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食育の世界で活躍してみたい人、必見!
人気「野菜ソムリエ」と「プロダクション・チーフ」が
食育の世界にご案内します。
◆◆◆
チーフの松宮園生です。
こんな記事みつけました。
「バナナで嘘をついた男 逮捕」
JR山手線の電車内で見知らぬ女性に嘘をついたとして、警視庁品川署は24日、嘘つきの現行犯でワシントン州ベルビュー市在住の食育講師、マツミヤ・ソノー容疑者(年齢不詳)を逮捕した。
品川署によると、マツミヤ容疑者は山手線の電車のなかで、渋谷駅でたまたま乗りこんできた会社員のA子さん(28)に近づき、ハンドバッグのなかに手を入れながら、
「バナナはコンテナ船で運ばれてくるんだ」
と嘘をささやき続け、女性のハンドバックから財布を取り出し、現金2万円とパスモカードを抜き取ったという。
A子さんは品川駅で下車、ただちに駅員に通報し、マツミヤ容疑者はその場で逮捕された。
マツミヤ容疑者は、
「バナナはコンテナ船で運ばれると信じていた。違うなんで信じられない」
と供述しているという。
A子さんは青果会社に勤めているため、マツミヤ容疑者の嘘が分かった。
「知ったかぶりをして嘘をつくなんて許せない。女性の敵だ」
と怒りがおさまらない様子。
事情を聞いた周囲の女性からも、同様の声があがっている。
ドールやチキータの担当者によると、バナナはコンテナ船ではなく、バナナ専用に建造された「バナナ専用船」と呼ばれる大型の船に積まれて運ばれてくるのが普通だという。
マツミヤ容疑者は「食育プロダクション」というブログ上でも知ったかぶりをして同じ嘘をついている可能性があり、警視庁は余罪を追及している。
(食育新聞)
食育の世界で活躍してみたい人、必見!
人気「野菜ソムリエ」と「プロダクション・チーフ」が
食育の世界にご案内します。
◆◆◆
チーフの松宮園生です。
近所のスーパーで
「エブリデー・ロープライス(EDLP)」
というキャッチフレーズを見たことはありませんか?
これは、
「いつ来店しても安いヨ。いつ来店しても、同じ値段ダヨ」
という意味のスローガンです。
季節によって値段を変えたりしないし、セールも行わない。
そのかわり、いつ来店しても同じ値段だ。
ということを表しています。
このキャッチフレーズ、気をつけてみてみると、日本のスーパーマーケットでも見かけることが少なくありません。
ポスターとか、ポップとかに書かれています。
この言葉「エブリデー・ロープライス(EDLP)」を世界で最初に始めたのが、「ウォールマート」という名前のスーパーマーケットです。
◆◆◆
ウォールマートは世界最大のスーパーマーケットです。アメリカの会社です。
世界で2番目に大きな会社でもあります。
年間の売上高は30兆円くらい。
30兆円なんて言われてもピンと来ませんね。
僕の小遣いと比べて多いのか少ないのか。
ちょっと数字比べをしてみましょう。
●日本のすべての農業会社・農家さん(酪農も含みます)の売上を合計すると、だいたい年間10兆円です。この3倍の金額を、ウォールマートは1社で売上げています。
●日本政府の国防予算はだぶん5兆円くらいです。ウォールマート1社の売上は、この6倍。
●すべての日本人が1年間に外食(レストラン)に支払うお金を合計すると、だいたい24兆円です。ウォールマートは1社でそれ以上を売上げています。
●東京都の1年間の予算はだいたい6兆円です。ウォールマートの売上は1社でこの5倍。
●もしあなたがウォールマートの経理部長だったら、銀行の預金通帳を見るとたとえばこんな桁数の数字が並んでいるわけです。
12,852,377,196,091
漢字で書くと、「十二兆八千五百二十三億七千七百十九万六千とび九十一円」。
(ただしこれはドルを円にした場合です。また、実際にはアメリカには預金通帳みたいなものはあまり使われていません)
日本では、イオンとイトーヨーカ堂が国内売上1位の座を競っています。
イオンはマイカルやジャスコを傘下に入れており、イトーヨーカ堂はセブンイレブンとグループを組んでいます。
この2社がどのくらいの大きさなのか、世界のスーパーマーケットのランキングをみてみましょう。
↓
(2005年の売上高ランキングです)
1位ウォールマート(アメリカ):30兆円
2位カルフール(フランス):10兆円
3位メトロ(ドイツ):7兆円
4位クローガー(アメリカ):6兆円
5位テスコ(イギリス):6兆円
…
9位イトーヨーカ堂:4兆円(ただしセブンイレブンなどを含む)
10位イオン:3兆円(ただしマイカルやジャスコなどを含む)
まあまあ、かな。
でもウォールマートやカルフールには遠く及ばないな。
なんて思われたことでしょう。
イオンもイトーヨーカ堂もこのへんのところをすごく気にしていますので、本人の前では言わないようにしましょう。
(本人って、誰?)
ウォールマートのような超巨大スーパーマーケットは日本市場を虎視眈々とねらっています。
彼らの侵入を防ぎたい日本のスーパー。
両者のあいだでさまざまな「戦い」が繰り返されています。
この「外国勢 vs 日本勢」のおもな戦いを、将棋の名人戦風に書くと、
先手(外国勢):フランスのカルフールが日本に進出
後手(日本勢):驚く
先手(外国勢):イギリスのテスコが日本のスーパー「つるかめ」に出資
後手(日本勢):カルフールの仕入れルートを妨害しようと頑張る
先手(外国勢):アメリカのウォールマートが日本のスーパー「西友」を子会社化
後手(日本勢):カルフールの仕入れルート妨害を続行
先手(外国勢):カルフール、日本から撤退。イオンにあとを任せる
後手(日本勢):ほっと胸をなでおろす
こうなっています。
これでお分かりかと思いますが、現在、西友スーパーはウォールマートの傘下に入っています。
◆◆◆
エブリデー・ロープライス(EDLP)。
いつ来店しても安いヨ。いつ来店しても、同じ値段ダヨ。
ウォールマートは商品が安くて人気があるのですが、社員の給料が安いことでも有名です。
「ウォールマート社員のみじめな苦労話」、ときどきメディアに取り上げられたりもします。
みなさんはどう思いますか?
品物が安くて質がよく買いやすい。その陰で、社員が安月給で泣いている。
そういう店の品物を、やっぱり買いますか?
松宮園生です。
このブログを始めてまもないころ、
「食育の資格講座って、似たような名前のものがいっぱいあります」
ということを書いたような気がしますが、また同じテーマで書きます。
資格の名前って、だいたいこんな構造になっています。
↓
○○アドバイザー
○○インストラクター
○○エキスパート
○○カウンセラー
○○クリエイター
○○コーディネーター
○○コンサルタント
○○コンシェルジュ
○○指導士
○○スペシャリスト
○○ソムリエ
○○ティーチャー
○○デザイナー
○○パートナー
○○プロデューサー
○○マイスター
○○ザ・グレート
この ○○ のところに
「フード」とか
「食育」とか
「雑穀」とか
「コンフィクショナリー」 (←お菓子のことです) とか
「ロハス」とか
「健康」とか
「村おこし」とか
「宴会芸」とか
「核兵器」とか
「メキマン」とか
好きな言葉を入れると、資格名が「いっちょ上がり」(←死語)です。
「食育」の場合、どうかというと、
食育アドバイザー (ありました)
食育インストラクター (ありました)
食育エキスパート (ありました)
食育カウンセラー (ありました)
食育クリエイター (空席です、たぶん)
食育コーディネーター (ありました)
食育コンサルタント (ありました)
食育コンシェルジュ (あると聞いていますが、未確認)
食育指導士 (ありました)
食育スペシャリスト (ありました)
食育ソムリエ (空席です、たぶん)
食育ティーチャー (空席です、たぶん)
食育デザイナー (ありました)
食育パートナー (あると聞いていますが、未確認)
食育プロデューサー (空席です、たぶん)
食育マイスター (空席です、たぶん)
食育ザ・グレート (たぶん、ずっと空席でしょう)
こんな感じで、資格講座が存在しています。
なんというか、
「人口100人の村に、よく似たカフェが10店もある」
みたいな感じがしてます。
むむむむむ。
ま、べつにいんだけど。
僕が文句をいう理由はとくにないよな。
◆◆◆
でも、そういう資格を取ってみたい人にとっては少しお気の毒かもしれません。
いったい、どれを選んだらいいのでしょうか?
皆さんのなかにも、すでにそういう資格を取られた方、いらっしゃいませんか?
もしいらっしゃったら、
「なぜその資格を選んだのか」
「資格をとったあとの感想」
を教えていただけるとうれしいです。
食育の世界で活躍してみたい人、必見!
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◆◆◆
シニア・野菜ソムリエの遠山由美です。
ご無沙汰しておりました。
相変わらず野菜消費は減少を続けておりますが、野菜・果物の話を聴きたい
とおっしゃってくださるかたは、嬉しいことに、少しづつ増えてきています。
で…この4月から、JA静岡中央会さまにスポンサーになっていただき
週1回のラジオ生番組を持たせていただいてます。
「JA 旬の食卓 メモいらず」がそれ。
まあ…9分間という短いコーナーではありますが、しっかり取材して
「今食べないと、損しちゃいますよ?」という逸品をご紹介しております。
♪ 西から、浜名湖見えたらSBS 東から、箱根を越えたらSBS ♪
というわけで、火曜日の昼下がり、静岡県内および
静岡よりの愛知県や、静岡よりの神奈川県をドライブなさる際には
(静岡県よりの山梨県…ってのは無理でしょうかね。南アルプスは標高高いから)
ぜひ、SBSラジオの「ラブラジ」(←Love Radioの略です)
にダイヤルをあわせて下さいませ。
ご興味を抱いてくださる奇特なかたはコチラでご確認を。
http://www.digisbs.com/love/tue/
ちなみに…
メモいらず、とはメモする必要もないほど簡単なオリジナルレシピのご紹介。
簡単なのって…案外難しい。
料理好きが高じて、なぜか野菜ソムリエになってしまった遠山は
ついつい、複雑なら複雑なほど、その料理に萌え?になる傾向がありますので
苦労しております。
そのほか…食育も微妙な盛り上がりを見せておりまして…
食育プロダクション、しばらくお休みをいただいておりました。
食育の微妙な盛り上がり方につきましては
どうぞこの「食育プロデュース委員会」でご確認下さい。
さて本題でございます。
「ペプシ・キュウリ風味」発売だそうです。
その名も「ペプシアイスキューカンバー」。
発売日は6月12日。6月いっぱいの期間限定ですから
とりあえず試してみたい人も多く、結構売れるかもしれません。
なんでも「ほのかに香るキュウリの風味と、コーラならではの炭酸の刺激が絶妙なバランスの爽やかな味わい」なんだそうで。
唐突な感のある「キュウリ」ですが、一昨年は「レッド」昨年は「ブルー」を出しているので今年は「グリーン」ということだそうです。
ホウレンソウやブロッコリーではなく、キュウリが選ばれたのですね…
キュウリ…野菜ソムリエ的にはひとまず納得の選択ではあります。
キュウリの販促に一役かおう!と思ってくださったのなら、なおさら歓迎です。
「キュウリの香り成分」に関心を持っていただき
キュウリの新しい魅力に気がついていただけるのなら、という思いもあります。
が「味覚教育」を掲げる方々のご意見はどんなもんでしょ。
「甘いキュウリは許せん!」でしょうか。
実は…四葉(“スーヨー”と読みます)という
お漬物に最適な独特のキュウリ品種を作り続ける地区の近くに住む遠山。
畑でとれたてのキュウリを、ポキリ→ガブリ、という仕事も多く
そのポキリの際に立ちのぼるあま?い香りはメロンそっくりだと感じております。
少し時間がたつと、スイカの香りにも感じられます。
そりゃ、そうですね。キュウリもメロンもスイカもウリ科ですから。
三者に共通な成分を含有しているのでしょう。
カボチャもウリ科で…これも丸ごと1個のものに包丁を入れると
かすかにスイカのような、メロンのような香りがします。
(切って売っているものからは香りません)
地場の特産品として、地元では「キュウリソフト(クリーム)」作成計画が密かに進行しておりますし、過去キュウリのジュースレシピをご提案した経緯もございます。
(キュウリ&キウイ、とかキュウリ&梨 など、意外なおいしさです。
お試しあれ。)
そういえば、焼酎にキュウリ、ってありますよね。
カッパならずとも、コレを好きっていう人は案外多いもの。
「キュウリペプシ」の発想はこんなところからきているのかもしれません。
プリンにお醤油をかけるとウニの味…というのはよくききますが
ここ静岡では…キュウリにハチミツをかけるとメロンの味…といわれています…
(いえ…静岡とはいっても、中部のごく限られた地域限定の「いわれ」です。
なんといっても、静岡は日本一の「高級マスクメロン」の産地でもありますから
こんなことしてるのは、この地区だけかも…いえ、この地区どころかごく一部の
キュウリ栽培農家さんと、JA静岡市と私だけかも。
高級メロンの産地の皆様、ゴメンナサイ。)
そういえば少し前に「イチゴミルク味の魚肉ソーセージ」が売り出されたときにも
早速ためしてみましたが…飲み込むことすら困難でした…
「子供でも食べやすいように」とか「おやつ用に」とか
メーカーさんはおっしゃっていましたが
味覚教育の観点から大いに疑問ありだと感じました。
確かに味覚は個人の自由ですし
食に偏見を持っていては、新しいレシピも生まれないし
グローバルな世の中生きのびられないかもしれません。
が味覚は経験と学習により習得されるもの。
「おいしい」と感じるのは体が必要としている栄養素のサイン…
「マズイ」と感じるのは体が摂取を拒否している成分のサイン…
だと考えると、味覚は健康な体を作るうえで需要な役割を担っているのですね。
(ただ…おいしすぎて、食べすぎて、メタボ、となるとこれまた問題なわけで。
おいしいと健康の間には「脳」だの「心理」だの難しい問題が横たわっているのです)
こう考えると、味覚は個人の勝手ばかりとはいっていられません。
「正しい味覚」というものが存在することになります。
幼少期に「健康な体と味覚を結びつける訓練」をする必要が生じ
「味覚教育」が食育のひとつの分野となるわけです。
そういえば以前アメリカに行ったとき
「ダイエット・コーク・プラス」なるものをみつけました。
(おもしろかったので、カラのボトル、持って帰ってきて、手元にあります。)
のんでみたところ、普通のコークと変わらない…
栄養成分表示をみたところ
