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松宮園生です。
酒場でのこと。
農家がひとり、暗い表情でビールを飲んでいました。
まっ昼間のことでもあり、酒場にはその農家しかいませんでした。
酒場の店主が話しかけてきました。
「あのさあ。ウチで飲んでくれるのは商売としちゃ、ありがたいんだけど、でもあんた、大丈夫? こんな天気のいい日に、こんなところで飲んでちゃいかんよ」
「話せば長いんだが」と、農家はため息をつきながら言いました。
「何か困ったことでも?」と、店主。
「聞いてくれるか?」
「いいとも」
農家は言いました。
「さっきまで牛の乳しぼりをしててね。ようやくバケツがいっぱいになったと思ったら、牛のやつ、左足でバケツをひっくり返しやがった」
「そりゃ災難だったね。でも昼間から飲んだくれるほど、ひどい出来事じゃないだろ?」
「いやいや続きがあるんだ」農家は言いました。「聞いてくれるか?」
「いいとも。で、それでどうなった?」
「牛の左足を、柱にくくりつけた」
「それで?」
「乳しぼりをやりなおした。ようやくバケツがいっぱいになったとたん、牛のやつ、今度は右足でひっくり返しやがった」
「またやったのか」
「またやったんだ」
「困った牛だね。でもそれだって、昼間から飲んだくれるほど、ひどい出来事じゃないだろ?」
「いやいや、まだ続きがあるんだ」農家は言いました。「聞いてくれるか?」
「もちろん。で、どんな続きなんだ?」
「牛の右足を、べつの柱にくくりつけた」
「それで?」
「もういちど乳しぼりをはじめた。やっとバケツがいっぱいになったんだが、あの牝牛め、まただよ、今度は尻尾をつかってバケツをひっくり返した」
「ふーむ」
「まだ続きがあるんだ。聞いてくれるか?」
「まだ続きがあるんだな?」
「ああ」農家は続けました。「尻尾をどこかにくくりつけたかったんだが、ロープが足りなくてね。自分のベルトをはずして尻尾を柱に結びつけた」
「ふむふむ」
「そのときなんだ。オレのパンツがずり落ちてね。そこにカミさんが入ってきたんだ」
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