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2007.05.20 07:14

呪いのバナナ その3

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◆◆◆

チーフの松宮園生です。

前回までのあらすじ)
バナナ会社の買収をたくらむテケテケ商事。
しかしそれを阻止するつもりなのか、メキマンが動き出した…

◆◆◆

テケテケ社長が買収したがっているその会社の名前は、キトキト物産という名前でした。
「物産」という名前がついているので、バナナのほかにもいろんな商品を扱っているようでしたが、主力商品はバナナでした。

大昔、「子連れ狼」という話があって、映画だかテレビだかでやっていたそうですが、その主題歌をたしか橋幸夫が歌っていたとのこと。
キトキト物産にはそのころ社歌というものがあり、社歌のメロディーは「子連れ狼」とそっくりだったそうです。
どっちがどっちを真似したのか分かりませんが、そのことでテレビ局とキトキト物産は大喧嘩をしたといいます。
社歌で喧嘩するなんて、子供じゃあるまいしねぇ…。
業界では有名な話です。

僕は聞いたことないので知らないのですが、興味のあるかたは「子連れ狼」のメロディーを聴いてみてください。

さて、
「シークレット・バナナ事業部ゴクヒ調査課 課長」
に任命され、キトキト物産の実態調査を始めることになった僕ですが、
そもそも何を調査するのでしょうか?
何を調べるのか、調べることのリストを作る必要があります。

社長の趣味を調べればいいのでしょうか?
社員のあいだで流行っているお店を調べればいいのでしょうか?
売上とか、そんなものを調べればいいのでしょうか?
女子社員のスカートの長さの平均を調べればいいのでしょうか?
「本当ですか?」という人と「マジですか?」という人の比率を調べればいいのでしょうか?

となりのデスクに座っている地味な室長さん(どこかの商社出身)に質問したら、
「そうですねー。売上とかそういう数字も大事ですしねー。スカートの長さもなかなかねー」
と悲しそうにいい、張子の虎のように首をふりながら男子トイレに行ってしまいました。
使えねぇ、この人。

キトキト物産は全国に数か所、支店があり、支店ごとに「ムロ」があることが分かっています。
とりあえず観光も兼ねて視察にいくか。
そう決めた僕は、北から順番に
「キトキト物産支店めぐり」
を始めたのでした。

◆◆◆

バナナは青いまま輸入し、国内の「ムロ」でエチレンガス漬けにし、黄色くしてから出荷する、ということを前回書きました。
このエチレンガスですが、これは植物ホルモンでもあります。
植物を成長させ、成熟させ、老化させる働きがあります。

ムロを経営しようと思ったら、エチレンガスが大量に必要になります。
エチレンガスって、どこに売っているかご存知ですか?
答はしごくアタリマエに「ガス会社」なんですが、当時の僕はまだ答を知らなかったので、これもとなりのデスクに座っている地味な室長さん(どこかの商社出身)に質問しました。
すると室長さん、
「そうですねー。コンビニには売ってないですよねー。薬局かなー」
とのったり悲しそうにいい、張子の虎のように首をふりながら男子トイレに行ってしまいました。
やっぱり使えねぇ、この人。
男子トイレばっかり行ってないで、たまには女子トイレにも行け。

そのムロですが、世の中にはいろんな会社がありまして、ムロメーカーという、ムロを専門に作っているメーカーがあります。
正しく言うと、バナナの入った段ボール箱を並べる棚とか、エチレンガスを充満させたりガス抜きをしたりする器械とか、エチレンガスの濃度を調整する機械とか、濃度や温度を管理するコンピューターシステムとか、そういうものを作っています。

そういう設備をこっそり偵察するため、僕はキトキト物産の支店めぐり=全国行脚(あんぎゃ)をしたのであります。
これをすることで、
キトキト物産は年間どれくらいのバナナを「加工」しているのか
キトキト物産は設備投資にどれくらいのお金を使っているのか
が、なんとなく分かります。
(青いバナナを黄色バナナに変えることを「加工」といいます)

また、支店の建物を見たり働いている人たちの様子を遠くからでも見れば、だいたい何人の人が働いているかがわかります。
全体で何人の人が働いているかがわかれば、その会社の人件費の総額なんかも大雑把に計算できます。

つまり、支店めぐりをすると、いろんなことが想像できるようになるのです。

キトキト物産の支店は、北から苫小牧、千葉、静岡、神戸、松山にあったので、この順番に出張しました。

◆◆◆

苫小牧と千葉の視察を終え、場末の居酒屋で酒を飲んでいたら、テケテケ社長から携帯メールがきました。
(お約束ですね)

こういう内容です。
「松宮くん、お元気ですか。僕は元気です。
メキマンが明日、日本に上陸するそうだ。ヤバい。とってもヤバい。バナナ調査を止めないと、攻撃すると言ってる。
どうしようか。相談したいのでただちに本社に帰ってきてくれ」

翌日、僕はテケテケ商事に出社しました。
こころなしか、社内がガランとしています。
室長(どこかの商社出身)の姿もみえません。

社長の執務室に行くと、憔悴した顔の社長が待っていました。
「メキマンはもうすぐ横浜に上陸する」と、社長は静かに言いました。
「社員の数が少ないようですけど」
「逃げた。室長も病気だと称して出てこない」
「どうするのですか。バナナの調査、止めますか」
「続けてくれ。これは絶対にやりとげたいんだ」

そのとき、ドアが開いて社長の秘書が入ってきました。
「社長」彼女は青い顔で言いました。「横浜から伝令です。メキマンが入国審査をパスしたそうです」

ついに、メキマンが上陸したのでした。

(以下次号)

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