ビタミンB6、B12、ナイアシンといったビタミンB群とマグネシウム、亜鉛が強化されていました。
この秋にはアメリカでペプシコさんもビタミンB群とクロム入りの果実飲料を投入するとか。
確かに食育先進国のアメリカでは
学校付近の自動販売機には低脂肪ミルクと100%天然果汁のジュースと水しか入れてはならない、という法律のある州があるくらいですから
「不健康イメージ」の清涼飲料水メーカーさんは必死なのでしょう。
たかが清涼飲料水、されど清涼飲料水。
「味覚教育」「健康教育」。
この二つの観点から、これは十分食育の教材になるニュースなのでした…
なぜか、発売元のサントリーさんのサイトにはまだアップされていませんので
参照できるHPはありません。ごめんなさい。
(ところで…ニュース記事によって
「キュウリ味」のペプシ、としているところと
「キュウリ風味」のペプシ、としているところとがあります。
「味」と「風味」はちがうでしょ、と思う私は
…小姑っぽいでしょうか…キヲツケマス)
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
アグリドラゴンという勇ましい名前の会社に部長として就職したガングロ葉竹氏。
就任した初日、葉竹氏の歓迎会が催されました。
ほろ酔い加減でそろそろ誰かが裸踊りでもしそうな頃合いに(←昭和か)、突然トラブルが飛び込んできました。
売上の半分を占めるいちばんのお得意先から電話がかかってきて、
「おたくの商品は全部国産のはずだよな。それがなんだ、中国産のものが混じっているじゃないか。
どうなっているんだ。ただちに責任者が説明に来い。今すぐ来い。2時間以内に来い」
というものだったのです。
◆◆◆
就任初日とはいえ、責任者といえば葉竹氏しかいません。
葉竹氏は、ひとりでお得意先の事務所に向かいました。
呼びつけられたところは横浜の大黒埠頭にある物流倉庫です。
大黒埠頭というのは横浜港の一角にある埋立地で、貨物船がばんばん横づけするところです。
そのために物流倉庫も密集しています。
酔いもさめた葉竹氏がタクシーを降りてふと目をやると、夜であるにもかかわらず近くで大きなコンテナ船がバナナの荷降ろしをしているところでした。
暗がりに明かりをつけて荷降ろしをするコンテナ船は、まるでチョウチンアンコウのようです。
「横浜といえば、メキマンが上陸したって、いってたな…」
つぶやく葉竹氏。
ふいに甘酸っぱい気持ちがこみあげてきました。
「いやいや、自分には関係のないことだ」首を強く横に振り、甘酸っぱい感情をかき消すように、葉竹氏は早足で歩き始めます。
お得意先の事務所で、葉竹氏は飛んで火に入る夏の虫。
さんざんに絞られました。
「見ろよアンタ、これを」
広い倉庫の中。
先方の部長さん(わりと日焼け)が指さす先には段ボール箱が山積み。
ホウレンソウだのネギだのが入っています。
問題はその箱でした。
書かれている文字が、漢字だらけなのです。
みるからに、中国語です。
「これ全部、オタクから届いたんだよ」
「秋葉原からですか?」
「そのオタクじゃねえよ。アンタの会社から届いたっていってんだよ」
「はあ」
「ウチは日本の農家としかつきあっておりません、って言ってたよな、あんたのとこの若いの」
「はあ」
過去の事情を知らない葉竹氏には、「はあ」という以外に言葉がありませんでした。
「こういうのをね、羊頭狗肉(ようとうくにく)っていうんだよ」先方の部長さんは嫌味たっぷりに続けます。「またの名を、詐欺という」
「ヨートークニクって、なんですか? 学校、行ってないんで…」
「羊頭狗肉も知らねえのかよ。あきれた人だねあんた。それじゃ大学、受からんぞ」
「いや、ですから学校、行ってないんで…」
「羊頭狗肉ってのはな」その部長さんは言いました。「ヒツジ頭にイヌの体をしていることをいうんだ」
「はあ」
「またの名を、嘘つきという」
これ、口グセのようでした。
つーか部長さん、羊頭狗肉の説明、わけわかりません。
「とにかくだな」長々と説教をしたあと、その部長さんは言いました。「オタクの責任で、つっても秋葉原って意味じゃねえぞ。アンタの会社の責任で、これ全部回収すること。代わりの国産野菜をすぐに集めてくること」
そういうことになりました。
◆◆◆
翌朝、葉竹氏がこの取引を担当していた若手社員(色白)に事情を聞いてみると…
「なーんだ、そんなことだったんですかあ」
あっけらかんと、その社員は言いました。
「産地なんて、ぜんぜんチェックしてませんでしたあ。どこから中国産が混じったんでしょうかねえ? ま、たまには中国だっていいぢゃないですかあ。中華料理うまいし。バレなきゃ」
ひぇー!
葉竹氏はこころのなかで叫びました。
こころのなかでバンザイの姿勢もしました。
あまりのことに、怒りさえわいてきません。
この会社、アグリドラゴンは、モラルもなければ、責任者も不明な会社だったのでした。
(けっこう深刻な状態で、次号につづく)
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
このテーマを書くのは久しぶりです。
前回(その7)をご覧になりたい方はここをクリックしてください。
◆◆◆
食育の仕事に関連して、
日本にもあるようでないような、アメリカの職業の話です。
Health Educator (ヘルス・エデュケーター)
という職業があります。
就職活動中の学生さんにも人気の職種です。
その証拠に、
「ヘルス・エデュケーターになりたい人のための就職マニュアル本」
というのが本屋さんに置いてあります。
雑誌なんかで
「将来有望な職種トップ100」
という特集があると、たいがい上のほうにランキングされます。
米国労働省の試算では、ヘルス・エデュケーターの求人は毎年増加すると見られています。
現在、年間8千人くらいの求人があります。
つまり、毎年8千人の新規採用があるということです。
2010年にはこれが年間1万人を超えると言われています。
就職先はこんなところです(=こういうところが求人広告を出してます)。
* 自治体
* コミュニティ
* 「健康プログラム」を商品にしている企業(ベンダーと呼ばれます)
◆◆◆
ヘルス・エデュケーター。
無理やり日本語に直すと、
Health (ヘルス)= 健康
Educator (エデュケーター)= 教育者
ということで、
ひとよんで「健康教育者」。
なんかしっくりこない訳語だな…。
昭和の香りのするネーミングっつーか…。
しかしほかにグッとくる訳語、思いつかないし。
「健康指導士」という訳しかたもありますが、日本にはたしか「健康運動指導士」というホンチャンの資格があるので、この訳語ではごっちゃになってしまいますね。
ということで、仕方ねえ、翻訳はあきらめましょう。
カタカナのままで我慢しておくんなせえ。
◆◆◆
ヘルス・エデュケーターは、資格名ではありません。
仕事の名前です。
資格ではないので、知識とスキルさえあれば誰でもできる仕事です。
(ただし、CHS という名前の検定試験があり、この試験をパスすると就職に有利)
資格名ではないので、企業の求人広告のセリフは
「ヘルス・エデュケーターを募集します!」
ではありません。
仕事名ですので、
「ヘルス・エデュケーターのポスト空いてます。誰かやらない?」
という言いかたになります。
(この違い、なんとなくお分かりでしょうか?)
ヘルス・エデュケーターの仕事は、収入、悪くないです。
平均年収で4万2千ドルくらいだそうですので、日本円に換算すると500万円くらい。
アメリカの生活物価の水準を考えると、実際には日本で600 - 700万円くらいもらっている感覚に近いです。
◆◆◆
具体的になにをする仕事かというと…。
この国には「健康プログラム」を商品にしている企業がたくさんありまして、
会社や、自治体や、コミュニティなどに「健康プログラム」を売っています。
「健康プログラム」という商品は、多くの場合、
「仕組み」
「人材」
がセットになっています。
「仕組み」というのは、たとえば
* ヘルシーメニューを社員食堂で手軽に食べられる仕組み
* 自分の健康に社員がもっと関心を持つような仕組み
* 健康をテーマにしたいろんな社内イベント
「人材」というのは、たとえば
* ヘルシーメニューについての社員の質問に答える人材
* 自分の健康に社員が関心を持つような企画を実行する人材
* 社内イベントを実行する人材
です。
この「人材」の部分を担う人を
ヘルス・エデュケーター、ひとよんで健康教育者
というわけです。
したがってこんな仕事をします。
* 社員食堂のシェフを口説いてヘルシーメニューを作ってもらう
* 社内誌に記事を書く
* 社内で健康セミナーを開き、自分も講師をする
* 健康ポスターを作り、社内のあちこちに貼る
* 健康イベントの指揮監督をする
ここまでは、日本でいう「食育の仕事」のイメージに近いですね。
子供の食育ではなく、大人の食育ですけど。
こういう仕事がちゃんと
「求人広告に出る」
ように、日本もならないかなあ…。
ヘルス・エデュケーターの仕事には、さらにこういうのも含まれます。
* 会社が「健康プログラム」に来年もお金を出してくれるように、日頃から社長さんや重役をヨイショする
* 「健康プログラム」を支援する補助金を自治体が出す場合があり、その補助金を獲得するための申請書を書いたり、審査員の前でプレゼンテーションをしたりする
↑
このへんは、ヘルスケアというよりもビジネスマンの仕事に近いですね。
ま、ここまでやるんだったら、たしかに給料もよくないとね。
日本で言うと、
* 栄養士さんの仕事
* ライターの仕事
* 講師の仕事
* ポスターなどのツール制作の仕事(広告代理店や企画会社のような仕事)
* イベントの仕事
* ビジネスマンの仕事
を全部足して因数分解して微分して割って、よく練ってコショウをふって電子レンジで10分チンしたような感じでしょうか?
個人的には、
「プロフェッショナルな食育の仕事」
って、ひとつにはヘルス・エデュケーターみたいな形もありなんじゃないかなあ、と思います。
仕事の内容も面白そうだし。
年収だって悪くないし。
将来有望だっていうし。
今回はここまでとさせていただきます。松宮
食育の世界で活躍してみたい人、必見!
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
21世紀の世界にありながら、あまりにイナカであるために今も「江戸か」とツッコミたくなるような生活をしているテケテケ村。
忍者もいたりします。
それなのになぜか村ではサプリメントを作っています。
マツオ少年は携帯電話を持っています。
そのマツオ少年ですが、長老に言われてある日ふらりとアメリカに旅に出ました。
◆◆◆
ロサンゼルス空港に到着したマツオ少年。
とりあえずさっさと入国手続きを済ませ、ハーツレンタカーでフォードのエクスプローラというわりと大型のクルマを借りました。
(ハーツは米国最大手のレンタカー会社です)
「さてどこに行こうか」
路肩にクルマをとめてマツオ少年は考えました。
そりゃそうですね。ノーヒントでカリフォルニアに来たわけですから。
持参した「地球の歩き方」を読んでも、さっぱり何も出てきません。
そのとき、あるニオイがただよってきました。
サプリメントのニオイです!
鼻のきく野性児マツオ少年は、ニオイがどこから来ているのか、だいたいの方向と距離がわかりました。
で、さっそくそこに GO!
着いたところは、世界最大の自然食品店、ホールフーズ・マーケットです。
マツオ少年もテケテケ村でサプリ修行をしていただけのことはあり、この店の名前だけは聞いたことがありました。
なかに入ると、少年は野菜売場も無視、寿司コーナーにも目をむけずに、サプリメント売場に直行しました。
ニオイの元が、ここにありました。
◆◆◆
ホールフーズマーケットは自然食品店ですが、程度のよいサプリメントも多数取り揃え、皆様をお待ちしております。
(セールスマンか)
マツオは適当に10品ほど買いました。
自分でも飲むつもりですが、どんなメーカーが作っているのかとか、どんな作り方をしているのかとか、いろいろ調べてみたかったからです。
選んでいるときに少し驚いたことがありました。
サプリメントの種類が、細かいのです。
日本で聞いたこともないサプリメントももちろんありました。
でもそれはまあ、国が違えば品物が違うのは想像がつくので、驚くにはあたりません。
そうではなくて、マツオが驚いたのは、
たとえばマグネシウム。
ミネラルの一種です。おそらくカルシウムの次にメジャーなミネラルでしょう。
そのマグネシウムですが、日本ではたいてい「マグネシウム」として売っています。
原料のマグネシウムにはいろいろありますが、商品としては「マグネシウム」一本です。
ここでは違いました。
「酸化マグネシウム」
「硫酸マグネシウム」
「アスパラギン酸マグネシウム」
などの区別がありました。
それぞれ別々の品物として売っているのです。
つまり、マグネシウムを買いにきたお客さんは、
酸化マグネシウムを選ぶのか
硫酸マグネシウムを選ぶのか
アスパラギン酸マグネシウムを選ぶのか
を自分で決めなければならないのでした。
逆にいうと、アメリカ人でサプリメントを買う人は、そういうことを
「自分で決めている」
わけですね。
「なんだ、そんなの店員に聞いて決めればいいじゃん」
と思うかたもいらっしゃるでしょう。
「すみませーん。ボク、胃腸が弱いので下痢しにくいマグネシウムを選びたいんだけど、どの品物がいいですかあ?」
(註。マグネシウムは重要なサプリメントですが、人によっては量が多いと下痢をします)
聞くほうは気軽に質問するんですけど、店員がどう答えるかはビミョーです。
というのは、答え方を間違えると法律違反になるからです。
このへんの詳しい話は後日、します。
◆◆◆
ホールフーズで購入した品物を、マツオはしげしげと眺めました。
とくにラベルを。
ラベルの書き方は細かい法律が複雑にからんでいるので、カンペキなラベルを書くのはけっこう大変なのです。
ラベルを読んで、アラさがしをするのがマツオを含むテケテケ村民の趣味でした。
しかし敵もさるもの、なかなか尻尾を出しません。
感心したマツオは、サプリメントの製造元を訪問しようと思いました。
ラベルの下のほうに、問合わせの電話番号が載っています。
初めての英語の電話です。
ドキドキしながらマツオが携帯電話を開こうとしたとき…
電話が鳴りました。
「ハロー」江戸譲二の声でした。「アナタ、そんなところに電話してもダメネ」
「えっ、なんで行動がわかったの?」
「アナタの行動、読めるネ。ラベルに載ってる製造元は、ホントの製造元じゃないヨ」
「えっ、そうなの?」
「ホントの製造元を知りたかったら…」
(以下次号)
食育の世界で活躍してみたい人、必見!
