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チーフの松宮園生です。
(前回の復習)
「食育基本法」という法律ができ、霞ヶ関の3省がそれぞれ独自に食育活動を展開しています。
その様子を、1800年前の中国を舞台にした「三国志」になぞらえて解説します。
厚生労働省は、蜀(しょく)という国に
文部科学省は、呉(ご)という国に
農林水産省は、魏(ぎ)という国に
それぞれ、ちと強引に、独断と偏見で、なぞらえてみます。
「食育三国志 その2」では厚生労働省を、「食育三国志 その3」では文部科学省の食育について書きました。
今回は農林水産省の食育の話です。
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農林水産省は、年間90億円くらいの予算で、食育を進めようとしています。
この金額は、3つの省のなかではダントツです。
三国志の魏という国の規模も、3国のなかでダントツです。
農林水産省の食育予算がダントツなのはムリもありません。
そもそも食育は食べるものに関することがらですし、競合する3省のなかでは農林水産省がもっとも食べるものに近い存在です。
三国志の魏も、規模がダントツなのはムリもありません。
なぜなら、魏は中国大陸でもっとも富と人口が集中している「中原」と呼ばれるところを支配しているからです。
中原と呼ばれるこの裕福な地域には、いにしえの王朝が好んで都とした洛陽と長安(いまの西安)があります。
ただし微妙な点もありまして…
「食育三国志 その1」で書きましたが、日本には「食」そのものを管轄するズバリのお役所がありません。
そのために、食に関することがらは、
農業であれば農林水産省
健康問題であれば厚生労働省
給食であれば文部科学省
といったように、複数のお役所に分断されているのです。
魏も、じつは中国の「ズバリの王朝」というわけではありませんでした。
魏という国には、皇帝がいなかったのです。
どういうことかというと、蜀呉魏3国の争いがたけなわのころ、中国にはまだ「漢帝国(正確には、後漢)」が生きていました。
漢帝国には皇帝がおり、魏は、漢帝国に仕えるいくつかの国のひとつだったのです。
漢帝国、という広大な領域のなかに、蜀という国、呉という国、魏という国が生息していたということです。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、帝国なかに、いくつか国があったのです。
このときの漢帝国は名ばかりの存在になっていました。
魏は、漢の皇帝をかかえこんで「あやつり人形」とし、勢力を拡大していきました。
しかし公(おおやけ)には、中国のトップは漢の皇帝とされていました。
漢の皇帝があがめられることはあっても、魏があがめられることはありませんでした。
魏は、「ズバリそのものの国」ではなかったわけです。
(日本でたとえると、京都に朝廷がありながら、政治の実権を「鎌倉幕府」や「室町幕府」や「徳川幕府」が握っていたようなものです)
さて、農林水産省の食育の特徴はなんでしょうか?
それは、
「日本の農業を守りたい」
この一言につきます。
そのために、食育というキーワードを活用しようとしています。
日本の農業を守るために、農林水産省は、
「食糧自給率をアップさせたい」
「農家の地位を高めたい」
と考えています。
そのためのスローガンがふたつ、生みだされました。
食育について勉強していると、
「地産地消を進めよう」(=地元でとれる農作物を食べよう)
「農村の多面的機能を理解しよう」(=農村は食物を生産しながら、生き物の生態系を守り、景観も守っている。いろいろな機能をもつ大事な存在だ)
というスローガンに出会います。
ここには、農林水産省の熱い思いがこめられているのです。
「地産地消が大事だ」
「農村の役割は大きい」
といわれると、なるほどもっともだ、そりゃそうだ、と思いますよね。
地元の農作物を大切にしたり、環境を守ったりすることに反対する人はいません。
したがい、農林水産省の食育には、だれでも賛成します。
誰でも賛成する、という点は三国志の魏も同じです。
魏という国は、「漢帝国からもっとも信頼されている王国」というスローガンを掲げていました。
あらゆる命令は、魏が勝手につくり、漢の皇帝のハンコが押されて発令されていました。
皇帝のハンコが押されているので、だれも反対できませんでした。
しかし、魏は「いつかは漢帝国をほろぼし、自分が帝国になる」ことを狙っていました。
漢帝国を守ることが目的ではありませんでした。
同様に、農林水産省の目的は
「食育により国民を健康にする」
ことではありません。
あくまでも「農業(=作る人)を守る」のが目的です。
食べる人を守ることではない、ということを、忘れてはなりません。
もともと、農林水産省の存在目的は、作る人を守ることなのです。
これはべつに、農林水産省が片手落ちというわけではまったくありませんし、悪意があるというわけでもさらさらありません。
食べる人を守らないからといって農林水産省を責めるのは、風邪をひいたからといって近所のラーメン屋に文句をいうようなものです。
そもそも役割がちがうのですから…。
「食べる人を守ることを存在目的とする役所」は、日本にはないのです。
(数年前にようやく「食品安全委員会」という役所ができました。あんまり目立ちませんけど…)
農林水産省の食育は「農業を守る」こと。
そのために、農林水産省系の食育講座では、
地産地消の大切さ
日本の食料自給率がいかに低いかということ
農村がいかに環境保護に役立っているかということ
が熱心に語られているのです。
(食育三国志 いったん完結)