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2007.05.15 17:16

メタボ最北端 その3

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◆◆◆

チーフの松宮園生です。

前回のあらすじ)
流しの料理人ラザフォードに会うために、アラスカに向かった松宮。
アラスカ行きの飛行機で彼を待っていたのは、日本ではありえないメタボ女性であった。

◆◆◆

ふつう飛行機といえば出発地と到着地だけがあり、途中下車というのはありませんね。
しかしアラスカ航空という航空会社の場合、
特急・急行・快速・各駅停車
という区別があります。
まるで電車みたいに。

シアトルからアラスカに向かう航路には、いくつも「途中下車空港」があるのです。
南から順に並べると、
☆シアトル(始発) → ◎ケチカン → ○シトカ → ランゲル → ピーターズバーグ → ◎ジュノー(アラスカ州の州都。和風にいえば県庁所在地) → ○ヤクタット → ヘインズ → ○コルドバ → バルディーズ(むかし、エクソンの石油タンカーが転覆した場所です) → ☆アンカレッジ(←アラスカ最大の都市。つっても人口30万人)
(☆特急が停まる空港、◎急行が停まる空港、○快速が停まる空港、無印は各駅停車のみ)

この順番、じつは暗記しています。
なにが嬉しくてこんなことを暗記したのか、自分でもよく覚えていません。
円周率を異常に暗記している人とか、
鼻の穴の力でものを持ち上げたりする人とか、
そういうよく分からない特技の持ち主がテレビに出るといつも指差して笑っていたのですが、
もはや人のことは言えません。

各駅停車の場合、同じ機体がこれらの空港すべてに着陸します。
各駅停車の乗客は、目的地に着くまで何度も離陸したり着陸したりするわけです。
僕の乗ったのは急行で、僕自身の目的地はケチカン空港でした。
アラスカはフライパンのような形をしています。本体が北を向いており、柄(取っ手)の部分が南に垂れています。
ケチカンは柄(取っ手)の最南端にあります。

シアトルを発ちカナダ越えをした飛行機は、約2時間かけてケチカンに着陸しました。
機体の窓に、水滴が幾重にも走っています。雨が降っているのでした。
着陸した。さあ、降りなくては…。
問題の場面です。

僕の隣には巨大メタボ女性が座っています。この人が降りてくれないと、僕は降りることができません。
この女性の隣に2時間も座っていた僕のカラダは、古くなったサンドイッチの具みたいになってます。
さあどうしよう。

「あのー」おずおずと話しかけました。「僕はここ(ケチカン)で降りるんですけど」
「ああそうなの。困ったわねー」女性は言いました。「さっきも言ったけど、あたし、自分じゃ立てないし」

あ、やっぱり。

結局、また座席をよじ登ることになりました。
体力が落ちているので、よじ登る姿の無様なことといったら…。
ほかの乗客がにやにやして見てます。
メタボ女性は悪びれたようすもなく、平気な顔で料理雑誌を読んでいました。
罪悪感とか、羞恥心とか、そういうのは全然なさそうでした。

◆◆◆

10月のケチカンの気温は、12月の東京の気温くらいです。
寒いことは寒いですけど、思ったほど寒くはありません。
じつはこのへんは暖流が流れているので、緯度が高いわりには寒さはマイルドなのです。

ケチカンに到着したときの僕の服装はこうです。
レッドウィングという靴屋で買った茶色のブーツ。
GAPで買ったジーンズ。
GAPで買ったタートルネックのスウェットに、バナリパで買った青っぽいチェックのネルシャツ。
防水加工されたジャンパーはエディー・バウアー製。
シアトルマリナーズの野球帽。
以上。
この状態だと、外を歩いても凍えるということはありません。

さて、僕をアラスカまで呼びつけたのはラザフォードという男です。
ふつうだったら、ケチカンの空港で待ってくれているものですよね?
でも、しとしと雨のケチカン空港の、人影まばらなロビーには、彼はいませんでした。

「キャンプ地にいるから、そこまで来い」
と言われていたのです。

そのキャンプ地に行くには、ケチカン空港で、コミューター(4人乗りの小型プロペラ機)に乗り換えなければなりません。

そこで僕は、ケチカン空港内にあるコミューター会社のところに行き、プロペラ機の予約をしました。
そのコミューター会社の名前は「タクアン航空」といいました。
その会社の社長、兼、パイロットは、メタボ体型の男で、スケタローという名前でした。

タクアン航空のスケタロー社長。
これ、マジで本当の名前です。
チイタッタ先生やテケテケ商事は偽名ですけど、これはホントにホント。

なんだかビミョーに日本っぽい名前ですが、日本とは関係がないそうです。
(ちなみに、スケタロー氏はメタボ世界のお約束、心臓発作で亡くなっています。まだ40代でした)

降りつづける雨のなか、ビーバー型と呼ばれる、着水専用フローターのついた小型プロペラ機にゆられて30分後、僕はラザフォードが待つメトラカトラ島というところに到着したのでした。

メトラカトラ島、というのもホントにホントの名前です。

今回はここまで。
次回(その4)ではようやく、流しの料理人ラザフォードの登場です。

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