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食育の世界にご案内します。
◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
広告代理店に勤める姉から
「サラリーマン部長さんに自分を認めさせる3つの魔法」
を教わったA子さん。
今では企業スポンサーがつき、お金の心配もなく、イキイキと食育活動をしています。
3つの魔法とは何だったのか?
そのひとつは
「雑誌 WEDGE を読め」
というものでした。
◆◆◆
2つめは何でしょう?
リビングでくつろぐ姉妹の会話を聞いてみましょう。
「人を動かす秘訣は、やっぱりサプライズなんじゃない?」
姉は言いました。
「いろんなサプライズがあるけど、たとえばさ、食育に関係のあるサプライズがいいんじゃないの?」
「食育に関係のあるサプライズ…」
「そう。サラリーマンがピクピクするような」
「ブレゼントとか、持っていくってこと?」
「サプライズはブレゼントだけとは限らないんじゃない?
ま、全粒粉のクッキーでも焼いて『皆さんでどうぞ』というのは喜ばれるかもね。
ピクピクするかどうかは分かんないけど」
そのとき、姉の携帯が鳴り、姉はリビングがら出て行きました。
しばらくして姉は戻ってきて言いました。
「急に打合わせが入ったから行くよ」
青い顔をしています。
仕事上、なにか良くないことが起きたようです。
妹のA子さんが知るかぎり、姉がこんな表情をするのは、2年前にメキマンが来日したとき以来でした。
バタバタと着替えを始めた姉を、A子さんはあわてて呼び止めました。
「ちょっとお姉ちゃん。サプライズの答、教えてよ」
「あ、そうだったね」姉も早口で言いました。「CSR」
「え? いま何て言ったの?」
「CSR」
そう言い残し、姉はピューと家を飛び出していきました。
「まるでどら猫を追うサザエさんみたい」
と、ひとり残されたA子さんはつぶやきました。
「CSR」
姉は確かにそう言い残しました。
なんのことでしょう?
こんなアルファベット3文字のどこが、サプライズなのでしょうか?
「聞き違いかなあ。ひょっとしたらCSRじゃなくてCSAなのかも」
と思ったりもします。
CSAというのは、農業関係の言葉です。
A子さんは、悪名高い
「松宮園生の、売れる食育講師 養成講座 基礎コース」
に泣く泣く通っていたことがあり、そのときにこの言葉を習ったのです。
(CSAについての説明はコチラ)
とはいえ、CSAがサラリーマン部長のサプライズになるとは、ちょっと思えません。
「CSRってなんなのよー!」
叫ぶA子さん。
イライラしてリビングを歩き回ります。
そのとき、忘れものにようやく気づいた愉快な姉が、はき忘れた靴と、持ち忘れた財布を取りに帰ってきましたが、A子さんはまったく気づきませんでした。
(以下次号)
食育の世界で活躍してみたい人、必見!
人気「野菜ソムリエ」と「プロダクション・チーフ」が
食育の世界にご案内します。
◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
使えない室長までもが逃げ去ったテケテケ商事。使えない人がいなくなったんなら返ってよかったじゃん、と思うヒマもなく、メキマンの影が忍び寄る…
◆◆◆
バナナは「大量生産・大量消費」型の果物です。
レモンやグレープフルーツも同様です。
バナナは、海外の産地(台湾とかフィリピンとか中南米とか)から運ばれるときは、巨大なコンテナ船でやってきます。
コンテナ船はどのくらい大きいかというと、
船体の重さは3万トン。
長さ120メートル。
高層ビルが横倒しになった感じです。
意味不明ですが、この船のBMIを計算してみましょう。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)ですので、
30,000,000÷120÷120=2083
つまり、この船は BMI が2083。
メチャクチャ肥満です。
ひょっとしたら確実にメタボです。
この巨大なメタボ船は、多いときは 1000個ちかいコンテナを運んでいます。
1個1個のコンテナは学校の教室3つ分くらいの大きさで、そのなかに箱詰めバナナが満載されています。
気が遠くなるような数のバナナが、巨大なコンテナ船のなかに積み込まれているわけです。
船を荷物で満載することを、貿易用語で「満船」といいます。
満船となったバナナ船が何隻も何隻も、次々と日本にやってきます。
横浜とか神戸とか名古屋とか、大きな港の埠頭あたりに遊びにいくと、こういう巨大なバナナ船が荷おろしをしているところを見れることがあります。
あの船がバナナでいっぱいになっているかと思うと、日本人の胃袋の闇というか、大きさを実感しますね。
まさに食料自給率40パーセントの国です。
◆◆◆
メキマン上陸。
おおぜいの社員が逃げてしまったテケテケ商事ですが、忠誠心の強い数名の社員は逃げずに居残りました。
メキマン上陸の知らせを受け、テケテケ社長はただちに居残った社員を集めて作戦会議をしました。
作戦会議で決まったことは以下です。
社員はふだんどおりの仕事を続けること。
松宮(僕)はキトキト物産の調査を続けること。社員に知られているので、もはやゴクヒ調査ではなくなったが、肩書は相変わらず「ゴクヒ調査課長」のまま変えないこと。
テケテケ社長はウルトラ警備隊またはガッチャマンに救援を求めること。
有意義な会議でしたが、残念なことがひとつありました。
「メキマンの正体を教えてください。人間ですか? 怪獣かなにかですか? なぜ我々をねらっているのですか?」
僕のこの質問に、誰も答えてくれませんでした。
みんな、頬を染めて下を向き、もじもじそわそわするばかり。
というわけで、僕はフラストレーションを抱えつつ、次の行楽地、静岡に移動しました。
出がけに社長の執務室をのぞくと、テケテケ社長はウルトラ警備隊やガッチャマンの電話番号を調べるためにタウンページと格闘していました。
我々は無言で固い握手を交わし、それぞれの任務にとりかかったのでありました。
◆◆◆
最新の情報によると、横浜に上陸したメキマンは時速500メートルというゆっくりした速さで東京に向かっているようでした。
ゆっくりとはいえ、本気になったカタツムリより、かなり早いスピードです。
時速500メートルということは、電車に乗ったわけではないらしい。
このスピードだと、メキマンが東京に到着するより先に僕の調査は完了します。
よっしゃ。
何がよっしゃなのか分からないけど、ガッツポーズ(←死語?)をする僕。
メキマンもそれを察したのか、なんと僕の携帯に牽制メールを打ってきました。
差出人:メキマン
件名:はじめましてメキマンです
本文:いつもお世話になりありがとうございます。例の件ですが、その後の状況はいかがでしょうか? そろそろ調査を中止していただきたく、ご検討よろしくお願いいたします。
なかなか礼儀をわきまえた文面です。
そのとき僕はすでに静岡・神戸の視察を終え、最後の訪問先、松山にむかう急行列車に乗っていました。
メキマンが東京に着くのが早いか。
僕がキトキト物産松山支店の偵察を終えるのが早いか。
「まあ、勝てそうだな…」
時計をみてつぶやく松宮。
僕は後ろに流れる景色を見ながら少し考えました。
それから決心して、メキマンに返事メールを書きました。
(以下次号)
松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
マツオがアメリカにいくのはいいけど、アメリカのどこに行くのか。
そんなことも分からず すったもんだしたテケテケ村。
忍者の曖昧な報告を旅行代理店の人が上手に解釈し、やっとカリフォルニア州ロサンゼルスに行くことが決まりました。
◆◆◆
その忍者の苦労話をします。
彼はテケテケ村を襲ってくるというウワサの「魔法使いステマグさん」の情報を求めて東京に出かけ、何人ものガイジンに声をかけました。
彼はアメリカ人を見たことがなかったので、会ってみたらインド人だったり、中国人だったり、バルタン星人だったりと、失敗を繰り返しました。
最近は危ない事件が多いため、ガイジン女性は日本人男性から不用意に声をかけられることをたいへん警戒しています。
(まじめな話、日本もアメリカも物騒ですね)
そこで忍者は、気をつかって男性ばかり声をかけましたが、それはそれで気持ち悪がられたようです。
それでも根性で声をかけ続けた結果、1人のアメリカ人に会うことができました。
その人はエド・ジョージという名前でしたので、忍者はその人を江戸譲二と呼ぶことにしました。
(同じやんけ)
日本語ができない江戸譲二と、英語のできない忍者。
2人のやりとりは困難をきわめました。
が、最後に江戸譲二は
「ニンジャのコスプレをしているこの男は、どうやらサプリメントを輸入したいらしいぞ」
というところまで漕ぎつけました。
輸入したいというのは間違っていますが、サプリメントのことで話しかけてきた、というところは正しい理解でした。
忍者にとって幸いだったのは、江戸譲二が昔「GNC」で働いた経験のある、サプリメントおたくだったことです。
江戸譲二は言いました。
「サプリメントを輸入したいんデスネ? それだったらカリフォルニアに行くといいデース」
「刈穂?」
「イエース。カリフォルニアデース」
「刈穂の国かあ、ニンニン」
忍者は広げた手帳に
「刈穂の国、ニンニン」
と元気よく書きました。
これが、「刈穂の国」の由来です。
お疲れさまです、忍者さん。
いまだったらオヤジのダジャレだけど、あんたの時代は真剣だったんだよね。
◆◆◆
江戸譲二が昔つとめていた「GNC」とは、世界で1番おおきなサプリメント専門チェーンです。
詳しくは「食の世界のスーパーパワー」シリーズにて書きます。
今回は薬事法について説明します。
薬事法というのはたいへんヤヤコシイ法律でござんして。
爆発的に理解不能なのですが、かいつまんで脚色して書きます。
これを書いておかないと、サプリメントの話が進まんのですわい(←ジジイか)。
人間が口に入れるものは
「食べもの」
「クスリ」
に分かれます。
食べものとクスリはどう違うのでしょう?
漠然と何とな?くどこか絶対に違う、という感じはしますよね?
でもその違いを正確に言葉で言いなさい、と言われたら困ります。
「医食同源ていうんだし、区別する必要ないじゃん」
そういう意見もあります。
でも日本を含め先進国は、法律により食べものとクスリを分けて管理する道を選びました。
その中心にある法律が薬事法です。
去年でしたか、冥王星は惑星なのかそうじゃないのか、で大暴れしましたね(←誰が?)。
アレは惑星の定義(=惑星とは何か)が学者によってバラバラな解釈だったために起きた騒ぎです。
同じように、クスリの定義もぼんやりとしています。
惑星のほうは今回の騒ぎをきっかけに定義が決まりました。
しかしクスリは今でも定義がぼんやりとしています。
例えば「葛(くず)」という植物、ありますよね。
春だったか秋だったかの七草のひとつです。
葛(くず)の葉っぱは法律ではクスリでしょうか、食品でしょうか?
それを自分で判断するにはどうしたらいいんでしょうか?
答を言うと、葛(くず)の葉っぱはクスリではありません。
食品になります。
なぜ分かったの?
どこに書いてあるの?
この世には「日本薬局方」というヘンな名前のものが存在してまして。
ここには、
「日本政府(=厚生省)は何をクスリとみなすのか」
をひとつひとつ細かく書いてあります。
つまり、超おおざっぱに言うと、「日本薬局方」とはクスリの一覧表です。
クスリとは何かをシンプルに定義づけできないため、
何がクスリになるのか
どんな製造法だったらクスリになるのか
をひとつひとつ吟味して一覧表にし、
「この表に載っているものはクスリだよん、載っていないものはクスリじゃないよん」
というふうに決めちゃったわけです。
したがって、薬事法にはこう書いてあります。
「クスリか食品かに迷ったら、日本薬局方を見なはれ。ほなさいなら」
葛(くず)の葉っぱはこの一覧表に載っていないので、クスリじゃないのです。
葛(くず)の根っこはどうでしょうか?
葛(くず)の根っこはクスリとして扱われます。
日本薬局方に、葛(くず)の根っこが記載されているのです。
葛根湯(かっこんとう)というクスリ、売ってますよね?
アレですアレ。
つまり葛(くず)という植物は、
葉っぱはクスリではないが、
根っこはクスリである。
なぜそうなのかは考えなくてよろしい。
とにかくそうなのだ。日本薬局方によってそう決めてある。
というふうに法律で具体的に定められているわけです。
(長くなりました。お疲れさまでした。以下次号にします)
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松宮園生です。
クルマを走らせ500マイル(800キロ)のドイナカに来ています。
写真のような雰囲気のところです。
ガラガラヘビもいます。
泊まっているボーテル(ボロボロのモーテル)はネットのアクセスが
いまどきダイヤルアップしかありません。
(↑江戸か)
(↑ダイヤルアップは江戸じゃねーだろ)
何しにこんなところに来ているかというと…
◆◆◆
アイダホ州というところがあります。
超ドイナカです。
「アイダホ・ポテト」
って、聞いたことあります?
