産省の人とか
自治体の農政担当の人とか
農業学者の先生とか
農業コンサルタントとか
農協の課長さんとか
農業系のNPOの人とか
僕みたいな「バウムクーヘン野郎」とか
そんな顔ぶれの人々が好んでよく使います。
農業って、何をする産業なのでしょうか?
「そりゃ、野菜とか果物とか米とか作ったり、牛とか育てたりすんじゃねえの?」
ま、たいがいそう思いますよね。
じつはそれ、そうじゃないかもしれない。
ほかにもいろいろ、農業にできることがあるんじゃないかな?
こう考える人が増えてきました。
「ほかにもいろいろ、農業にできること」
これを、「農業の多面的機能」と呼びます。
先ほど書いたように、農家さんはあまりそーゆーことを考えていません。
忙しいし。
むしろ「外野」の人たちが一生懸命そんな主張をしています。
これはどっちが正しいというものではなく、農家には農家の、評論家には評論家の立場があるということです。
「ほかにもいろいろ、農業にできること」とは何かというと、例えば、
愛媛あたりで「みかん狩り」
茨城あたりで「いちご狩り」
青森あたりで「りんご狩り」
宮崎あたりで「マンゴーハント」
こういうのは農業というより旅先のレジャーといったほうがいいかも。
オランダあたりでは「ケアファーム」というのが発達しています。
日本でいう養護施設なのですが、みんなで畑を耕して作物を作りながら、心身の成長を目指しています。
このケアファームが実際に心身の成長をもたらしているのかどうかの研究も進んでおり、そういう効果が高いという結果がでています。
(日本にもそういうの、ありますよね)
食育の一環として子供がナスの収穫を体験したりすることがあります。
農作業を体験すると食に対する関心が呼び起こされ好き嫌いが減ると言われていますが、統計的にもそれは正しいようです。
農村というと、
「美しい自然」
「豊かな生態系」
「温かい素朴な人々」
「日本の伝統文化が残っている」
こんなイメージがあって、都会の人々の疲れた心をひきつけます。
そんなわけで、昨今は
「農業には観光客を呼ぶ力がある。農業を観光業と考えて客寄せをしよう」
と考える人が増えました。
◆◆◆
脱サラしテケテケ村で農業をはじめた小判大介君と妻のゆかりさん。
彼らは純粋に「いちごを作ろう」と思って農業をはじめたわけですが、先日、村の寄合に出席したら(こういうのは面倒でも出ておかないと、いろいろ困るのです)、葉竹乃木夫さんという名の農業コンサルタントのおっさんが
「農業の多面的機能」
についてなにやら能書きをたれていました。
要は、農業を観光業と考えたら(観光農業といいます)、収入が増えるかもしれないぞ、ということです。
そっか、ウチも「いちご狩り」すっかな。収入ほしいし。
葉竹さんの話を聞きその気になった小判君。
一方でこんなことを言うノリの悪いジイサンもいました。
「なにが観光農業だ。それで人がわんさと押しかけてきたらワシは困るぞ」
「ミスミのジイサン、あんたなにをいっとるんだ。収入が増えるんだぞ。なんの文句がある」
村長が困惑した顔で言いました。
村長としては、はるばる東京から葉竹さんという偉いコンサルタントのセンセイを呼んだ出前、葉竹さんを否定されるわけにはいきません。
しかしミスミのジイサンは頑固にぶつぶつ文句をいいつづけます。
「都会の不心得どもが押しかけてきたらワシの畑が踏み荒らされる。よそもんは小判の小僧だけで手一杯だ」
いきなり自分の名前がでたので小判君はぎょっとしましたが、黙っていました。
そっか、ミスミのジイサンは独身だから、山羊のメリーでは懐柔できなかったんだ…。
(小判君が山羊のメリーを使って村人を懐柔したいきさつを知りたいひとは、ここをクリック)
寄合の数日後。
小判君がミスミのジイサンの畑の前を通りかかると、畑にはロープが張られていました。
そして立札が何本か。
そこには
「立入禁止。入ってきたやつは罰金10万円」
と太い毛筆で書かれていました。
(以下次号)
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(前回までのあらすじ)
「筆のような野球のような場所」とは?
「テケテケ村を狙う魔法使いステマグさん」とは?
