食育の世界で活躍してみたい人、必見!
人気「野菜ソムリエ」と「プロダクション・チーフ」が
食育の世界にご案内します。
◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
流しの料理人ラザフォードの呼びだしでアラスカに向かった僕。
メタボ女性に阻まれながらも、タクアン航空のパイロット、これまたメタボ体型のスケタロー社長が操縦する小型飛行機でようやくメトラカトラ島に到着します。
◆◆◆
メトラカトラ島はもともとは無人島で、住民というのはいません。
ただし、栂(ツガ)や杉やヒノキやトウヒなどの針葉樹が生い茂っているために、輸出用の森林伐採がさかんに行われているところで、木こりのキャンプというものがありました。
ラザフォードが
「キャンプまで来い」
と言ったのは、木こりのキャンプだったのです。
スケタロー氏は波打ち際に作られた着水用の桟橋に、プロペラ機を横づけしました。
その音を聞きつけ、口髭をたくわえた小柄なラザフォードが、のたのたとやってきました。
「久しぶりだなー。よく来たね」ラザフォードは言いました。「まあとにかく何か食おう。食いものはすべてに優先する。あんたも来いよ、スケタロー」
さっそくメシの話でした。
「食いものはすべてに優先する」、なんてセリフ、なんだか暗殺された食通政治家の、いまわの一言みたいです。
木こりのキャンプはプレハブで、桟橋に隣接したかたちで設営されていました。
まんなかに事務所棟と食堂があり、周囲に宿泊棟があります。
木こりの人たちは、4人くらいでひとつの部屋をあてがわれ、そこで寝起きしているようでした。
来客用の部屋もあり、僕はそこに泊まるようです。
木こりたちは全員、現場に出払っているらしく、キャンプはがらんとしています。
ラザフォード、スケタロー、マツミヤの3人は食堂に入りました。
なんともいえないいい匂いが充満しています。
「サンドイッチ食おう」ラザフォードがいいました。「木こりたちは弁当にこのサンドイッチを持っていったから、ここにあるのは残りもんだがね」
食堂の中心に大きなテーブルがあり、そこにサンドイッチの食材が並んでいました。
全粒粉の大麦パン
カリブ風ジャーク・ハムと呼ばれるスパイシーなハム
ワラワラオニオンと呼ばれる、甘味の強い玉ねぎ
ロメインレタス
ランドレイク社製のスライスチーズ
刻みハラペーニョ
大玉のトマトのスライス
パイナップルを刻んで少し焼いたもの
ワカモレ
それぞれが別々の大皿に盛られています。木こりたちはそれを好きなように好きなだけ大麦パンにはさみ、お好みでチリペッパーソースをかけたり、黒コショウをふりかけたりして、弁当として持っていくわけです。
3人はそれぞれ自分流にサンドイッチを作りました。スケタローは辛いのが苦手のようで、ハラペーニョを入れませんでしたが、僕は辛いのが大好きなので食材を全部、大麦パンではさみました。
いやー、その美味だったこと。
さすがラザフォード、食材の仕込みに工夫が凝らされています。
食材の選び方はもとより、ワラワラオニオンの切り方の絶妙さ、パイナップルの焼き具合、ワカモレの濃さ、どれをとっても何でも鑑定団風にいうと「いい仕事してますねえ」。
チリペッパーソースもラザフォードの自作です。これが辛くてうま味がある。
アラスカは林業がさかんです。
木こりの仕事は報酬が高い仕事のひとつで、高い報酬をもらう代わり、彼らはメトラカトラ島のような離れ小島で半年間、キャンプ生活をします。
楽しみはあまりありません。
男ばかりのキャンプです。しかしヘテロしか許されません。
争いを防ぐためにキャンプでは酒を飲むことが厳しく禁じられています。
ギャンブルも原則禁止です(多少のカードゲームは許されています)。
離島ですのでテレビもありません。買い物をする場所もありません。
自然が美しいのと、読書をする時間がたっぷりあるくらいでしょうか。
そういう娯楽のないところですので、キャンプの食事がうまいかまずいかは大問題です。
食事のまずいキャンプでは、木こりの仕事の効率も落ちます。やめる木こりもいます。
食事がおいしいキャンプでは、木こりも気持ちよく働きます。なかなかやめません。
サンドイッチひとつといえども、手を抜けないのです。
そういうわけで、アラスカの林業会社は、腕のいいコックに高い報酬を払ってキャンプに招聘(しょうへい)しています。
ラザフォードは、そうやって招聘されたわけです。
(次号予告)
ラザフォードが「体にやさしく美味」な料理を作っているおかげで、メトラカトラ島にはメタボはいません。
しかしアラスカはもともと「メタボ州」と呼ばれるほど、肥満の目立つところです。
なぜそうなのか。次回はその謎を探っていきます。