アイダホ州は、ジャガイモの産地として有名なところです。
他には大豆も作ってます。
昨今の「日本食ブーム」で豆腐に使う大豆がよく売れているので、ほくほく顔(←死語)をしています。
ホントに一番ほくほく顔(←死語)をしているのは、農家さんではなくてカーギルだと思いますが、それを言うと陰謀に巻き込まれてしまうので、言わないことにします。
(カーギルと陰謀の関係については、ここをクリックしてください)
アイダホ州とワシントン州の境目で大豆を作っている農家さん(ほくほく度:7)からこんな電話相談を受けました。
「ジョン・ソイビーンというケチな野郎でござるが」と電話の声の主は言いました。「おれのこと、覚えているかね?」
「は?」
「むかしケンタッキーにいたんだけどね。あんたの取材を受けたことがあるよ」
「なぬ!(←死反応)。ひょっとするとあんたはあのジョンか?」
「そのジョンでござる」
「で相談でござるが」ジョンは言いました。「あんた日本人でござるな。トウモロコシ買ってくれないかな?」
「さっき昼メシを食べたばかりだよ」僕は言いました。
「食べてほしいのではござらん。そんなことのために電話するわけがないだろ」
「あはは。そりゃそうだ。これは一本取られたね」
なにを一本取られたのかさっぱりわかりませんが、和気あいあいとした会話は続きます。
◆◆◆
要するに、こういう話でした。
日本でも新聞やテレビで報道されていると思いますが、一昨年から石油の価格が高騰しています。
ということはガソリンの価格もすごい値上がりしています。
ひょっとしたら皆さんのなかにも、
「いままでハイオク入れてたけど、レギュラーにしよ」
「なるべく電車に乗ろう」
なんてドライバーの方がいらっしゃるかもしれません。
石油が値上がりしている理由は主に2つです。
1) 中東の産出国が石油の生産量を上手にコントロールしていること
2) 中国あたりが急激に経済発展をし、急激に石油を買い始めたこと
理由はどうあれ、クルマ社会であるアメリカでは、石油の値上がりは大問題です。
「石油に代わる燃料を探せ」
ということで、いろいろ大騒ぎしまして、目をつけられたのが
「バイオエタノール」
でした。
バイオエタノールとは、植物から作るエタノール(エチルアルコール)です。
ガソリンと混ぜて使います。
なかでもトウモロコシが向いているというので、アメリカでは食料ではなく燃料向けのトウモロコシが高値で飛ぶように売れました。
これを横目で見ていたジョンは、
「おれもトウモロコシを作るでござる。大豆もまあまあ儲かったでござるが、トウモロコシはもっと儲かるぞ。ムフフ」
と考えました。
彼は最初、アメリカ国内向けにトウモロコシを出荷しようと思ったそうですが、
「石油が値上がりすると、日本はもっと困るに違いない。トウモロコシを欲しがるに違いござらん」
と考え、日本向けに輸出することを思いつきました。
で、手軽なところで僕に電話してきた、と、こういうわけです。
◆◆◆
ジョン・ソイビーンの農場は飛行機で飛ぶような距離でしたが、いろいろ事情があって僕はクルマを走らせました。
早朝に出発し、荒野を休みなしで走り、ジョンが予約してくれたボーテル(ボロボロのモーテル)に着いたのは夜の9時。
マジで疲れました。
ボーテルにチェックインすると、ジョンからのメモ書きがありました。
読みにくい字で、こう書かれていました。
「ワイフに浮気がバレたでござる。ちょっと仕事どころではござらん。数日そこで待っていてくれ。かたじけない」
またかよ…
その場に茫然と立ちすくむ松宮でありました。
(以下次号)
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
流しの料理人ラザフォードの呼びだしでアラスカに向かった僕。
メタボ女性に阻まれながらも、タクアン航空のパイロット、これまたメタボ体型のスケタロー社長が操縦する小型飛行機でようやくメトラカトラ島に到着します。
◆◆◆
メトラカトラ島はもともとは無人島で、住民というのはいません。
ただし、栂(ツガ)や杉やヒノキやトウヒなどの針葉樹が生い茂っているために、輸出用の森林伐採がさかんに行われているところで、木こりのキャンプというものがありました。
ラザフォードが
「キャンプまで来い」
と言ったのは、木こりのキャンプだったのです。
スケタロー氏は波打ち際に作られた着水用の桟橋に、プロペラ機を横づけしました。
その音を聞きつけ、口髭をたくわえた小柄なラザフォードが、のたのたとやってきました。
「久しぶりだなー。よく来たね」ラザフォードは言いました。「まあとにかく何か食おう。食いものはすべてに優先する。あんたも来いよ、スケタロー」
さっそくメシの話でした。
「食いものはすべてに優先する」、なんてセリフ、なんだか暗殺された食通政治家の、いまわの一言みたいです。
木こりのキャンプはプレハブで、桟橋に隣接したかたちで設営されていました。
まんなかに事務所棟と食堂があり、周囲に宿泊棟があります。
木こりの人たちは、4人くらいでひとつの部屋をあてがわれ、そこで寝起きしているようでした。
来客用の部屋もあり、僕はそこに泊まるようです。
木こりたちは全員、現場に出払っているらしく、キャンプはがらんとしています。
ラザフォード、スケタロー、マツミヤの3人は食堂に入りました。
なんともいえないいい匂いが充満しています。
「サンドイッチ食おう」ラザフォードがいいました。「木こりたちは弁当にこのサンドイッチを持っていったから、ここにあるのは残りもんだがね」
食堂の中心に大きなテーブルがあり、そこにサンドイッチの食材が並んでいました。
全粒粉の大麦パン
カリブ風ジャーク・ハムと呼ばれるスパイシーなハム
ワラワラオニオンと呼ばれる、甘味の強い玉ねぎ
ロメインレタス
ランドレイク社製のスライスチーズ
刻みハラペーニョ
大玉のトマトのスライス
パイナップルを刻んで少し焼いたもの
ワカモレ
それぞれが別々の大皿に盛られています。木こりたちはそれを好きなように好きなだけ大麦パンにはさみ、お好みでチリペッパーソースをかけたり、黒コショウをふりかけたりして、弁当として持っていくわけです。
3人はそれぞれ自分流にサンドイッチを作りました。スケタローは辛いのが苦手のようで、ハラペーニョを入れませんでしたが、僕は辛いのが大好きなので食材を全部、大麦パンではさみました。
いやー、その美味だったこと。
さすがラザフォード、食材の仕込みに工夫が凝らされています。
食材の選び方はもとより、ワラワラオニオンの切り方の絶妙さ、パイナップルの焼き具合、ワカモレの濃さ、どれをとっても何でも鑑定団風にいうと「いい仕事してますねえ」。
チリペッパーソースもラザフォードの自作です。これが辛くてうま味がある。
アラスカは林業がさかんです。
木こりの仕事は報酬が高い仕事のひとつで、高い報酬をもらう代わり、彼らはメトラカトラ島のような離れ小島で半年間、キャンプ生活をします。
楽しみはあまりありません。
男ばかりのキャンプです。しかしヘテロしか許されません。
争いを防ぐためにキャンプでは酒を飲むことが厳しく禁じられています。
ギャンブルも原則禁止です(多少のカードゲームは許されています)。
離島ですのでテレビもありません。買い物をする場所もありません。
自然が美しいのと、読書をする時間がたっぷりあるくらいでしょうか。
そういう娯楽のないところですので、キャンプの食事がうまいかまずいかは大問題です。
食事のまずいキャンプでは、木こりの仕事の効率も落ちます。やめる木こりもいます。
食事がおいしいキャンプでは、木こりも気持ちよく働きます。なかなかやめません。
サンドイッチひとつといえども、手を抜けないのです。
そういうわけで、アラスカの林業会社は、腕のいいコックに高い報酬を払ってキャンプに招聘(しょうへい)しています。
ラザフォードは、そうやって招聘されたわけです。
(次号予告)
ラザフォードが「体にやさしく美味」な料理を作っているおかげで、メトラカトラ島にはメタボはいません。
しかしアラスカはもともと「メタボ州」と呼ばれるほど、肥満の目立つところです。
なぜそうなのか。次回はその謎を探っていきます。
松宮園生です。
(前回のあらすじ)
「筆のような野球のような場所」を目指して旅立つ
サプリメント職人マツオ。
テケテケ村を狙うステマグさんという魔法使いから、
村を守れるのか?
◆◆◆
成田空港からアメリカに飛んだマツオですが、そもそもアメリカのどこに飛んだのでしょう?
テケテケ村の長老はああ見えてなかなかテキトーな人物でありまして、マツオにはただ一言、
「アメリカに行くのじゃ」
としか言いませんでした。
マツオの父親もテキトーな男で、
「ま、とりあえず行け」
でおしまいです。
「アメリカって空港だらけよ。アンタどの空港に行きたいの?
それを決めないと航空券だって買えないわよ。バカじゃん」
姉のタケコ(自称 村の小悪魔)がマツオにそう教えてくれたのは、マツオが旅支度(←死語か?)を終えたころでした。
どの空港に行くのか…。
たいへん難しい問題が、マツオのまえに立ちはだかっていました。
◆◆◆
このシリーズでは、サプリメントの作り方について適宜、説明していきます。
サプリメントは一般的に
錠剤になっているもの(タブレット)
カプセルに入っているもの
に分かれます。
ほかには例えば
顆粒になっているもの
などがありますが、主流はタブレットとカプセルです。
<タブレットについて>
タブレットは、栄養成分を固めたものです。
クッキーを焼くのに型どりさえあればいろんな形に焼くことができるのと同様、タブレットもさまざまな形に固めることができます。
三角形に固めたもの。
コンベイトウみたいに宇宙の星の形になっているもの。
などがありますが、クスリっぽい形になっているものが主流です(写真)。
栄養成分を固めてタブレットにすることを「打錠」といいます。
マツオは来る日も来る日もこの打錠に励んでいたわけです。
子供のころ、消しゴムのカスをペタンペタン固めて遊んだことはありませんか?
何が楽しくてあんなことに夢中になったのかは別として、ようするにアレも打錠みたいなものです。
かつてはクスリっぽい形のタブレットを作ることは薬事法という法律により禁じられていました。
サプリメントは薬品でない(法律上は食品扱い)ので、薬品にそっくりの形状はケシカラン。
薬品に誤解されないような形状でなければならぬ。
という理由でした。
いまはその規制が撤廃され、どんな形状のタブレットにしてもよい、ということになっています。
<カプセルについて>
カプセルにはハードカプセルとソフトカプセルがあります。
ハードカプセルは、こんな感じ。
カプセルのなかに、顆粒状になった栄養成分が閉じ込められています。
栄養成分を固める必要がないので、打錠も不要です。
ソフトカプセルは、こんな感じ(写真はちょっと、カラフルすぎるけど)。
液体になった栄養成分を、膜でおおったような形になっています。
酸化しやすい栄養成分を、酸素に触れさせないためによく使われます。
たとえば
ビタミンE
コエンザイムQ10
はきわめて酸化しやすいため、たいがいソフトカプセルになっています。
まじめな話は今回はこのへんにしておきましょう。
◆◆◆
で、結局マツオはどこの空港に向かえばいいのか?
長老にきいても首をかしげるばかりで答がかえってきません。
父親にいたっては、
「鼻の向くほうに行けばよい」
なんて、まるで生前の植木等さんみたいなことを言います。
使えない長老と父親をまえにマツオが途方に暮れている(←死語)ところに、
「魔法使いステマグさん」を探るために長老が雇っている忍者が、中間報告のために村に帰ってきました。
忍者の話では、
「ステマグさん」という名前は、どうやら正式名称ではなく、もっと長い名前を縮めたものらしい。
たいへん便利な魔法使いだといううわさもある。
性別不詳。年齢不詳。
テケテケ村を攻撃しようと計画していることは間違いないらしいが、なぜなのかは不明。
この計画には、アメリカの殿様(茂さん)も加担している。
アメリカにはサプリメントの聖地が2ヶ所ある。
ひとつは「刈穂の国」といい、太平洋を越えたすぐのところにある。
正確には、「刈穂の国」の南半分がサプリメントの聖地といわれている。
「刈穂の国」の殿様はテルミナテルという名前らしい。
もうひとつの聖地は地名も分からない。
「刈穂の国」よりはるかに遠いところにあるらしい。
誰が殿様なのかもよくわからない。
以上が、忍者からの報告でした。
この報告を聞いてマツオは、
「テルミナテルという殿様がいる「刈穂の国」の南半分にある空港に行こう」
と決心したのでした。
彼はその場で旅行代理店に電話をし、
「テルミナテルという殿様がいる「刈穂の国」の南半分にある空港まで行きたい。大人1枚。格安チケット頼みます」
と舌をかまずに言いました。
電話のむこうで旅行代理店の人が
「は?」
とつぶやいたのは言うまでもありません。
しかしマツオは同じことばを繰り返しました。
何時間も押し問答が続いたあげく、旅行代理店もようやく理解したようです。
数日後、マツオの手元にユナイテッド航空ロサンゼルス行きのチケット(エコノミークラス)が送られてきたのでした。
(つづく)
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
バナナ会社の買収をたくらむテケテケ商事。
しかしそれを阻止するつもりなのか、メキマンが動き出した…
◆◆◆
テケテケ社長が買収したがっているその会社の名前は、キトキト物産という名前でした。
「物産」という名前がついているので、バナナのほかにもいろんな商品を扱っているようでしたが、主力商品はバナナでした。
大昔、「子連れ狼」という話があって、映画だかテレビだかでやっていたそうですが、その主題歌をたしか橋幸夫が歌っていたとのこと。
キトキト物産にはそのころ社歌というものがあり、社歌のメロディーは「子連れ狼」とそっくりだったそうです。
どっちがどっちを真似したのか分かりませんが、そのことでテレビ局とキトキト物産は大喧嘩をしたといいます。
社歌で喧嘩するなんて、子供じゃあるまいしねぇ…。
業界では有名な話です。
僕は聞いたことないので知らないのですが、興味のあるかたは「子連れ狼」のメロディーを聴いてみてください。
さて、
「シークレット・バナナ事業部ゴクヒ調査課 課長」
に任命され、キトキト物産の実態調査を始めることになった僕ですが、
そもそも何を調査するのでしょうか?
何を調べるのか、調べることのリストを作る必要があります。
社長の趣味を調べればいいのでしょうか?
社員のあいだで流行っているお店を調べればいいのでしょうか?
売上とか、そんなものを調べればいいのでしょうか?
女子社員のスカートの長さの平均を調べればいいのでしょうか?
「本当ですか?」という人と「マジですか?」という人の比率を調べればいいのでしょうか?
となりのデスクに座っている地味な室長さん(どこかの商社出身)に質問したら、
「そうですねー。売上とかそういう数字も大事ですしねー。スカートの長さもなかなかねー」
と悲しそうにいい、張子の虎のように首をふりながら男子トイレに行ってしまいました。
使えねぇ、この人。
キトキト物産は全国に数か所、支店があり、支店ごとに「ムロ」があることが分かっています。
とりあえず観光も兼ねて視察にいくか。
そう決めた僕は、北から順番に
「キトキト物産支店めぐり」
を始めたのでした。
◆◆◆
バナナは青いまま輸入し、国内の「ムロ」でエチレンガス漬けにし、黄色くしてから出荷する、ということを前回書きました。
このエチレンガスですが、これは植物ホルモンでもあります。
植物を成長させ、成熟させ、老化させる働きがあります。
ムロを経営しようと思ったら、エチレンガスが大量に必要になります。
エチレンガスって、どこに売っているかご存知ですか?
