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2007.05.18 00:58

呪いのバナナ その2

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◆◆◆

チーフの松宮園生です。

前回のあらすじ)
バナナ会社の極秘調査を命じられた僕。
しかしそこには、調査を阻もうとするメキマンの影が…。

◆◆◆

社長のパソコンの画面には、
「テケテケ社長よ。バナナから手を引け。さもないと、メキマンが来る」
という言葉が浮かびあがっています。

社長と僕は顔を見合わせました。

こんなところにメキマンが。
入社以来ひそかにメキマンの正体を探っていた僕にとって、この出来事は驚きでした。

「メキマンが来る…」
社長は小声でぶつぶつ言いながら、パソコンの画面に目を戻しました。

「社長」僕はいいました。「僕のパソコンにもメキマンって書いてあるんです。メキマンって何ですか?」
すると社長の顔色がさっと変わりました。
耳たぶまで真っ赤になったのです。

彼はモジモジしながら足元に目をおろし、「き、きみのパソコンもそうなのかい」と、蚊の鳴くような声でいいました。

「メキマンってなんですか? 教えてください」
「さ、さあ…。おれにもよく分からん…」
「社長、ご存知なんじゃないんですか?」
「い、いや、知らんよ…」
「じゃあ、なにが危険だとおっしゃるんですか? なんでこのメールを僕に見せるんですか?」
「あ、いや」社長はさらにモジモジしながらいいました。「きみなら分かるかと思って…」

煮え切らない社長のようすに首をかしげながら、僕は部屋を出ました。
手には社長からもらった「シークレット・バナナ事業部 ゴクヒ調査課 課長」の辞令を握っています。

メキマンがなんであれ、これからバナナ会社の調査をしなくてはなりません。

◆◆◆

バナナは完熟した状態で輸入することを禁じられています。
主に「地中海ミバエ」と呼ばれる害虫を防ぐためです。
そのため輸入するバナナはまだ熟してない青いうちに収穫したものが、コンテナで日本に運ばれてきます。
「青バナナ」とよくいいます。
「緑バナナ」という場合もあります。
ここでは青バナナで統一しましょう。
未熟なバナナには、地中海ミバエはまだ卵を産んでいないのです。

しかし青バナナの状態では未熟のため食べてもらえない(売れない)ため、バナナ業者は青バナナを日本国内で黄色くします。
なにもせずに放っておけば勝手に熟してどうせそのうち黄色くなりますが、それだと時間もかかるし、痛んだりする危険もあります。
そこで、輸入された青バナナにある「儀式」をとりおこない、強制的に数日のうちに黄色くしてしまいます。

どんな「儀式」かというと、バナナをエチレンガスに「漬けこむ」のです。
エチレンガスは、成熟ホルモンの一種で、バナナが熟するのを早めます。
これを
「バナナの追熟」とか「バナナの加工」とかいいます。

バナナをエチレンガスに「漬けこむ」密閉された部屋のことを「ムロ」といいます。
いまやバナナは大量に輸入されてきますし、そのすべてをエチレンガスに漬けこむわけですから、「ムロ」も数多く建設されました。
ムロビジネスはわりと最近まで活況だったのです。

僕が調査をすることになっている会社は、ムロビジネスをしている会社でした。

◆◆◆

翌日、僕はふたたび社長の執務室をノックしました。

調査をするにもお金がかかります。
自分で現場に出張したりすることもありますし、調査会社に依頼するようなこともあります。
だいたいいくらくらいお金がかかるのか、その予算を作ったので、社長に見せようと思ったわけです。

テケテケ社長はパソコンのむこうで青い顔をしていました。
「どうしたんですか?」
「またメールが来たよ」社長は小さな声でいいました。「見るかい?」

社長のパソコンをのぞきこむと、今度はこう書いてありました。
「メキマンは出発した。いま船の上だ。そっちに向かっている」


(以下、次号)

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