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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
美味しいマンゴーを生み出す有機農業国キューバ。
しかしキューバ政府はマンゴーを日本向けに輸出するのを禁止してしまった。
いったい誰が、何のために禁止令を出したのか?
その謎をさぐるべく、オニイサンと僕は常夏のカリブ海に飛び立った。
しかし、やっとの思いで政府高官に会えたというのに、なんだかよく分からない状況はいっこうに改善する気配をみせなかった…。
◆◆◆
さんさんと降りそそぐ陽光。
「軍隊のエライ人」ホセ・なんとか氏は、とうとうなにも情報をくれないまま去っていきました。
誰が禁止令を出したのかが分からないだけでなく、そもそも誰が農業大臣なのかも、さっぱり分からないままです。
おまけに、せっかく手に入れた有機栽培マンゴーはまだ口に入っていません。
(なぜ口に入っていないかは前回 その3をご覧ください)
「態勢をたてなおそう。とりあえず作戦会議だ」
オニイサンがそうつぶやいたので、われわれはホテルに帰りました。
ホテルに戻ると、思いがけないことに、数人の色黒の男女がロビーでわれわれを待っていました。
通訳の話によると、日本にあるキューバ大使館から、ここに来るようにという指示があったそうです。
混乱を避けるために、整理します。
「キューバにある日本大使館」
「日本にあるキューバ大使館」
は違うものです。
「キューバにある日本大使館」
これは日本政府の出先機関です。大使は日本人です。
日本人の大使の紹介で、オニイサンと僕は「軍隊のエライ人」ホセ・なんとか氏に会ったわけです。
「日本にあるキューバ大使館」
これはキューバ政府の出先機関です。東京にあります。大使はキューバ人です。
で、ホテルでわれわれを待ち伏せしていた連中は、後者すなわち「日本にあるキューバ大使館」、すなわち東京にあるキューバ政府の出先機関に指示されて、やってきたのでした。
色黒の彼らが何者で何をしにきたのかというと…
マンゴージュースを作っているメーカーの役員でした。
マンゴージュースを作り、瓶詰めにして各国に輸出しているようです。
で、売れ行きがよいので増産したい。コールドチェーンの増設にカネがかかるので、資金を出してくれないかという話でした。
コールドチェーンというのは、生産現場(工場)から消費現場(お店)までのあいだ、マンゴージュースを同じ低温状態に保つためのいろいろな工夫のことをいいます。
その増設のため、30万ドル(約3600万円)ほしいそうです。
「日本にあるキューバ大使館」に相談したら、ちょうどいい2人組の「カモ」が来るから陳情したらどうだ、と言われたらしい。
そんなカネ、どこにあんだよ。
それに「カモ」ってなんだよ。つーか、そこまで正直に答えんでよろしい。
陳情団にお引取りいただくのに2時間もかかりました。
おカネがない。たったそれだけのことを納得してもらうのに、2時間です。
でもこの2時間で、こういうことが分かりました。
(1) この連中も、自分の国の農業大臣が誰かを知らない
(2) マンゴーの日本向け輸出が禁止になっているのを知らない
(3) ジュースには輸出禁止令が出ていないらしい
(4) この連中は、われわれのことをチノ(中国人)だと思っている
(5) ヘミングウェイって、誰?
ああ、たしかにここはキューバです。
南国のキューバなんだ。
オニイサンと僕は、しみじみそう思いました。
カリブの海が砂浜をやさしく洗うように、われわれの焦る気持ちも洗われていきました。
その日の午後、われわれは仕事をしないで過ごすことに決めました。
前の晩に食べることができなかったマンゴーを、ホテルのレストランに持っていきました。
すると、お店のほうで食べやすいようにカットしてくれました。
気持ちに余裕ができたとたん、マンゴーを口にすることができたのです。
美味でした。溶けるような味わいです。
その後、元気のよみがえったオニイサンは美女をもとめてプールに行きました。
通訳と僕は、レストランに残りました。
専属の楽団が脳天気な音楽を奏でるのを聞きながら、マルガリータのおかわりをしました。
アルコールが回ってうとうとしかけたころ、通訳の携帯電話が鳴りました。
マンゴーを日本に輸出していたキューバ人の会社から、
「明日、ミーティングをしたい」
という要請の電話でした。
(問題の核心に迫れるかも…)
がぜん、目が覚めました。
気持ちに余裕ができたとたん、チャンスがめぐってきたのでした。
(次回 その5 に続く。次回は完結編だと思います)
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
インド、行ったことあります?