答はしごくアタリマエに「ガス会社」なんですが、当時の僕はまだ答を知らなかったので、これもとなりのデスクに座っている地味な室長さん(どこかの商社出身)に質問しました。
すると室長さん、
「そうですねー。コンビニには売ってないですよねー。薬局かなー」
とのったり悲しそうにいい、張子の虎のように首をふりながら男子トイレに行ってしまいました。
やっぱり使えねぇ、この人。
男子トイレばっかり行ってないで、たまには女子トイレにも行け。
そのムロですが、世の中にはいろんな会社がありまして、ムロメーカーという、ムロを専門に作っているメーカーがあります。
正しく言うと、バナナの入った段ボール箱を並べる棚とか、エチレンガスを充満させたりガス抜きをしたりする器械とか、エチレンガスの濃度を調整する機械とか、濃度や温度を管理するコンピューターシステムとか、そういうものを作っています。
そういう設備をこっそり偵察するため、僕はキトキト物産の支店めぐり=全国行脚(あんぎゃ)をしたのであります。
これをすることで、
キトキト物産は年間どれくらいのバナナを「加工」しているのか
キトキト物産は設備投資にどれくらいのお金を使っているのか
が、なんとなく分かります。
(青いバナナを黄色バナナに変えることを「加工」といいます)
また、支店の建物を見たり働いている人たちの様子を遠くからでも見れば、だいたい何人の人が働いているかがわかります。
全体で何人の人が働いているかがわかれば、その会社の人件費の総額なんかも大雑把に計算できます。
つまり、支店めぐりをすると、いろんなことが想像できるようになるのです。
キトキト物産の支店は、北から苫小牧、千葉、静岡、神戸、松山にあったので、この順番に出張しました。
◆◆◆
苫小牧と千葉の視察を終え、場末の居酒屋で酒を飲んでいたら、テケテケ社長から携帯メールがきました。
(お約束ですね)
こういう内容です。
「松宮くん、お元気ですか。僕は元気です。
メキマンが明日、日本に上陸するそうだ。ヤバい。とってもヤバい。バナナ調査を止めないと、攻撃すると言ってる。
どうしようか。相談したいのでただちに本社に帰ってきてくれ」
翌日、僕はテケテケ商事に出社しました。
こころなしか、社内がガランとしています。
室長(どこかの商社出身)の姿もみえません。
社長の執務室に行くと、憔悴した顔の社長が待っていました。
「メキマンはもうすぐ横浜に上陸する」と、社長は静かに言いました。
「社員の数が少ないようですけど」
「逃げた。室長も病気だと称して出てこない」
「どうするのですか。バナナの調査、止めますか」
「続けてくれ。これは絶対にやりとげたいんだ」
そのとき、ドアが開いて社長の秘書が入ってきました。
「社長」彼女は青い顔で言いました。「横浜から伝令です。メキマンが入国審査をパスしたそうです」
ついに、メキマンが上陸したのでした。
(以下次号)
松宮園生です。
むかしむかし。
××県のすみっこにテケテケ村という村がありました。
1億円の「ふるさと創生資金」をもらってサプリメントづくりを始めて以来、サプリメント村とも呼ばれています。
20世紀のおわりごろ、全国の市町村に規模の大小を問わず国からそれぞれ1億円のお金が配られました。
使いみち自由の、1億円です。
これを「ふるさと創生資金」といいます。
思わぬお金を手にした市町村の多くは、なにをしたらいいのかよく分からなかったみたいで、
金塊を購入したところ
宝くじを買ってあっという間に半分以上スッたところ
みたいなところもあったりしました。
(これ実話です)
テケテケ村は、その1億円でサプリメントづくりを始めたのでした。
◆◆◆
テケテケ村いちばんのサプリ職人の長男として生まれたマツオ少年は、衛生に厳しい親父のもとで、全身を消毒し、白衣を着、帽子をかぶり、マスクをかけ、滅菌された部屋でペッタン、ペッタンと「打錠」の修行にあけくれる毎日でした。
「打錠」というのは、さまざまな成分を混ぜあわせたものを、杵(きね)で固め、ひと粒の錠剤を作ることです。
業界では「打つ」といいます。
「今日のマグネシウム、うまく打てたよ」
てな使い方をします。
打錠するまえに、いろんな成分を混ぜあわせる工程がありますが、このとき熱が発生します。
打錠するとさらに熱が発生します。
この熱は商売の敵です。
熱で有効成分の栄養素が部分的に破壊されてしまうのです。
栄養素の破壊を防ぐため、いかに熱を抑えて打錠できるか。
サプリ職人の腕の良し悪しはここで決まります。
成分の混ぜあわせかた、原料の選び方、打錠の技術。
この3つがキーポイントです。
マツオ少年の親父は村一番のサプリ職人です。
でも、どんな腕の良い職人も、発生する熱をじゅうぶんに抑えることはできませんでした。
熱の問題は、長いことテケテケ村の頭痛の種だったのです。
そんなある日。
親父とマツオ少年は村の長老に呼び出されました。
長老はマツオ少年にお茶をだしながらいいました。
「マツオよ。海のむこうにアメリカっちゅう国があるんじゃが、聞いたことはあるかな?」
「はい。坂本竜馬先生から聞きました。茂さんという名前の殿様が治めているデッカイ国ですね」
「そうか。よく勉強しちょるの」
それから、長老はこんどは親父に向かっていいました。
「あんたの息子をアメリカにやりたいんじゃが。熱を出さない打錠技術があるそうじゃ。その技術を持ち帰ってほしいのじゃ」
親父が目を見張りました。「ありえない」
「あるらしいのじゃ」長老はいいました。「じゃが正確な場所がわからん。筆のような野球のような場所じゃと聞いとる」
筆のような野球のような場所…。
「それと、もうひとつじゃが…」と、長老はつづけました。「アメリカにはステマグさんという恐ろしい魔法使いがおるそうじゃ。わがテケテケ村を攻撃しようと計画しちょるらしいが、どうやって防いでいいか分からん。それも調べてきてほしいのじゃ」
筆のような野球のような場所…。
ステマグさんという恐ろしい魔法使い…。
さっぱり何のことやら分かりませんでしたが、
「まあこれも修行だ。行ってこい」
という親父の一言で、話は決まりました。
数日後、マツオ少年は
「筆のような野球のような土地」
を目指して成田空港を飛び立ったのでありました。
(以下次号)
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
バナナ会社の極秘調査を命じられた僕。
しかしそこには、調査を阻もうとするメキマンの影が…。
◆◆◆
社長のパソコンの画面には、
「テケテケ社長よ。バナナから手を引け。さもないと、メキマンが来る」
という言葉が浮かびあがっています。
社長と僕は顔を見合わせました。
こんなところにメキマンが。
入社以来ひそかにメキマンの正体を探っていた僕にとって、この出来事は驚きでした。
「メキマンが来る…」
社長は小声でぶつぶつ言いながら、パソコンの画面に目を戻しました。
「社長」僕はいいました。「僕のパソコンにもメキマンって書いてあるんです。メキマンって何ですか?」
すると社長の顔色がさっと変わりました。
耳たぶまで真っ赤になったのです。
彼はモジモジしながら足元に目をおろし、「き、きみのパソコンもそうなのかい」と、蚊の鳴くような声でいいました。
「メキマンってなんですか? 教えてください」
「さ、さあ…。おれにもよく分からん…」
「社長、ご存知なんじゃないんですか?」
「い、いや、知らんよ…」
「じゃあ、なにが危険だとおっしゃるんですか? なんでこのメールを僕に見せるんですか?」
「あ、いや」社長はさらにモジモジしながらいいました。「きみなら分かるかと思って…」
煮え切らない社長のようすに首をかしげながら、僕は部屋を出ました。
手には社長からもらった「シークレット・バナナ事業部 ゴクヒ調査課 課長」の辞令を握っています。
メキマンがなんであれ、これからバナナ会社の調査をしなくてはなりません。
◆◆◆
バナナは完熟した状態で輸入することを禁じられています。
主に「地中海ミバエ」と呼ばれる害虫を防ぐためです。
そのため輸入するバナナはまだ熟してない青いうちに収穫したものが、コンテナで日本に運ばれてきます。
「青バナナ」とよくいいます。
「緑バナナ」という場合もあります。
ここでは青バナナで統一しましょう。
未熟なバナナには、地中海ミバエはまだ卵を産んでいないのです。
しかし青バナナの状態では未熟のため食べてもらえない(売れない)ため、バナナ業者は青バナナを日本国内で黄色くします。
なにもせずに放っておけば勝手に熟してどうせそのうち黄色くなりますが、それだと時間もかかるし、痛んだりする危険もあります。
そこで、輸入された青バナナにある「儀式」をとりおこない、強制的に数日のうちに黄色くしてしまいます。
どんな「儀式」かというと、バナナをエチレンガスに「漬けこむ」のです。
エチレンガスは、成熟ホルモンの一種で、バナナが熟するのを早めます。
これを
「バナナの追熟」とか「バナナの加工」とかいいます。
バナナをエチレンガスに「漬けこむ」密閉された部屋のことを「ムロ」といいます。
いまやバナナは大量に輸入されてきますし、そのすべてをエチレンガスに漬けこむわけですから、「ムロ」も数多く建設されました。
ムロビジネスはわりと最近まで活況だったのです。
僕が調査をすることになっている会社は、ムロビジネスをしている会社でした。
◆◆◆
翌日、僕はふたたび社長の執務室をノックしました。
調査をするにもお金がかかります。
自分で現場に出張したりすることもありますし、調査会社に依頼するようなこともあります。
だいたいいくらくらいお金がかかるのか、その予算を作ったので、社長に見せようと思ったわけです。
テケテケ社長はパソコンのむこうで青い顔をしていました。
「どうしたんですか?」
「またメールが来たよ」社長は小さな声でいいました。「見るかい?」
社長のパソコンをのぞきこむと、今度はこう書いてありました。
「メキマンは出発した。いま船の上だ。そっちに向かっている」
(以下、次号)
松宮園生です。
唐突ですが、ひとりでアメリカ旅行をする予定の男性の方に、
ワンポイントアドバイスです。
もし誰かファッションセンスのよいハンサムな男性から
What is your sexual orientation?
と聞かれたら、これはホモなのかそうじゃないのかという意味です。
このとき、頬を染めてモジモジしてはいけません。
大声で、
I am HETERO! (ヘテロ)
としっかり答えるようにしてください。
この言葉、忘れないように。
忘れても死ぬことはないと思いますが、いろいろ人生が変わります。
◆◆◆
では本題へ。
前回、サプリメントの歴史について書きますと予告していましたが、そのまえにチイタッタ先生のことをもう少し詳しく説明します。
ポルトベロー・マッシュルームのソテーをこよなく愛するチータッタ先生は、ああ見えてなかなか偉い先生です。
かつてはアメリカの代替医療学会の会長をしていました。
チータッタ先生はボストン郊外のクリニックで週に2回、患者を受けつけていました。
残りの日は、本を書いていました。
たまに、講演会に呼ばれてスピーチとかしていたようです。
チータッタ先生の専門は「メガビタミン療法」と呼ばれるもので、その名のとおり大量の栄養素を患者に投与します。
いわゆるクスリは使いません。
栄養素といえども大量の投与は危険な場合も少なくないので、そこはチータッタ先生も医者のはしくれ、問診や検査をしながら丁寧にやっています。
このやり方を採用している医師はアメリカには数万人います。
メガビタミン療法では治らない病気もあります。
骨折したのに風邪薬を飲んでも治らないのと同じです。
治せない患者の場合、その病気の専門家を紹介することにしています。
よく
「中国の幻の山でとれたナントカ草は万能薬だ。すべてこれがあれば治る」
と主張する謎の学者とかがいて、風邪だろうが水虫だろうがガンだろうがすべてこのナントカ草で治そうとします。
健康食品の世界に多いタイプですね。
さすがにチイタッタ先生にはそんなこだわりはありません。
自分の方法で治せない患者には、その道の専門家を紹介するわけです。
まあ、医者としてごく普通に振る舞っているわけです。
◆◆◆
チイタッタ先生には2つ、特性というか特徴というか趣味というか性癖というか、まあそんなところがありまして
(1) レストランに行くとヤカマシイ
(2) ときどきちょっと強引
そんな人でした。
一緒に食事をしにレストランに入ると、いつもヤカマシイのです。
ウェイターをつかまえて、根掘り葉掘り質問するのです。
こんなことを聞きます。
「食材は何か」
「それはどこ産のものか。旬なのか」
「栽培方法はどうなっている」
「有機なのか。だったら認証マークを見せろ」
「料理方法はどんなだ」
「調味料は何を使っている」
「その調味料は有機か。だったら証拠を見せろ」
「食器の洗剤は何を使っている。それはエコか。エコだったら証拠を見せろ」
「その食器は有機かエコかどっちだ」
「調理器具は有機か」
「コックはエコか」
「このテーブルはエコか」
「あんた(ウェイター)は有機か」
「むこうに座っているあの客は有機か」
その結果、答が気に入らない場合、ちょっと困ったことになります。
さすがに椅子を蹴って立ち去るようなことはしませんが、「自分で持ってきた水」しか飲まなくなります。
「松宮、オマエは食え。遠慮するな」
なんて言ってくれますけど、その状況で自分だけ食べるような心臓は持っておりません。
そのやかましさが健康オタクとかベジタリアンのあいだで少々有名になりました。
チイタッタ先生の尋問をクリアした飲食店は
「チイタッタ・サーティファイド・レストラン(チイタッタ先生に認められた店)」
ということで格が上がるという現象がおきています。
今回はここまで。
次回以降は、
「サプリメントの歴史」
「チイタッタ先生の戦国ライバルたち」
「チイタッタ先生のところに修行にきた日本人の悲劇」
をテキトーな順番で書きます。
(追伸)
大事なことを言い忘れました。チイタッタ先生はヘテロです。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
流しの料理人ラザフォードに会うために、アラスカに向かった松宮。
アラスカ行きの飛行機で彼を待っていたのは、日本ではありえないメタボ女性であった。
◆◆◆
ふつう飛行機といえば出発地と到着地だけがあり、途中下車というのはありませんね。
しかしアラスカ航空という航空会社の場合、
特急・急行・快速・各駅停車
という区別があります。
まるで電車みたいに。
シアトルからアラスカに向かう航路には、いくつも「途中下車空港」があるのです。
南から順に並べると、
☆シアトル(始発) → ◎ケチカン → ○シトカ → ランゲル → ピーターズバーグ → ◎ジュノー(アラスカ州の州都。和風にいえば県庁所在地) → ○ヤクタット → ヘインズ → ○コルドバ → バルディーズ(むかし、エクソンの石油タンカーが転覆した場所です) → ☆アンカレッジ(←アラスカ最大の都市。つっても人口30万人)
(☆特急が停まる空港、◎急行が停まる空港、○快速が停まる空港、無印は各駅停車のみ)
この順番、じつは暗記しています。
なにが嬉しくてこんなことを暗記したのか、自分でもよく覚えていません。
円周率を異常に暗記している人とか、
鼻の穴の力でものを持ち上げたりする人とか、
そういうよく分からない特技の持ち主がテレビに出るといつも指差して笑っていたのですが、
もはや人のことは言えません。
各駅停車の場合、同じ機体がこれらの空港すべてに着陸します。
各駅停車の乗客は、目的地に着くまで何度も離陸したり着陸したりするわけです。
僕の乗ったのは急行で、僕自身の目的地はケチカン空港でした。
アラスカはフライパンのような形をしています。本体が北を向いており、柄(取っ手)の部分が南に垂れています。
ケチカンは柄(取っ手)の最南端にあります。
シアトルを発ちカナダ越えをした飛行機は、約2時間かけてケチカンに着陸しました。
機体の窓に、水滴が幾重にも走っています。雨が降っているのでした。
着陸した。さあ、降りなくては…。
問題の場面です。
僕の隣には巨大メタボ女性が座っています。この人が降りてくれないと、僕は降りることができません。
この女性の隣に2時間も座っていた僕のカラダは、古くなったサンドイッチの具みたいになってます。
さあどうしよう。
「あのー」おずおずと話しかけました。「僕はここ(ケチカン)で降りるんですけど」
「ああそうなの。困ったわねー」女性は言いました。「さっきも言ったけど、あたし、自分じゃ立てないし」
あ、やっぱり。
結局、また座席をよじ登ることになりました。
体力が落ちているので、よじ登る姿の無様なことといったら…。
ほかの乗客がにやにやして見てます。
メタボ女性は悪びれたようすもなく、平気な顔で料理雑誌を読んでいました。
罪悪感とか、羞恥心とか、そういうのは全然なさそうでした。
◆◆◆
10月のケチカンの気温は、12月の東京の気温くらいです。
寒いことは寒いですけど、思ったほど寒くはありません。
じつはこのへんは暖流が流れているので、緯度が高いわりには寒さはマイルドなのです。
ケチカンに到着したときの僕の服装はこうです。
レッドウィングという靴屋で買った茶色のブーツ。
GAPで買ったジーンズ。
GAPで買ったタートルネックのスウェットに、バナリパで買った青っぽいチェックのネルシャツ。
防水加工されたジャンパーはエディー・バウアー製。
シアトルマリナーズの野球帽。
以上。
この状態だと、外を歩いても凍えるということはありません。
さて、僕をアラスカまで呼びつけたのはラザフォードという男です。
ふつうだったら、ケチカンの空港で待ってくれているものですよね?