ほかにもいくつか謎を抱えたまま、とりあえずやみくもにロサンゼルスにやってきたマツオ。
鼻の向くままホールフーズ・マーケットに入り、サプリメントの種類の細かさにびっくり。
たとえばマグネシウムは、
酸化マグネシウム
硫酸マグネシウム
アシパラギン酸マグネシウム
が別々の商品として売られていたのです。
つまり、マグネシウム愛好家のなかに
酸化マグネシウム派
硫酸マグネシウム派
アスパラギン酸マグネシウム派
がいる、ということです。
驚いているところに、江戸譲二から電話がかかってきました…。
◆◆◆
電話の向こうで江戸譲二は言いました。
「ラベルに書いてある製造元は、ホントの製造元じゃナイヨ。サプリメントの販売会社はたいていOEM生産をしているカラネ」
「なんだそうなの」と、マツオ。「じゃあ日本と同じだね」
「日本と同じネ」江戸譲二。「だからOEM工場に行かないとネ」
「そっかあ。そうだよねー。あはははは」
「アハハハハ」
「あはははは」
何を笑ってるんだか。
◆◆◆
OEMとは、
Original Equipment Manufacturing(オリジナル・エクイップメント・マニュファクチャリング)
の略。
日本語でいうと
「受託製造」
という意味になります。
すなわち、OEM工場とは、受託製造をする工場のことです。
彼らは販売会社から依頼を受けて商品を作りますが、その商品は依頼主である販売会社のものです。
商品の名前は販売会社が決めますし、ラベル表示に記載されるのは販売会社の名前です。
OEM工場の名前はどこにも出てきません。
OEM工場は、いわば「影武者」です。
たとえば、サプリメントではありませんが、
サ○トリーの「フ○バン茶」は、フ○バンジェノールという機能成分が入ったお茶で、
抗酸化力が強そうなので僕は日本にいるときはよく飲みます。
このお茶、実際に作っているのはサ○トリーではなく、業界では有名なOEM会社が作っています。
サプリメントはたいがい、OEM会社が作り、それを販売会社が自分たちのブランドで売っています。
◆◆◆
笑い終わったマツオは、ぜいぜい呼吸しながら言いました。「で、OEM工場ってどこにあるの?」
「それはネ。カリフォルニアにはたくさんアルヨ。あとは自分で探しナサイ」江戸譲二は厳しい口調になりました。「ボク忙しいからネ。でもヒントをひとつあげるヨ。NNFA」
「NNFA?」
「NNFA」
そういって電話は切れました。
NNFAか…。どこかで聞いたことがあるなあ…。
マツオはコエンザイムQ10のチュアブル・サプリ(噛んで食べることのできる錠剤)をポリポリ食べながら、考えました。
都合よく、マツオの視界にキンコーズが…。
(キンコーズとは、パソコンをタイムレンタルしてくれるサービスのことをいいます。日本にもあります。
キンコーズに行き、お金を払ってパソコンの前に座れば、書類仕事をしたりインターネットを閲覧したりすることができます)
時代遅れの超ドイナカのテケテケ村出身のくせに、マツオは慣れた足取りでキンコーズに入りました。
さっそくパソコンの前に座り、グーグルで「NNFA」を検索…
分かりました。
NNFAとは、サプリメント関係の企業が集まっている、会員制の組織だったのです。
National Nutritional Foods Association (ナショナル・ニュートリショナル・フーズ・アソシエーション)
「全米栄養食品協会」
いわゆる、ロビー団体でした。
そしてそのサイトには、サプリメントを作っているOEM企業の名前がずらり。
マツオは思わずガッツポーズをしました。
こいつらにコンタクトすれば、道は開けるぞ。
◆◆◆
1分後、マツオはもう一度ガッツポーズをしました。
謎がひとつ、解けたのです。
かつて、忍者がこう言いました。
「アメリカにはサプリメントの聖地が2ヶ所ある。
ひとつは刈穂の国といい、太平洋を越えたすぐのところにある。
もうひとつの聖地は地名も分からない。
刈穂の国よりはるかに遠いところにあるらしい」
刈穂の国、というのは、カリフォルニアのことでした。
我々にはダジャレにしか思えないのですが、忍者にはマジで刈穂の国と聞こえたのでしょう。
そしてもう一つの聖地。
それは、東海岸のニュージャージー州だったのです。
日本から見たら、カリフォルニアよりはるかに遠いところにあります。
なぜそれが分かったか。
