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チーフの松宮園生です。
僕はある農業コンサルタントのオジチャンから、
「バウムクーヘン野郎」
と呼ばれています。
農業を始める決心もついていないのに農業のことを嗅ぎまわり、耳年増(←死語)みたいになっていることをいうそうです。
肝心な「就農」をしていないのに、農業の周辺知識ばかり勉強する。
まるでバウムクーヘンです。
周りは食べられるのに、真ん中が空っぽ。
今日は、僕にそういうあだ名をつけた農業コンサルタントのオッチャンの話をします。
◆◆◆
オッチャンのことを、葉竹乃木夫(はたけのぎお)さん、と呼ぶことにしましょう。
麦わら帽子の似合う、小柄だが日焼けして真っ黒なオッチャンを想像してください。
ITバブルというのが始まったころの話です。
楽天とか、ライブドアとかが脚光をあびはじめていたころ。
ある有名な大企業が、何を思ったか農業ビジネスをやろうと考え、子会社を作りました。
「アグリドラゴン株式会社」
という、中国や台湾にありそうな、勇壮な名前の会社です。
その会社は、IT企業の繁栄にあやかろうということで、ウェブサイトを作りました。
農家さんがそのウェブサイトで自己PRをする
その農家さんから農産物を仕入れたい人(会社)は、アグリドラゴンを通じて購入する
アグリドラゴンは、手数料をもらう
というシステムのウェブサイトです。
で、アグリドラゴン社は10人くらいの社員を集めてスタートしました。
ところが、ウェブサイトを作るのに必死になるあまり、集めた社員は全員、システムエンジニアとかプログラマーの人だったのです。
農業ビジネスの経験者を採用していませんでした。
「まあ何とかなるだろう」
アグリドラゴンの社長はお気楽に構え、システムエンジニアとかプログラマーの人をそのまま、営業社員にしてしまいました。
ITを使った農業ビジネスが当時ちょっと珍しかったせいもあり、素人集団で始めた会社にも関わらず、当初は何件かの農家さんからの出店もあり、お客さんとの契約もいくつか、結ぶことができました。
しかしだんだんボロが出てきます。
農家さんやお客さんから、
「おたくの社員は勉強が足らん」
「もっとしっかりやってくれよ」
という文句が出るようになりました。
お気楽なアグリドラゴン社長でしたが、さすがにこのままではイカンと思ったのでしょう、知り合いである葉竹氏のところに相談しました。
「なあ葉竹ちゃんさあ。しばらくウチの社員の面倒、みてくんない? 営業部長のポストが空いてるんだよ。給料もはずむからさあ」
「給料もはずむからさあ」
女遊びが過ぎて借金を抱えていた色黒の葉竹氏にとって、この言葉の魅力には逆らいがたいものがありました。
そんなわけでガングロ葉竹氏は、アグリドラゴン社の営業部長に就任したのです。
数日後、葉竹氏はアグリドラゴン社にはじめて出社。
その夜、とある居酒屋で葉竹氏の歓迎会が開かれました。
色白のシステムエンジニアやプログラマーのなかに、ブラックホールのような顔の葉竹氏。
ちょっと異様な風景です。
中間色、ないのかよ。
まあそんなチグハグさも、酒が進むにつれどうでもよくなってきます。
宴もたけなわというころ…。
宴会を欠席して残業していた社員が、真っ青な顔で居酒屋にとびこんできました。
「たたた、大変です」
ベタなセリフですが、若者の顔は青ざめたままです。
黒い顔と白い顔が、みんなで青い顔を凝視しています。
話によると、アグリドラゴンの売上の半分を占めるいちばんのお得意先から電話がかかってきて、
「おたくの商品は全部国産のはずだよな。それがなんだ、中国産のものが混じっているじゃないか。どうなっているんだ。ただちに責任者が説明に来い。今すぐ来い。2時間以内に来い」
と、ものすごい剣幕だったとのこと。
で、営業部長である葉竹氏が説明に来い、というものでした。
「おいおい、オレは今日入社したばかりだぞ。いきなりそれかよ」
焦りまくった葉竹氏でしたが、厳しいビジネスの世界、こんなことにも対処しなくてはなりません。
歓迎会もだいなし。
すっかり酔いの醒めてしまった日焼け顔の葉竹氏。
とるものもとりあえず、酒臭さを消すためにマウスウォッシュだけはしっかりやって、あたふたとお客さんのところに向かった気の毒な葉竹氏でありました。
葉竹氏の運命やいかに?
この続きは次回(その3)にて。