でも、しとしと雨のケチカン空港の、人影まばらなロビーには、彼はいませんでした。
「キャンプ地にいるから、そこまで来い」
と言われていたのです。
そのキャンプ地に行くには、ケチカン空港で、コミューター(4人乗りの小型プロペラ機)に乗り換えなければなりません。
そこで僕は、ケチカン空港内にあるコミューター会社のところに行き、プロペラ機の予約をしました。
そのコミューター会社の名前は「タクアン航空」といいました。
その会社の社長、兼、パイロットは、メタボ体型の男で、スケタローという名前でした。
タクアン航空のスケタロー社長。
これ、マジで本当の名前です。
チイタッタ先生やテケテケ商事は偽名ですけど、これはホントにホント。
なんだかビミョーに日本っぽい名前ですが、日本とは関係がないそうです。
(ちなみに、スケタロー氏はメタボ世界のお約束、心臓発作で亡くなっています。まだ40代でした)
降りつづける雨のなか、ビーバー型と呼ばれる、着水専用フローターのついた小型プロペラ機にゆられて30分後、僕はラザフォードが待つメトラカトラ島というところに到着したのでした。
メトラカトラ島、というのもホントにホントの名前です。
今回はここまで。
次回(その4)ではようやく、流しの料理人ラザフォードの登場です。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
僕はある農業コンサルタントのオジチャンから、
「バウムクーヘン野郎」
と呼ばれています。
農業を始める決心もついていないのに農業のことを嗅ぎまわり、耳年増(←死語)みたいになっていることをいうそうです。
肝心な「就農」をしていないのに、農業の周辺知識ばかり勉強する。
まるでバウムクーヘンです。
周りは食べられるのに、真ん中が空っぽ。
今日は、僕にそういうあだ名をつけた農業コンサルタントのオッチャンの話をします。
◆◆◆
オッチャンのことを、葉竹乃木夫(はたけのぎお)さん、と呼ぶことにしましょう。
麦わら帽子の似合う、小柄だが日焼けして真っ黒なオッチャンを想像してください。
ITバブルというのが始まったころの話です。
楽天とか、ライブドアとかが脚光をあびはじめていたころ。
ある有名な大企業が、何を思ったか農業ビジネスをやろうと考え、子会社を作りました。
「アグリドラゴン株式会社」
という、中国や台湾にありそうな、勇壮な名前の会社です。
その会社は、IT企業の繁栄にあやかろうということで、ウェブサイトを作りました。
農家さんがそのウェブサイトで自己PRをする
その農家さんから農産物を仕入れたい人(会社)は、アグリドラゴンを通じて購入する
アグリドラゴンは、手数料をもらう
というシステムのウェブサイトです。
で、アグリドラゴン社は10人くらいの社員を集めてスタートしました。
ところが、ウェブサイトを作るのに必死になるあまり、集めた社員は全員、システムエンジニアとかプログラマーの人だったのです。
農業ビジネスの経験者を採用していませんでした。
「まあ何とかなるだろう」
アグリドラゴンの社長はお気楽に構え、システムエンジニアとかプログラマーの人をそのまま、営業社員にしてしまいました。
ITを使った農業ビジネスが当時ちょっと珍しかったせいもあり、素人集団で始めた会社にも関わらず、当初は何件かの農家さんからの出店もあり、お客さんとの契約もいくつか、結ぶことができました。
しかしだんだんボロが出てきます。
農家さんやお客さんから、
「おたくの社員は勉強が足らん」
「もっとしっかりやってくれよ」
という文句が出るようになりました。
お気楽なアグリドラゴン社長でしたが、さすがにこのままではイカンと思ったのでしょう、知り合いである葉竹氏のところに相談しました。
「なあ葉竹ちゃんさあ。しばらくウチの社員の面倒、みてくんない? 営業部長のポストが空いてるんだよ。給料もはずむからさあ」
「給料もはずむからさあ」
女遊びが過ぎて借金を抱えていた色黒の葉竹氏にとって、この言葉の魅力には逆らいがたいものがありました。
そんなわけでガングロ葉竹氏は、アグリドラゴン社の営業部長に就任したのです。
数日後、葉竹氏はアグリドラゴン社にはじめて出社。
その夜、とある居酒屋で葉竹氏の歓迎会が開かれました。
色白のシステムエンジニアやプログラマーのなかに、ブラックホールのような顔の葉竹氏。
ちょっと異様な風景です。
中間色、ないのかよ。
まあそんなチグハグさも、酒が進むにつれどうでもよくなってきます。
宴もたけなわというころ…。
宴会を欠席して残業していた社員が、真っ青な顔で居酒屋にとびこんできました。
「たたた、大変です」
ベタなセリフですが、若者の顔は青ざめたままです。
黒い顔と白い顔が、みんなで青い顔を凝視しています。
話によると、アグリドラゴンの売上の半分を占めるいちばんのお得意先から電話がかかってきて、
「おたくの商品は全部国産のはずだよな。それがなんだ、中国産のものが混じっているじゃないか。どうなっているんだ。ただちに責任者が説明に来い。今すぐ来い。2時間以内に来い」
と、ものすごい剣幕だったとのこと。
で、営業部長である葉竹氏が説明に来い、というものでした。
「おいおい、オレは今日入社したばかりだぞ。いきなりそれかよ」
焦りまくった葉竹氏でしたが、厳しいビジネスの世界、こんなことにも対処しなくてはなりません。
歓迎会もだいなし。
すっかり酔いの醒めてしまった日焼け顔の葉竹氏。
とるものもとりあえず、酒臭さを消すためにマウスウォッシュだけはしっかりやって、あたふたとお客さんのところに向かった気の毒な葉竹氏でありました。
葉竹氏の運命やいかに?
この続きは次回(その3)にて。
松宮園生です。
(前回の復習)
ニューヨークとロサンゼルスのザガット・サーベイには、「マーケットプレイスガイド」というバージョンがあり、そこには楽しい自然食品店がいくつも紹介されています。
そのなかでも群をぬくのが、アメリカでもっともワクワクする自然食品店チェーンの「ホールフーズ・マーケット」。
その成長のヒミツを、聞きかじりと独断と偏見で書きます。
◆◆◆
ホールフーズ・マーケットはテキサス州で誕生し、全米の自然食品店チェーンを次々買収して大きくなりました。
創業者は創業の時期、アパートを出て店に泊りこみ、食器洗浄器を風呂代わりにしていたとか、していなかったとか。
その成長の過程で、もっともインパクトが大きかったことの1つは、マサチューセッツ州にあった
「ブレッド・アンド・サーカス(Bread & Circus)」
を買収したことです。
マサチューセッツ州はアメリカ北東部にある、「もっともヨーロッパの影響が強い州」です。
大きな街としてはボストンがあります。
歴史の時間に習いましたね、「ボストン茶会事件」。
世界で指折りの大学、ハーバード大学とか、MIT(マサチューセッツ工科大学)とかがあります。
松坂大輔投手が今年から活躍する、ボストンレッドソックスの本拠地もここです。
ところで、「ターザン栄養学 その1」のところで、強引な性格の医者、チイタッタ先生の話を書きましたが、覚えておられるでしょうか?
このチイタッタ先生があるとき、「ブレッド・アンド・サーカス」の元オーナーを紹介してくれました。
この元オーナーはアンソニーといいます。
チイタッタ先生とアンソニーと僕は、ある日3人で夕食をとりました。
チイタッタ先生は例によってポルトベロー・マッシュルームを食べました。
僕は「バカのひとつ覚え」でマルガリータを飲みました。
アンソニーはチイタッタ先生の命令で食事代を負担しました。
そのアンソニーが言うには、この地(ボストン近辺)はアンテナの高い人々が多かったというのもあり、自然食品店が古くから親しまれてきたそうです。
「そのなかでももっとも成功したすばらしい有名なチェーン、お客さんを感動させるヒミツ満載のチェーンが、わがブレッド・アンド・サーカスであーる」
と、彼はヌケヌケと自画自賛しました。
であーる、という言い方、死語かも。
「でR(あーる)」と書くともっと恥ずかしいスね。
ホールフーズ・マーケットが彼のチェーンを買収したのは1993年のことです。
本人は明かしませんでしたが、ウワサでは、ホールフーズ・マーケットは彼に売却代金として20億円を提供したといわれています。
ブレッド・アンド・サーカスは人気のあるチェーンでしたが、チェーンとしてはそんなに大きくありませんでした。
その意味で、20億円というのは高い評価だったようです。
ブレッド・アンド・サーカスは自然食品店チェーンの経営ノウハウの宝庫でした(アンソニー談)。
とくに、
「いかに多くのオーガニック農家やオーガニック食品会社と上手にコラボできるか」
がポイントだったらしく、アンソニーは長年つちかったその細かいノウハウを、ホールフーズ・マーケットに教えたのです。
このノウハウを吸収したホールフーズ・マーケットは、その後、全米に大躍進をします。
この大躍進を支えたホールフーズ・マーケットの副社長の1人は、もとはブレッド・アンド・サーカスの購買担当だそうです。
ホールフーズ・マーケットはアンソニーに敬意を表し、全米200店舗のうち、もとブレッド・アンド・サーカスだった店舗のみ、ブレッド・アンド・サーカスの名を残し、
「ブレッド・アンド・サーカス・ホールフーズ・マーケット」
と呼んでいました。
この呼称は2003年まで続きました。
いまはブレッド・アンド・サーカスの名前は消え、「ホールフーズ・マーケット」のみとなっています。
さて、ホールフーズ・マーケットはその拡大する過程で、すべての店のデザインを、紫と緑を基調にしたものに統一していきます。
この紫がミソで、
「アメリカ人が好む紫はどんな紫か」
というのを徹底的にリサーチし、その結果、得られた紫を、テーマカラーとして採用しました。
この紫が、ホールフーズ・マーケットの最大の魅力である「ワクワク感」の重要な要素となっています。
◆◆◆
さて、日本にはこうした自然食品の全国チェーンがこれから誕生するのでしょうか、しないのでしょうか?
これについては、また別の機会に書くことにします。
今回はここまで。
(追伸)
アンソニーは20億円というお金を手にしたあと、ボストン郊外で
「セレブ向けサプリメントショップ」
を開きました。
ところがどういうわけか、ある日とつぜんそれをたたんじゃいまして、サンフランシスコに移り、今度は
「セレブ向けドラッグストア」
を経営しています。
なぜそんなことをしているのか聞いたのですが、彼の英語が早口すぎてよく分かりませんでした。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
テケテケ商事、覚えていますか?