NNFAに加盟している数百社のメンバー企業のリストを眺めているうちに、マツオは気づきました。
ほとんどの企業が、カリフォルニアか、ニュージャージーの住所だったのです。
なるほどねえ。
ここ(ロサンゼルス)が終わったら、ニュージャージー州に飛ばねば。
満足げにつぶやくマツオでした。
◆◆◆
今回はここまで。
ところで、どこかで書かなきゃと思っていたのですが、よいタイミングがないので、ここで書いちゃうことにします。
日本では「サプリメント」とか「サプリ」とか言いますが、英語では「ダイエッタリー・サプリメント」と長々というのが正確な言い方です。
ダイエッタリーは「食事の」という意味。
サプリメントは「補助」という意味。
省略しないでちゃんと「ダイエッタリー・サプリメント」と言わないと、通じない場合があります。
といいつつ、「サプリメント」だけで通じる場合もありますが…。
ま、いちいちダイエッタリー・サプリメントと書くのはメンドーなので、ここでは今後もサプリメントと書くことにします。
(どっちやねん)
では次号もひとつ、ごひいきに。
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松宮園生です。
「バウムクーヘン宣言」に出てくる葉竹さんが、まだ駆け出しの若かりし頃の話です。
葉竹さんははじめ酪農家に飼料(ウシやブタなどの食べ物。干し草とか)を買ってもらう会社に勤めていたそうです。
入社してしばらくは、どこだったかの山のふもとで羊を飼っている農家のところに住みこみ研修をしていました。
そんなある日のこと。
葉竹さんは羊の群を遊ばせながら、自分もひなたぼっこをしていました。
もうしわけ程度に作られた柵のむこうに人影がありました。
その人物(男性サラリーマン風)が近づいてきました。
「いい天気ですねえ」その人が話しかけてきました。「それにたくさんの羊ですねえ」
「ああ」葉竹さんは寝そべったままで言いました。
「すごい数ですよね」
「すごい数だ」
「何匹いるんですか。てゆーか、羊の数えかたは何匹とかでいいんですか」
「いいんじゃねえの」葉竹さんはめんどくさそうに答えました。
「500匹くらいいるんですかね」と、その男性が言いました。
葉竹さんのなかにイタズラ心がわいてきました。彼は起きあがって言いました。「何匹いるか、当ててみるかい、おじさん。正確に当てられたら、羊、好きなのを1匹やるよ。そのかわり、外れたら1万円よこしな」
「じゃあ当ててみましょう」意外にも、その人物は賭けに乗ってきました。
彼は数秒間、羊の群をながめていましたが、すぐに言いました。
「511匹。どうですか」
葉竹さんは仰天しました。「正解だ。どうして分かったんだ」
「長年バードウォッチングをやってたんです。じゃあ、約束どおり羊を1匹もらいますよ」
彼は羊の群に入って、物色しはじめました。
その様子を見ながら、葉竹さんは言いました。「今度はオレがあんたの職業を当てようと思うんだけど、どうかな? 当てたらそれを返してくれ。外れたら1万円、払うよ」
「いいでしょう」その人物は答えました。「では当ててみてください」
「あんた、農林水産省の人だろ」
今度は彼が仰天する番でした「な、なんでわかったんですか?」
「聞きたいかい?」
「聞きたいです」
「じゃあ教えてやるよ」葉竹さんは言いました。「教えてやるからさ、その前にあんたが連れて行こうとして抱えているその犬、おろしなよ」
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松宮園生です。
(前回のあらすじ)
キューバに挑んだ目的はマンゴーだけではありませんでした。
ヤセノオオグイという植物に、メタボの特効成分がある、ということをキューカルという会社が発見しました。
僕はそれを使ってひともうけを企んだのです。
しかも、しめしめ、オニイサンにはこの価値が分からないようだったので、僕がすべて独り占めです。
ムフフ。
◆◆◆
キューバへの入国ビザの申請は1ヶ月前から抜かりなくやり、航空チケットも買い、泊まるところの予約も入れ、通訳も予約しました。
しかしそれ以外の準備はなんにもしてませんでした。
仕事に追われてバタバタしているうちに、あっという間に出発の前日になってしまいました。
前日の夜になって、僕は慌てはじめました。
なぬ(←死語)、まじ明日、出発じゃん…。
お金、日本円じゃマズイよな。キューバはドルだっけ?