僕はありません。
スキューバダイビングの人がよく、
「ジンベイザメに会ったら人生が変わる」
と言いますが、
インドもそれに似てて、行ったら人生が変わるそうです。
自分は行ったことないくせに、インドに行ったことのある人を、長年、研究してきました。
その結果、分かったことがひとつ。
インド経験者は、
「インド大好き人間」
「インド大嫌い人間」
の2派に分かれるようなのです。
中間がいません。
さらに研究を進めた結果、「インド好き」「インド嫌い」を生み出す、あるきっかけがあることが分かりました。
多くの人が、
「電車ポテチ現象」
を経験していたのです。
こういう現象です。
インドの人々には、自分の物はみんなの物、というおおらかなところがあるらしい。
たとえば、あなたがインドを旅行しているとします。
どこかでポテトチップスを買い、食べながら電車に乗ったとしましょう。
あなたは座っています。
電車には吊革があるとします。
ある駅で2人組の男性が電車に乗り込んできました。
電車はちょうど満席だったため、その2人はしゃべりながらあなたの前に立ち、吊革に手をかけました。
あなたは景色を楽しみながらポテトチップスを食べています。
2人組は、ニコニコしながら世間話をしています。
そのうち片方の男性が、あなたのポテトチップスをつまんで食べました。
そのまま、何事もなく世間話をしています。
もう片方の男性も、あなたのポテトチップスをつまんで食べました。
何事もなく、世間話は続きます。
電車は次の駅に到着し、2人組は世間話をしながら降りていきましたとさ。
これが「電車ポテチ現象」です。
この現象は、カルビーでもプリングルスでも同じように起きることが分かっています。
草加せんべいの場合どうなのかは、現在調査中です。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
前回(その2)では、
農業人口を増やしたいと政府が望んでおり、
農業をやってみたい人はけっこうたくさんいる。
にも関わらず、実際に農業を始める人は少なく、農業人口は今も減り続けている。
という矛盾について書きました。
農業したいと思っている状態と、農業を実際に始める状態とのあいだには
「見えないダム」
があるようです。
◆◆◆
今回のテーマは、「ダム決壊作戦」です。
ダムを決壊させるには方法が2つあります。
ひとつは、
「ダムじたいに穴をあける」
ことです。
「そのうち農業をしたいナ?」と漠然と考えているサラリーマンが、
本当に農業を始めようと思ったら、どんな壁にぶつかるか?
壁はいくつもあるはずです。
これをひとつひとつ検証し、打ち破ることを考えるわけです。
たとえば、前々回(その1)で、就農センターで体よく追い払われた経験を書きましたが、あれもその壁のひとつです。
僕はなぜ就農センターであんな目にあったのでしょうか?
農業についてまったく何も知らない素人の状態で僕は就農センターを訪問したわけですが、
「就農センターは、何も知らないド素人が予習もしないで相談に来るところ」だと思っていたら、実際はそうではなかった。
就農センターから見たら、予習もしないで相談にくる”若造”は、
「農業を甘く見ている」
ということになるわけです。
(まあじっさい、農業を甘く見ている”若造”はけっこう大勢いまして、僕みたいな「バウムクーヘン野郎」もきっとそうなんだろうな…)
「ちゃんと予習してから来い。農業をなめんな」
たしかに、そりゃそうです。
でも、ぢゃあ予習ってどうやったらいいのか?
農業したいね?と漠然と思っているおそらく数千万人という人は、予習のしかたが分からないから次に進んでいないんだと思います。
だからここに「穴」をあける必要があります。
あけるべき穴はほかにもたくさんあるはず。
ひとつひとつ検証し、打ち破っていかなければならないと思っています。
今回はここまで。
ダムを決壊させるもうひとつの方法については、次回(その4)で。
ひきつづき、「ダム決壊作戦」です。
追伸。
写真はファーマーズ・マーケットの様子です。
僕がこういう趣味の持ち主だということではありませんので、念のため。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
検索エンジンで新興宗教のことを調べてみたこと、あります?