テケテケ商事の社長はトム・クルーズと喪黒福造(笑ゥせぇるすまん)を42:54で混ぜたような複雑な顔をしていました。
ハンサムなんだかそうでないんだか、よく分からない顔です。
しかも42と54では足して100にならないじゃないか、という指摘も受けています。
年齢は50歳くらい、独身(未婚)の社長でした。
まだ僕がテケテケ商事に勤めていたころの出来事です。
社長の秘書から「社長がお呼びです。すぐ来てください」と電話で呼びだされました。
社長の部屋に入ったところ、ハンサムなんだかそうでないんだか、よく分からない社長からこんなことを言われました。
「松宮君、バナナ、好きかい?」
「バナナですか?」僕はいいました。「お言葉はありがたいのですが、ちょうど昼メシを食べたところです。いまお腹いっぱいで」
「いや、バナナをあげようという話じゃないんだ」社長は辛抱強くいいました。「そんなことでわざわざ呼びだしたりはしない」
「あ、そうか。これは一本とられましたね」
なにが一本とられたのかよく分かりませんが、和気あいあいとした会話は続きます。
「バナナの会社をひとつ、買収しようと思うんだ」と、社長は神妙な表情で言いました。
「企業を、買収するんですね?」と、僕。
「そうだ」社長はうなずきました。「そのための調査を、松宮君、きみにやってほしいんだ。ひそかに、誰にもバレないように、こっそりと、やってほしいんだが」
社長から手渡されたのは、あるバナナ会社のパンフレットでした。
◆◆◆
世界中でもそうですが、日本でもバナナは最も普及している輸入果物のひとつです。
僕が子供のころはまだ珍しいものだったようで、ちょっとした手土産にバナナを持っていったりしてたようですが、普及してしまった今となってはアタリマエすぎて手土産になりません。
いまでは毎年、100万トンが輸入されています。
この数字は、日本に入ってくる輸入フルーツ全体の、なんと6割を占めています。
最近は国産のバナナもちらほら見かけるようになりましたが、ほとんどは輸入バナナです。
フィリピン産が主で、南米のエクアドルからもよく輸入されています。
バナナの取り扱いでいちばん有名な会社はドールです。
ドールは世界最大の果物会社です。
ドールについては、後日「食の世界のスーパーパワー」シリーズで紹介する予定です。
そのほか、バナナといえばチキータやデルモンテが有名ですね。
以上、お勉強コーナーでした。
◆◆◆
そんなわけで僕は社長から
「シークレット・バナナ事業部 ゴクヒ調査課 課長」
に任命され、指定されたバナナ会社の実態調査を始めることになりました。
「ちょっと待った」
辞令を受けとって部屋から出ていこうとする僕を、社長が呼び止めました。
「この調査はたいへん危険だ。注意して行動するように」
「わかりました」
「いや、きみは分かっておらんな。これを見たまえ。見せようかどうしようか迷っていたが、見せることにする」
社長は、自分のデスクトップパソコン(インターネットにつながっている数少ないパソコン)を指差しました。「こんなメールがさっき来た。読んでみなさい」
「どれどれ」
ベタな言葉を口にしながら社長のパソコンをのぞきこんだ僕。
その瞬間、心臓が止まりそうになりました。
社長のデスクトップ画面には、こう書かれてあったのです。
「テケテケ社長よ。バナナから手を引け。さもないと、メキマンが来る」
(以下、次号)
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
では先日の「チェック編」を解説します。
1) アマランサス、アラマンサス。正しいのはどっちかすぐ分かる。
→アマランサスです。雑穀の一種です。
ハゲイトウという植物の仲間です。
(失礼な名前ですね。知り合いにもいるけど)
2) パクチーが嫌いな人は敵だ。
→この世はパクチー好きとパクチー嫌いに分かれます。
中間はいません。
パクチー好き側は、「日本パクチー狂会」というのを結成して着々と攻撃準備を進めています。僕も「入信」予定です。
反パクチー派はのほほんとしています。大丈夫なのでしょうか。
3) 携帯メールを打つときや自宅のパソコンを使うときに「しょくいく」と入れて変換するとまっ先に「食育」と出る。
→僕のパソコンでは「職位区」と出ます。
4) 服部幸○さん←○の中に入る漢字を知っている。
→「應」の字が入ります。
5) 「スーパーサイズ・ミー」という映画を知っている。
→1日に3回、30日間、マクドナルドのファストフードだけを食べ続けたらどうなるかを記録した映画です。
同じシリーズで、吉兆とかトゥール ダルジャンとか、やるんだったら出演したいなあ。
6) 食育の教材はすべて手作りが理想だと思う。
→カルタとか紙芝居を手作りしている人、多いですね。
7) 「アボガド」という人を見ると説教したくなる。
→正しくはアボカドです。「ガ」ではなく「カ」です。
Avocado と綴ります。
スーパーマーケットで「アボガド」と書かれているのを見たときには泣きました。店側が間違えてはいけませんね。
8) 「メタ坊」というキャラクターを考えたことがある。
→どんなキャラクターか容易に想像がつきますね。
9) トランス○○○ に入る漢字3文字を言える。
→「脂肪酸」です。
昨年の暮れ、ニューヨークでは飲食店でトランス脂肪酸の使用が禁止となりました。
10) 「こだわり野菜」という言葉を多用する農家と知り合いだ。
→多いんです。
昨年1年間で、僕はこの単語を 147,285回、聞きました。
11) ロハスのスが何の略かを知っている。
→Sustainability(サステナビリティ)の略です。
現状を維持する、という意味があります。
「ス」で始まる言葉を必死で考えた人、大和魂にもほどがあります。
12) ショウサンタイチッソ、目を閉じて暗唱できる。
→硝酸態窒素。
13) 自分のBMIを知っている。
→BMIの計算方法は、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)です。
たとえば僕は、69kg ÷ 1.7m ÷ 1.7m = 24。
もうちょっとで肥満です。
むかし、ローレル指数というのがありましたね。どこに行ったのでしょうか。
14) 合鴨農法の合鴨の、その後の運命は考えないことにしている。
→動物愛護的には複雑な心境になる農法です。
15) 「○育」・「☆育」・「□育」そして「食育」。 ←○☆□を埋めることができる。
→知育・体育・徳育・食育と言われています。
昨今、これが呪文化しています。
チイクタイイクトクイクショクイク。
チイクタイイクトクイクショクイク。
16) 歯を数えれば正しい食べかたが分かる、という話をぜひ広めたい。
17) 何を言ってるんだ。歯を数えれば正しい食べかたが分かる、というのは根拠がないと思う。
→まああまあ、そんなに熱くならなくてもいいぢゃないですか。
18) 去年の12月12日、新宿の東口。酔った口調で「オレはアメリカ人だ」と叫びながらナンパしている男を見かけたが、言動がなんだか松宮園生に似ていた気がする。ちなみにその男、誰ひとりゲットできていなかった。
→まあまあ、そんなに追求しなくてもいいぢゃないですか。
あと、写真についてもそんなに追求しなくていいと思います。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
流しの料理人ラザフォードが待つアラスカに飛ぼうとする僕。
しかし、中継地シアトルで、ちょっとした災難が待っていた…
◆◆◆
アラスカ航空の飛行機は、尾翼にインディアンの顔が書かれています。
有名な酋長だそうです。名前は忘れました。
この航空会社はアラスカだけ行くのかなと思ったら、意外なことにけっこうあちこち飛んでいて、メキシコ路線というのもあるそうです。
アラスカに住むメキシコ人は多いそうです。
アラスカ航空がメキシコとアラスカをつないでいるからアラスカに住むメキシコ人が多いのか、
アラスカに住むメキシコ人が多いからアラスカ空港がメキシコ路線を持っているのか、
卵が先か、ニワトリが先か。
ま、いっか。こんなこと悩んでどうすんねん。
でもアラスカにメキシコ人が多いおかげで、アラスカで食べるメキシコ料理はけっこう口に合いました。
生まれて初めてワカモレ(写真)を食べて感激しました。
エンチラダス・なんとかダスという料理もイケてたな(←名前、覚えろよ)。
酒もイケてた。
ジュノーという町があり、アラスカの州都なんですけど、ジュノー空港のそばのトラベロッジというホテルで飲んだカクテル「マルガリータ」は最高にうまかったな。
あれ以来、僕はマルガリータを飲み歩くようになりました。
話を戻します。
シアトルの空港でそのアラスカ航空のジェット機に乗り込んだのですが、じつは出発時間ぎりぎりでした。
もうちょっとで乗り遅れるところでした。
飛行機のなかは満席でした。
アラスカのくせに、満席なのです。
「どうせ便数が少ないから、満席になるんだろう」そう思うでしょ?
とんでもない。
便数、とても多いんです。
ウソと思うなら、アラスカ航空の時刻表を見てみてください。
↓
http://www.alaskatimetable.com/AS.pdf
こんなに便数あるのに、満席なんです。
さて、ぜーぜー言いながら満席の機内に飛びこみました。
僕の座席はいわゆる「ミドルシート」というやつで、通路側でもなく窓側でもない、その間の座席です。
つまり満席の場合、両側に乗客がいる窮屈な座席です。
座席に向かって数歩も歩かないうちに、ある光景が目に入りました。
異様にカラダの大きな人(女性)が、通路側の座席に座っているのです。
いやな予感がしました。
予感は的中しました。
その「カラダの大きな女性」の隣が僕の座席だったのです。
どのくらい大きかったって?
日本人にはありえない大きさです。
こまかく描写するのは控えます。想像してください。
「すみません。隣に座りたいんですが」
と、へたくそな英語で話しかけると、彼女は僕を見上げて言いました。
「ごめんね。あたし、自分の力では立てないのよ」
あ、やっぱり。
客室乗務員さんを呼んで事情を話すと、こう言われました。
「申訳ありませんが、後ろの座席からよじ登ってくれません?」
あ、やっぱり。
というわけで、後ろの座席の人たちに立ってもらい、よじ登り、自分の座席であるミドルシートに滑り込んだ僕でした。
途中、窓側の人の頭を蹴ってしまったので、そのあとの気まずさといったら…。
それにこの狭さ…
飛行機は離陸しました。
僕は2人の軍人に挟まれた小さな宇宙人みたいに(例の有名な写真ですね)、小さくなっていました。
頭の中は
(降りるときも、またよじ登るんだろうか?)
という不安でいっぱいでした。
これが、「アメリカン・メタボ」を目撃した最初でした。
イヤ待てよ。
そもそも、どうやって飛行機に乗ったんだろう、この人…?
(以下次号)
松宮園生です。
(前回の復習)
かたや農業人口を増やそうとあの手この手の日本政府。
かたや農業をやってみたいと考える人は意外と多い。
にも関わらず、農業人口は減る一方。
なんでこーなるの? (←これをコント55号風に言ってしまったあなた…。年、バレてます)
そこには見えない大きなダムがあるようです。
このダムを決壊させる方法の1つは、ダムに穴をあけることでした。
ではもう1つは何でしょう?
◆◆◆
もう1つの方法というのは、
「ダムがあふれるほど、水を増やす」
ことじゃないかと思っています。
水、つまり「農業をやってみたいと考える人」をガバチョ(←死語)と増やすわけです。
かくれ農業ファン、というか、僕みたいな「バウムクーヘン野郎」を大量生産するのです。
「農業っていいよね。なんとなくやってみたいよね。苦労するのはヤだけど」
と都合のいいことを夢想するバウムクーヘン野郎が100人いたとします。
このうち1年後に
「いろいろ考えたけどやっぱり農業やりたくなった。苦労してもいいから真剣に頑張りたい」
と決心する人が3人あらわれるとします。
100人のなかから3人、つまり
「歩留まり3パーセント」
というわけです。
「歩留まり3パーセント」という数字が変わらないとします。
母集団が100人しかいなければ、就農を決意する人は3人しか生まれません。
でも母集団が100万人になったらどうでしょうか。
100万人の3パーセントで、3万人。
3万人の「就農決心者」が生まれます。
「就農を決心すること」と「ホントに就農する」との距離はまだあります。
「就農決心者」が「就農者」になる過程でギブアップする人も少なくないでしょう。
でもまあ、まあまあの人数が、就農にたどりつくはずです。
徹底的に母集団を増やす。
「ダムがあふれるほど、水を増やす」というのは、このことを指します。
じゃあどうやってバウムクーヘン野郎の母集団を増やすのか?
母集団を増やす試みを始めた企業や団体がいくつかでてきました。
僕も、こんなことをやりたいな、というプランがあります。
それらを総称して、
「イケてる就農センター大作戦」
と呼ぶことにしましょう。
今回はここまで。
次回は
「イケてる就農センター大作戦」
について少し詳しく書きます。
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チーフの松宮園生です。
あなたの食育に対する「萌え」具合をチェックします。
(第1弾を見たいかたはコチラ)
「はい」「いいえ」でお答えください。
1) アマランサス、アラマンサス。正しいのはどっちかすぐ分かる。
2) パクチーが嫌いな人は敵だ。
3) 携帯メールを打つときや自宅のパソコンを使うときに「しょくいく」と入れて変換するとまっ先に「食育」と出る。
4) 服部幸○さん←○の中に入る漢字を知っている。
5) 「スーパーサイズ・ミー」という映画を知っている。
6) 食育の教材はすべて手作りが理想だと思う。
7) 「アボガド」という人を見ると説教したくなる。
8) 「メタ坊」というキャラクターを考えたことがある。
9) トランス○○○ に入る漢字3文字を言える。
10) 「こだわり野菜」という言葉を多用する農家と知り合いだ。
11) ロハスのスが何の略かを知っている。
12) ショウサンタイチッソ、目を閉じて暗唱できる。
13) 自分のBMIを知っている。
14) 合鴨農法の合鴨の、その後の運命は考えないことにしている。
15) 「○育」・「☆育」・「□育」そして「食育」。 ←○☆□を埋めることができる。
16) 歯を数えれば正しい食べかたが分かる、という話をぜひ広めたい。
17) 何を言ってるんだ。歯を数えれば正しい食べかたが分かる、というのは根拠がないと思う。
18) 去年の12月12日、新宿の東口。酔った口調で「オレはアメリカ人だ」と叫びながらナンパしている男を見かけたが、言動がなんだか松宮園生に似ていた気がする。ちなみにその男、誰ひとりゲットできていなかった。
<判定>
「はい」の数で判定します。
0個: 屈託のないサワヤカなあなた。「萌え」とは関係のない人生を送ってください。でもサワヤカすぎて、友達多いけど恋人いないのでは?
1個?2個: サワヤカな中にも微妙な陰り。かなり異性にモテるのではないでしょうか。あなたも「萌え」には無縁です。
3個?4個: あなたは萌えたり萌えなかったりする、複雑な心理をもつ現代人です。
5個?10個: 微妙に危険です。最近、友達が減ってませんか?
11個?17個: 危険です。最近、事故に遭いませんでしたか?
18個: まじめにやりましょう。嘘つきなところなど、あなたは僕にそっくりです。
(次回は解説編です)
松宮園生です。
アメリカの農家さんのさわやかな日常の1コマをご紹介します。
◆◆◆
ボブが午前中の草刈を終え、バドワイザーを片手に一息ついていると、幼ななじみのジョンがそこを通りかかった。
ボブはぎょっとした。
というのは、ジョンが左の耳に大きなイヤリングをしていたからだ。
ジョンは古風な男だった。
イヤリングをするようなタイプの男ではなかった。
それがいまはイヤリングをしている。
しかも片方の耳だけ。
ファッションセンスでも変わっただろうか?