いくら持ってけばいいのかな。
カード使えるのかな。
ガイドブックも買わないと。
着替え、たくさん必要かな?
ネクタイ、いるのかな?
荷物、あんまり多くしたくないしなあ。
パソコン持ってくなら変圧器も買わないと…電圧、何ボルトかな?
つーか、インターネット使えるの?
待てよ、キューバってどこにあるんだっけ?
こんな状態です。
で、夜中に焦りまくってバタバタと準備をし、一睡もしないで成田エクスプレスに乗ったのでした。
(註:このころ僕は東京にいました)
◆◆◆
アパートを出るとき、まだ開封していない封筒が玄関に落ちていたのを発見しました。
妙に古ぼけたクラフト紙の、地味な封筒です。
「東京都 松宮殿」
それだけ書かれていました。
えっ、これで届いたの?
まさかメキマンか?
ドキドキしながら封筒を手にしましたが、急いでいたのでとりあえず無造作にポケットに入れました。
成田エクスプレスのなかでそれを開封すると…
メキマンではありませんでしたが、英語で書かれた手紙が2通、入っていました。
読んでみます。
<1通目>
古ぼけて黄ばんだ上質紙に、タイプライターで打たれたものでした。
かすれて読みにくい英文を何とか読んでみると…。
日本人が書いた英作文でした。
書き手は、某食品系有名大企業A社の本部長さんのようです。
しかも、僕がコンタクトしようとしているキューカル社あての手紙でした。
こんな内容でした。
「キューカル社カルロス副社長殿。
お世話になります。
ヤミノテイオウから抽出した機能成分が本当に貴社のいうとおりの効果があるならば、大変素晴らしいことです。
日本人の食生活はますます西洋化してきており、それにともない肥満人口も徐々にではありますが増加傾向にあります。
とくに中年男性の腹の出具合には同じ中年男性として大いに危機感を抱いております。
今後、こうした脂肪撲滅型の健康食品が売れるようになると確信しております。
ぜひヤミノテイオウを商品化して日本に輸入したいと考えております。
つきましては、以下の資料をいただきたく、お手配のほどよろしくお願い申上げます。
1)ヤミノテイオウ抽出成分の成分表
2)臨床実験の内容と結果のレポート(論文)
3)抽出方法が分かるもの(製造工程)
これらの資料は、”どのように商品化をするか”の検討に使うとともに、日本で輸入・販売が許されるかどうかを厚生省に確認するためにも必要であります。
むろん、秘密保持には厳重に努めますとともに、秘密保持誓約書を差し入れます。
なにとぞよろしくお願いいたします
1988年6月14日。
A株式会社、商品開発本部長、ナカヤマ」
古ぼけているのも無理はありません。
1988年といえば、まだ昭和の時代です。
そんな古い手紙が、どういうわけか僕のところに送られてきたわけです。
その謎はともかく、2通目を読んでみましょう。
<2通目>
上質紙ではなく、こんどは厚めの普通紙でした。
同じように古ぼけて黄ばんでいます。
ところどころ穴があいており、読むのに時間かかりました。
内容はこうでした。さっきの手紙への、キューカル社からの返事のようです。
「1988年6月23日。
A株式会社、商品開発本部、ヤマナカ本部長殿。
お手紙ありがとございます。
ご主旨よく分かりです。
貴国の政府の認可を得るですね。
情報開示が必要ある、という話はよく分かりです。
わがキューカル社して、日本で市場は非常に魅力的ます(わが国はアメリカに市場考えません)し、わが国の食品技術や医療知識を貴国の国民と健康が寄与されるのであれば、これまで喜ばしいことはございません。
なんでも、秘密保持誓約書もいただけることが、たいへん感謝いたします。
日本は契約文化さえないとしか聞いておりましたが、認識を改めねばならないかも考えておりました。
情報開示にあたりつつ、1点だけご了承いただき条件ございます。
簡単条件でございますので、何とぞよろしくお願いもうし
(ここから先、大穴が空いているのでまったく読めず)。
ホセ・カルロス
副社長
キューカル・カンパニー・リミテッド
追伸。
ヤミノテイオウではなく、正しくはヤセノオオグイです」
(以下次号)
健康をキーワードに活動している方は是非のぞいてみてください。
「21世紀の健康サービスがわかるオンラインストア」
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松宮園生です。
常夏のカリブ海に浮かぶキューバ。
