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2007.04.14 03:10

食育を通して得られるもの

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食育の世界にご案内します。

◆◆◆


シニア・野菜ソムリエの遠山由美です。

前回(あなたが欲しい食育情報はどれ?)の続きです。

会場を埋めていたスーツ姿の男性が途中でパラパラと帰ってしまった食育シンポジウム。
その名は「第2回 食を考える国民フォーラム」。
今回のテーマは「五感を通じて学ぼう!みんなで体験・教育ファーム」でした。

充実した内容で、とても全ては書ききれませんが
まず「食育をとおして、子供たちは何を得るのか」について
うかがった内容をかいてみます。

それは
「自分が他人に何かをしてあげる喜び」。
いいかえれば
「育む喜び」とか「与える喜び」といった感覚。
さらには
「ひとりで何かをやり遂げる自信」。

なるほど、少子化で弟、妹の世話をすることもなく
近所で年齢関係なく集まって遊ぶということもない今の子供たち。
両親と4人の祖父母、6人の大人から
「何かしてもらう」経験しかしたことがなく
ちょっとつまずくとすぐ「助けてもらう」。
というより大人が待っていられなくて、「助けちゃう」。

大人のほうで
子供が「何かしてあげる」機会も「頑張りぬく」機会も
奪ってしまっているのかもしれませんね。

教育ファームで牛にブラッシングして「あげる」と
牛のご機嫌が変わる。
(ええ、勿論国語的には「あげる」ではなく「やる」が正しいのはわかっておりますよ。
 まあ、ここはあえて「あげる」と書かせてください)
子供たちはそれが単純に嬉しいらしいのです。
悪臭に耐えて、牛舎の掃除をして「あげる」。
搾乳して「あげる」。
作業の結果がすぐ反応として感じられる点で
農業体験より、酪農体験の方がより食育向き、とのことでした。

農業だとどうしても
田植え&収穫というように
楽しいイベントだけ経験し
草取り等大変な作業は農家の方にまかせになってしまいがち。
本当の苦労や、やり遂げたという実感を味わいにくいのですね。

そういえば私も学生時代、泊り込みの乳牛の世話で
3週間で8キロ痩せましたっけ。

清潔な環境になれた子供たちにとって
牛の世話は最初カルチャーショックのようですが
命との触れ合いにすぐ夢中になるそうです。

講演会の中では、子供たちの五感が衰えたのはなぜだと思うか?
とのコーディネーターの質問もありました。
パネリストの方々が色々おっしゃる中で
女優の高木美保氏の
「五感が衰えている、とは思わない。小さな子供が上手にテレビゲームをする様子をみると、とても自分にはできないと思う。
ただ体験や経験に偏りがあるためバランスが崩れている。
このバランスを取り戻す機会を農業体験を通して与えてやればいいのではないか」
との発言が印象的でした。
また
「近頃若者の犯罪が増えている、というけれど統計的には
むしろ減っている、というのが事実です」
との冷静な発言にも好感が持てました。
勿論「イジメを理由にした自殺はゼロ」なんていう
お役所の統計(?)もあるので統計の実態を確認する必要はありますが。

そう、「いまどきの子供は」なんてすぐ言うけれど
「いまどきの若い者はなっとらん!」という言葉は
エジプトの壁画にも書かれている文言だそうで
統計もなしに、感覚で若い人をけなすクセは
こと食育においては危険だと思うのです。

私は職業柄、よく地方の食農体験を実施している方々にお目にかかります。
それぞれ確かに感銘を受けることも多いのですが
最近少し疑問を感じることもあります。
食育が子供のためではなく
自分のためになってしまっている方がいらっしゃるからです。

お箸が持てない子、噛めない子、確かに問題がないとはいいません。
でも、全てにおいて「昔はよかった」式の考えには疑問があります。

体を取り巻く環境が異なる以上
昔と全く同じ食生活がいい、とは思えません。

また昔の食、として調理実習するものの中には
日常食の「ケ」の料理ではなく
「行事食」の「ハレ」の料理が多いように思います。
これを昔の「健康を支えた食」と考えるのはどうでしょか。

「赤ちゃんを産んだら
母乳の出がよくなるからと、お餅を沢山食べるように言われた。
でもよく出たのは、母乳ではなく腹だった」
なんて笑い話もあります。

よく考えず
昔を現在に甦らせても、混乱を生むだけではないでしょうか。

時代の流れの中で、本当は大切だったのに、気付かず切り捨ててしまったもの。
それを再確認し取り戻すのはすばらしいことです。
でも何でもかんでも「昔はよかった」は困ります。
食育が
「切り捨てたものにノスタルジーを感じて飛びつく人生のベテランたちのいきがい」
だけに矮小化されないような工夫がそろそろ必要な時期とも感じます。
今はまだ体験自体が少ないのでどの体験も貴重でしょうが
食農体験が乱立してくると
子供たちには整理しきれない矛盾が生じてくる可能性があるのではないでしょうか。

最後にこのパネルディスカッションの登壇者で
冷静さと情熱の両方を持ち合わせた
素敵な中学校の校長先生のお話しを書いてみます。

先生は食育について
?まず「感覚」と「体験」。
?次になぜそうなるのかという「理論」や「知識」。
?両者を融合させた、もう一段高いところにある「感性」。
この「感性」までたどりつかなければ食育ではない、とおっしゃっていました。

現在の食育は残念ながら?のみだったり?のみだったりすることが少なくありません。

食育を具体化していくためのノウハウ。
これが今最も問題になっているところでしょう。

具体化するにはお金もかかる。

「日本人にはいいことをするときはタダじゃなきゃいけない、みたいなところがある」
とはこれまた高木氏の鋭いご指摘。

教育ファームを実施すると
農家さん側は乳量は減るし、仕事は妨害されるし。
だからお金を払う必要があるけれど
制度化すると補助金狙いで、食育を実施せず
お金だけ受け取るヒトもいるのでは
なんて問題もあるそうです。
認証制度やその基準はどうするのか、といった問題も。

難しいですね。

ちなみに…
前回のクイズの答え。
途中退席してしまった男性の多くは「行政関係者」だったようです。

彼らはもう理念なんていっている場合ではない。
早急に食育を具体化しなければなりません。
彼らが欲しい情報は「食育を具体化するノウハウ」。
今回の講演会で語られたのは「理念と具体化することの難しさ」。

欲しい情報と得られる情報に差があったわけですね。

酪農教育ファームについてはこちらをご覧ください。
フランスではシステム化され盛んに行われているのだそうですよ。

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