と、ボブは不思議がった。
なにより、似合っていなかった。
ボブはジョンに歩み寄り、こう言った。
「おい、なんだよその耳はよ。心境の変化でもあったか?」
「ほっといてくれ。たかがイヤリングくらいで騒がないでくれよ」
と、ジョンは恥ずかしさに赤面して答えた。
ボブはしばらく黙っていたが、好奇心にたえきれずにまた口を開いた。
「で、いつからイヤリングをしているんだ?」
「おれのトラックの中に、こいつが落ちててな」ジョンは答えた。「女房が見つけた。それ以来さ」
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松宮園生です。
(前回の復習)
ザガット・サーベイという本は、地元のグルメ・ガイドブックです。
このうちロサンゼルスとニューヨークには、グルメガイドのほかに、「マーケットプレイスガイド」というのがあり、そこにファーマーズ・マーケットの案内が載っています。
ファーマーズ・マーケットとは、日本でいう産直売場のことです。
アメリカのファーマーズ・マーケットは都会の真ん中で開かれたりします。
ザガット・サーベイの「マーケットプレイスガイド」には、自然食品専門店も掲載されています。
今回は自然食品店の話です。
◆◆◆
全米でいちばん有名な自然食品専門店は、
「ホールフーズ・マーケット」
と呼ばれるところです。
http://www.wholefoodsmarket.com/
全米に200店舗、展開しています。
イギリスにも1店舗あるそうです。
ナスダックに上場しています。年商6500億円。
(東海岸のことはあまり詳しくないのですが)
西海岸では、このホールフーズ・マーケットのほかに
「トレーダー・ジョー」http://www.traderjoes.com/
が有名です。
年商5000億円。
「ワイルド・オーツ」http://www.wildoats.com/
「ブリストル・ファームズ」 http://www.bristolfarms.com/
もまあまあ有名です(*)。
食に興味のある人にとって、この4つの店は、どれも見にいく価値があります。
しかしダントツに目立つのは
「ホールフーズ・マーケット」
です。
チェーン店の規模も大きいし(自然食品店のチェーンとしては、世界最大です)、店ひとつひとつの広さもなかなかです。
(本来ホールフーズ・マーケットとトレーダー・ジョーはビジネス上のカテゴリーが微妙に違うので、単純に比べてはいけないのですが、ここでは一緒くたにしておきます)
大きければいいってものではないのですが、ホールフーズ・マーケットは僕の好みでいうと、世界で一番たのしい自然食品店です。
入店した瞬間の、あのワクワク感。
洗練された店舗デザイン。
商品の楽しさ。
いちど入ったら、2時間楽しめます。
ああいう店は、日本にはナカナカありません。
かつてアメリカにはローカルサイズの小規模な自然食品店チェーンがたくさんありました(今でもありますが)。
ホールフーズ・マーケットはテキサス州で誕生し、全米の自然食品店チェーンを次々買収して大きくなりました。
ホールフーズ・マーケットはなぜこんなに大きくなれたのか?
あっと驚くそのヒミツが、次回「風雲編」でついに明かされます!
(*)ワイルド・オーツはこの4月からホールフーズ・マーケットの傘下になる予定です。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
「流しの料理人」というのがアメリカにもいました。
あちこち旅をしながら、旅先で料理を作って生活費や旅費を稼ぐわけです。
もっとも、そういう人がたくさんいるかどうかは、よく分かりません。
たまたまそういう人と仲良くなっただけなのですが…。
僕が知り合ったのはラザフォードという男です。
ファーストネームはボブだったかトムだったか忘れましたが、なんかそういう平凡な名前です。
平凡なファーストネームだったので忘れてしまいましたが、ラザフォードという姓のほうは、同じ名前の科学者がいた、というのを高校時代に習ったような気がしていたので、いまでも覚えています。
(どーでもよいことですね)
知り合ってからだいぶ日数がたち、接することもなくなって友好関係が自然消滅していたころ、
不意にこの男からメールが来ました。
「アラスカにいるんだけど、ヒマだから遊びにキタマエ。夏は気候がいいけど観光客でごったがえすから、夏が終わったら来るよろし」
そんな意味のメールでした。
ヒマだから来いといわれても、アラスカなんてそんなカンタンに行けるわけじゃないですよね。
アラスカはここです(↓)。左上の部分です。
ちょっと詳細図(↓)。左上の部分です。
アメリカ本土とは離れています。あいだにカナダがあります。
飛び地ですね。
そんなところにぶらっと行くわけにはいきません。
しかし一方で、僕の頭の中をこういう言葉が走り回りました。
「大自然」
「とれたてのシルバーサーモン」
「オーロラ」
「エスキモー」
「ホエール(クジラ)ウォッチング」
「死ぬまでに一度は行っておこう」 (←殺し文句)
こういう計算もしました。
「ラザフォードの家に泊まれば宿泊はタダだ。それにラザフォードはホモじゃないから大丈夫だ」
(マジメな話、ホモ・セクシュアルかどうかを事前に確認しておくことは、けっこう大事です)
調べてみると、夏の行楽シーズンをはずせば、旅費もずいぶん安くなることが分かりました。
夏と冬では、旅費が5倍くらい違うのです。
秋はその中間くらいの費用です。
ちょっと驚きました。
というわけで大決心をしまして、ガンバって休暇を獲得し、メールをもらった数ヵ月後に僕はアラスカに行きました。
時は10月。
この時期、ラザフォードのいるところは雨がしょっちゅう降るそうで、そこそこ寒い(*)ということもあり、厚手の防水服を着てこい、という話でした。
なお、「とれたてのシルバーサーモン」はあきらめろと言われました。もうシーズンは終わったそうです。
かるく夢が1つ、崩れていきました…。
さて、アラスカに行くにはまずシアトルに入ります。
シアトルはイチローのいるところです。
アメリカ本土の西北部、ワシントン州です。
ここでアラスカ行きの飛行機に乗る。
アラスカ航空という航空会社があって、そのジェット機に乗ります。
ジェット機はカナダの上空を飛び、アラスカに向かうわけです。
このアラスカ航空のジェット機に乗りこんだとき、
機内で僕はある出来事に遭遇したのですが、少々強烈な出来事でした。
「アメリカン・メタボ」第1号に遭遇したのです。
その遭遇の様子を、次回(その2)に書きます。
今回は食育の話になっていませんが、次回は食育の話になります。
(*)アメリカ人の「寒い」とか「暑い」とかは信用できません。
11月ごろになるとよく分かります。
皮のコートを着た人が歩いているかと思えば、半そで半ズボンの人も歩いています。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
まず最初に、食事中の方は食事をまず済ませてください。それから読んでください。
◆◆◆
世界最大の食品・飲料会社、といえばネスレです。
1866年に設立された会社だそうです。
1866年って、江戸時代最後の年です。
和風にいうと、ネスレは江戸生まれの老舗というわけです。
年間の売上は10兆円くらいで、利益は6000億円くらいのようです。
10兆円っていうと、韓国の国家予算とだいたい同じです。
6000億円っていうと、松坂投手50人分の契約料です。
こう書くと、高いのか安いのか分からなくなりますね。
ネスレの本社はスイスにあります。
スイスって、なんか陰謀っぽい感じしますよね。
たとえば世界の権力者はみんなスイス銀行に口座持ってるし。
ゴルゴ13だって、暗殺の報酬はスイス銀行に振り込まれてるし。
むかし(戦前)の国際連盟の本部はスイスにあったし。
日本で知られているブランドでいうと、これ(↓)全部ネスレです。
コーヒーの「ネスカフェ」
コーヒーミルクの「クレマトップ」
おなじく「ブライト」
ココアみたいな飲み物の「ミロ」
ミネラルウォーターの「ヴィッテル」
おなじく「ペリエ」
おなじく「サンペレグリ?ノ」
おなじく「コントレックス」
チョコレートの「キットカット」
スパゲティの「ブイトーニ」
「ネスレヨーグルト」
たんとありますが、これ全部ネスレです。
他にも、ネスレはこんな会社の株主でもあります。
美容・化粧品の世界企業ロレアル社
アイスクリームの巨大企業ドライヤーズ社
さて、ネスレは
こんなふうにデカくて、
100年以上もつづく老舗で、
本社も陰謀うずまきそうなスイスにある
にも関わらず、とりあえず陰謀のネタになるようなことがあまり見当たりません。
ネスレって笑えねぇな。(←いや、本来はいいことなんだけど)
◆◆◆
笑えないならしょうがねえ。
チイタッタ先生から聞いた話でも書くか。
◆◆◆
内科医チイタッタ先生は、かつてネスレ社と契約していました。
そのチイタッタ先生のところに、若いネスレ社員が青ざめた顔でやってきたそうです。
ネスレ社員が言いました。
「先生。僕って異常なんでしょうか?」
「何があったんですか?」
「胃腸がおかしいんです。このあいだニンジンスティックを食べたんですけど、トイレにいったらニンジンスティックがそのまま出てきました」
「ふむ。それで?」
「リンゴを食べたんですけど、そしたらリンゴがそのまま出てきました」
「ふむ。それで?」
「ドライヤーズ(アイスクリーム)を食べたんですけど、そしたらドライヤーズがそのまま出てきたんですよ! 心配でなりません。僕は何を食べたらいいでしょうか?」
チイタッタ先生は穏やかに言いました。「何も心配いりません。ウ○コを食べなさい」
松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
日本人の常識が通用しない国キューバに、
マンゴーを求めて潜入した2人。
もがきつづける彼らに、果物会社から連絡が入った…。
◆◆◆
日本で買ったガイドブックはなかなか秀逸でした。
「この国の人は自分たちの国のことをほとんど知らない」
「誰に何を聞いたら何がわかるのか、がわからない」
ということはガイドブックにちゃんと書いてあったのです。
読んどいてよかったです。読まずに来てたら神経症になってたかも。
ハバナの繁華街を歩いていると、道行く人々がさかんに声をかけてきます。
「チノ!」「チノ!」
と叫ぶのです。
ガイドブックにはこのことも書いてありました。
それによると、
* 「チノ」とは中国人のこと。
* 彼らキューバ人は東洋人を全員チノだと思っている。
* チノを見ると声をかけずにいられない。意味なく「チノ!」と叫ぶ。
* 声をかけたからといって、とくに用があるわけではない。我々チノは手をふって挨拶すればよい。
だそうです。
◆◆◆
100回くらいチノチノチノチノ言われたころ、オニイサンと僕(と通訳の人)は目的の果物輸出会社にたどり着きました。
果物会社の社長は流暢な英語を話すアメリカ人でした。
アメリカはキューバと敵対しています。
そのため、キューバで社長をしているこの人物は、もう母国に帰れないそうです。入国が許されないらしいのです。
彼はそういう人生を選んだのでした。
挨拶もそこそこにその果物社長の口からでた言葉は、われわれの期待を裏切るものでした。
「キューバへようこそ。しかしマンゴーの輸出はたぶんもう無理だ。あきらめたほうがいい」
「それを言うためにおれたちを呼びつけたのか?」といきり立つオニイサン。「何とかならんのかよ。ここまで来るのにいくらかかったと思う?」
「おれだって困っている」果物社長は言いました。「あんたよりおれのほうが深刻だよ。死活問題だからな。何ヵ月もかけて八方手を尽くした。それでもダメだった」
「ふざけんじゃねえ」とオニイサンが叫ぼうとしたとき、絶妙のタイミングで社長秘書が飲み物を運んできました。その美貌に目を奪われたオニイサン。
そのすきに、果物社長は話題を変えてしまいました。
「これ、なんだと思う? 今日はこの話をしたかったんだ」
美人秘書が運んできたのは飲み物だと思ったのですが、よく見るとハチミツ入りのボトルでした。
「オーガニックのハチミツだよ。ウチの商品だ。なめてみるかい」
果物社長が合図をすると、美人秘書がスプーンを差し出しました。
2時間後。果物会社からの帰り道。
通行人がチノチノチノチノ、チノチノチノチノ言ってます。
オニイサンはすっかりハチミツが気に入り、あれから商談に入ってしまったのです。
そしてとうとう、帰り際にコンテナ1個分の注文を出してしまいました。
「いいんですか、カンタンに注文しちゃって」
「いいんだよ」オニイサンは上機嫌で答えました。「マンゴーはあきらめよう。でもあのコは美人だったから、あのハチミツはきっと儲かるぞ」
ハチミツが儲かるかどうかということと、秘書が美人かどうかということは、関係ないんじゃないかなあ。
僕は心のなかでそうつぶやきました。
結局、マンゴーの件はどうにもならないままでした。
輸出禁止を解除してもらうことは、できませんでした。
われわれの旅は、徒労に終わったのです。
まあでも、マンゴーの失敗を、ハチミツで取り返すことができるんだったら、オニイサンとしては、それはそれでいいのでしょう。
◆◆◆
マンゴーの旅はこれで終わりです。
その日、オニイサンの頭のなかはハチミツのことでいっぱいのようでした。
僕はといえば、果物会社からの帰り、ヘミングウェイが通ったと言われるバーに偶然通りかかり、通訳と一緒にマルガリータを飲みまくりました。
アルコールの回りが早く、明るいうちからデキアガッテしまいました。
そのあいだにも、何人もの通行人が店のなかをわざわざのぞきこみ、飲んでいるわれわれに向かってチノチノチノチノチノチノチノチノ、チノチノチノチノチノチノチノチノ言ってます。
詳しく書きませんでしたが、通訳の人はなかなかのナイスガイで、われわれのあいだには友情が芽生えていました。
バーカウンターで通訳がしみじみと言いました。
「あした帰国便ネ。さみしくなるネ。元気でネ」
「あんたも元気でね」
「キューバの感想はどう?」
「そうだね…。楽しいとこだけど、分かりにくいとこだな」
「分かりにくいネ? あんたがた同じ共産主義の国でも、分かりにくいのか?」
「は? 同じ共産主義…? それって中国のことだろ。オレは日本人だよ」
「えっ? あんたチノじゃなかったのか?」
通訳はこの瞬間まで、オニイサンと僕のことを中国人だと思っていたのでした。
(あんた、ずっと日本語の通訳してたやんけ…)
(ヘミングウェイ農業 終わり)
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