キューバ産のマンゴーは食べて美味しく、有機栽培でもあります。
日本のマンゴーファンにもたいへん人気があったのですが、ある日とつぜん、日本に入荷されなくなりました。
輸入国の日本が輸入を禁止したのではありません。
輸出国のキューバが、日本向け輸出を禁止したのです。
これはとっても不思議なことでした。
キューバは外貨を稼ぎたいと思っているので、ドル箱商品であるマンゴーの輸出は続けたいはずです。
しかも日本はナンダカンダ言ってもお金持ちです。
おそらくキューバのマンゴー農家さんたちにとっては一番の上客でしょう。
そんな状態で、
「売りたい立場」
のキューバが輸出を禁止するなんて、わけが分かりません。
日本のマンゴーファンもガッカリです。
その謎を解くために、ある果物屋のオニイサンが立ち上がりました。
オニイサンは僕を無理やり仲間に巻き込み、大和男児2名のキューバ珍道中が始まったのでした。
この珍道中については、
ヘミングウェイ農業 その1
ヘミングウェイ農業 その2
ヘミングウェイ農業 その3
ヘミングウェイ農業 その4
ヘミングウェイ農業 その5
をご覧ください。
珍道中の主目的はマンゴーだったのですが、僕にはもう1つ目的がありました。
このシリーズではその話をします。
◆◆◆
出発する1か月ほど前のこと。
入国ビザを申請するために、在日キューバ大使館に顔を出したところ、キューバ大使館からある会社を紹介されました。
たしか、キューカルとかいう、リゾート地みたいな名前の会社だったと思います。
キューカルは製薬会社でした。
会社案内パンフレットによると、漢方とよく似た、植物素材系の薬を作っているようでした。
大使館がなぜこの会社を紹介したかというと…。
キューバの南海岸部にはヤセノオオグイ(yussen noguai)という名前のついた、メタボリ科の植物があります。
この植物は大人の人間と同じくらいの背丈で、盆栽かと思うほど複雑な形をしています。
ヤセノオオグイの、枝の付け根(節といいます)の部分にはある特殊なフィトケミカル(機能性成分)があり、
ハバナ大学の研究によれば、健康をまったく損なわずに、内臓脂肪を数日間で劇的に減らす効果が発見されたというのです。
キューカル社がこのフィトケミカル(機能性成分)の権利を持っており、商品化して日本に売りたいと考えている。
日本にいいカモがいたら紹介してくれという依頼が、大使館に来ている。
そこで、手近なところでおたく(松宮)を紹介しようと思う。
という理由でした。
「いいカモ」って、あんた…。
しかも、「手近なところ」って…。
果物屋のオニイサンは、このテの話にはまったく反応を示しませんでした。
まるでなにも聞こえていなかったかのように。
というか、大使館の人がなにを言っているのかをそもそも理解できなかったのではないか。
僕はそう疑っているのですが、本人に言うと怒られるので聞けません。
このオニイサン、とりあえずぶらっとキューバに出かけるくらいに行動力は満点なのですけど、
妙に文系ジャパニーズなところがあって、マンゴーのことを「万号」と書くのが癖でした。
どっかの国の怪しげな客船の名前みたいです。
おまけに、J(ジェイ)の発音ができなくて、「ゼー」と言ってます。
日本のプロサッカーは「ゼーリーグ」です。
ジェット機は「ゼット機」です。
そういう人なので、
「フィトケミカル」
「ハバナ大学の研究」
「内臓脂肪」
のようなカタカナ文字や理系ムードの漢字が出てくると、たぶん何かの限界を超えてしまうのでしょう。
かくいう僕は、もともと理系ムードの人間ですので、じつはマンゴーの話よりもこっちの話のほうに興味がありました。
さっそく知り合いの健康食品会社に電話し、商品化に協力してくれるように頼みました。
これでひと山当てたら、大金持ちだな、オレ。
ムフフ。
フロリダのビーチで、キャメロン・ディアスと一緒にマルガリータを飲んでいる自分を、早くも想像する松宮でした。
キューバが一筋縄ではいかない国だということを、このときはまだ知りませんでした。
(以下次号)
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松宮園生です。
今回はアメリカのナチュロパシーの魅惑的な世界を、
軽いウソをビミョーにまじえながら説明します。
◆◆◆
食べるものとか食べかたによって人間の健康が
影響を受ける、なんて言われると
「そんなのあたりまえじゃね?」
と思うのがふつうなんでしょうが、
いわゆる「西洋医学」の世界では治療といえば今でも投薬が中心で、食の働きについてはさほど重要視されていません。
ようするに
「食に詳しいお医者さん」
はそんなに多くはいないということです。
しかしそんななかでも、食のありかたを含めて医学を考える
「ナチュロパシー」
という領域がだんだん注目されるようになりました。
勝手に略して、ナチュロパ。
ナチュロパは代替医療と呼ばれるものの一種です。
日本語に訳すのは難しいのですが、あえて訳せば「自然療法学」となります。
自然なもの(たとえばハーブなど)を使いながら、健康増進とか病気の予防とかをするわけです。
この考え方は東洋ではとくに目新しいわけではありません。
西洋では、こういう考え方が広まってきたのは最近のことです。
広まってきたのは最近のことなのですが、ナチュロパじたいは昔から存在していました。
100 年以上前から、ナチュロパ専門家の免許制度が存在していたのです。
つまり、これまで一部の人だけの地味な存在だったものが、最近派手になってきた、という感じです。
◆◆◆
ナチュロパのライセンスを持った専門家のことを
「ナチュロパシック・ドクター(Naturopathic Doctor = ND)」
といいます。
西洋医学の正規医師のことを
「メディカル・ドクター(Medical Doctor = MD)」
と呼ぶのに対応した名称となっています。
これも略して、ナチュロパドクターでいいよね。
ナチュロパドクターになるためには、西洋医学の医学部にとおなじくらい長期間の学業が要求されます。
たとえばこんなことを勉強します。
世界中のハーブのお勉強
ターザン栄養学
マッサージ・指圧・カイロプラクティック
カウンセリング・ストレスマネージメント
軽度の手術
メキマン拳法(←これはウソ)
代替医療に対する関心が高まるにつれ、ナチュロパドクターの職業としての魅力も高まってきています。
職業の魅力を決める要素はいろいろありますが、収入でいうと、たとえばアリゾナ州でのナチュロパドクターの平均年収は8万ドルくらいで、これは米国民の平均年収の2倍以上です。
日本円だと、年収1000万円です。
モテるかどうかも、けっこう職業の魅力のひとつだったりしますが、
ナチュロパドクターはけっこうモテるらしく、合コンでのお持ち帰り率は32.7%で、全職業中、第53位です(2005年統計)。
◆◆◆
アメリカの政治は連邦制になってます。
「州」が集まって「連邦」をつくっています。
ジョージ・ブッシュ大統領は連邦政府のトップです。日本で言えば安部首相です。
アーノルド・シュワルツェネッガー知事はカリフォルニア州のトップです。日本で言えば東国原知事です。
で、ナチュロパドクターのライセンスを認定しているのは州政府です。
連邦政府ではありません。
つまり、ナチュロパドクターが認められていない州もあります。
国家資格ではなく、州資格ということです。
◆◆◆
ナチュロパドクターになるための大学の数はまだそれほど多くありませんが、増えてきています。
なかでも以下の大学が全国的に知られています。
●サウスウェスト大学(アリゾナ州)
たしかフェニックスというところにあります。
アリゾナ州は高温の砂漠の州です。ラクダはいません。
この大学をいちど見学したことがあるのですが、あまりの暑さに記憶がだいぶ飛んでまして、どんなところだったかあまり覚えていません。
アリゾナ州は代替医療のメッカと呼ばれており、さまざまな代替医療の施設が集中しています。
サウスウェスト大学は最近まで無名の大学でしたが、ナチュロパへの世間の関心が高まるにつれて名を知られるようになりました。
●火縄くすぶるバスティーア大学(ワシントン州)
シアトルにあります。シアトルはイチローがいるところです。ビル・ゲイツもいます。
この大学は連邦政府が予算を拠出していたことで有名で、日本人学生も少なくありません。
ちなみに、シアトル近郊には「タホマ・クリニック」という全国的に評判の高い代替医療のクリニックがあります。
このクリニックの責任者であるジョナサン・ライト医師は日本でも名のしれた「カリスマ・ドクター」です。
バスティーア大学の卒業生はこのタホマ・クリニックに就職することに憧れています。
「火縄くすぶる」は枕詞(まくらことば)です。世界史の受験生は覚えておきましょう。
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