たとえば具体的な宗教団体の名前を入れて検索してみるのです。
去年、面白半分にやってみたのですが、びっくりしました。
戦争が起きていたのです。
耳にした事のある新興宗教の名前を入れて、検索してみますと…。
何万、何十万というサイトにヒットします。
そのサイトの3分の1は、
「この宗教はまともな正しい宗教だ。誹謗中傷するやつらは許せん」
という主張のサイト。
つぎの3分の1は
「あの宗教を叩き潰せ」
という主張のサイト(たいていは対立する宗教団体の書き込みのようです)。
最後の3分の1は、
「息子を返せ」
という被害者の会、または被害者の会を装ったなにものかのサイトでした。
この3者が、激しい舌戦を繰り広げていたのです。
しかも、かなり激しく強烈な言葉を武器にして。
僕はしばらく傍観者としていろんなサイトを読んでいたのですが、そのうち怖くなってこの「火遊び」をやめました。
◆◆◆
さて、アメリカにモンサントという会社があります。
農業をされている方はご存知でしょう。
この会社も陰謀論がとびかう会社です。
モンサントの名前で英語検索すると、何百万件というサイトにヒットします。
そこにも戦争がありました。
モンサントの味方をしているサイトはほんのわずかです。
ほとんどが、モンサントを攻撃しているサイトでした。
モンサントは超巨大企業です。
その巨大さを背景に、これまで社会となんども衝突してきたのです。
小さなサイトが泣こうがわめこうが、びくともしません。
しかし、小さいサイトの側も、数が膨大になると話は違います。
つまり、
「巨大企業 VS 無数の小さなサイト」
という図式の戦争が、そこで展開されていたのです。
イメージとしては、
「巨大戦艦大和 VS 米軍の小さな戦闘機の大群」
「ハチミツを狙うヒグマ VS 巣を守るミツバチ」
こんな感じです。
前者は、「小さいけど大群」のほうに軍配があがりました。
後者は、たいていヒグマが勝つそうです。
モンサントは、乱暴ですがひとことでいうと、
「遺伝子くみかえ特許を武器に、世界の農業に影響を及ぼそうとしている会社」
です。
少なくとも、世間からはそう見なされています。
具体的には、たとえば、
○ほとんどの植物を根絶やしにする強力な除草剤
○その除草剤に負けない作物品種(遺伝子くみかえにより開発)
をセットで世界中に販売したりしています。
また、あちこちで訴訟を起こしたり起こされたりしています。
たとえばモンサント社が遺伝子特許をもつ作物がどこかで栽培されており、その花粉が風にのってあなたの畑にやってきたとしましょう。
その遺伝子組み換え作物の花粉が、知らないうちにあなたの畑の作物と自然交配したとします。
翌年、あなたのところにモンサント社から手紙が送られてきます。
手紙にはこう書いてあります。
「アナタノ畑は、ワガ社ノ遺伝子特許ヲ侵害シテイルナリ。タダチニ栽培ヲヤメ、特許侵害ノ賠償金ヲ払ウナリ。拒否スレバ、訴訟スルナリ。ニンニン」
モンサントは遺伝子特許にはものすごく神経を尖らせており、どこかの畑が遺伝子特許を侵害していないかどうか、それを調査するための専門家を抱えています。
「モンサント・ポリス」と呼ばれているそうです。
誤解しないでください。モンサントはS的に農業者いじめをしているわけではありません。
無実の農業者が訴えられるという不幸な例も多くあるのですが、一方で、モンサントが特許侵害の被害者になるケースも確かにあるそうです。
われわれ日本人は特許のような知的財産の権利についてはあまり敏感ではありませんが、契約社会のアメリカでは死活問題になります。
遺伝子くみかえの是非をここで論じるのはやめておきます。際限がないので。
モンサントがこういう「戦争」状態になっているのは、遺伝子くみかえが良いとか悪いとかいうよりも、モンサント社の
「いつでもかかってきやがれ。ボコボコにしてやるからな」
という態度が反感を呼んでいるような気がします。
仲良くやろうよ。
これって、日本人的な発想かなぁ?
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
アメリカにはブッシュ大統領がいてCIAなんかがあって、ビル・ゲイツやブラッド・ピットがいて、まあいろんな意味でにぎやかな大国ですけど、
食とか農業とかに興味がある人にとってもなかなか面白いところです。
今回は「食と農業」という視点で、
「アメリカ旅行の楽しみ方」
をちょっとご紹介。
ニューヨークまたはロサンゼルスの空港に到着したら、まずは本屋さんを探してください。
「ザガット・サーベイ」という縦長の本が置いてあるところを見つけましょう。
「ザガット・サーベイ」は、グルメガイドブックの一種です。
ただし、これを買うのではありません。
ニューヨークとロサンゼルスでは、グルメガイドの姉妹編として
「ザガットサーベイ マーケット特集」
というのが売られています。
こっちを買うのです。
「ザガットサーベイ マーケット特集」には、
オシャレなスーパーマーケットはどこにあるか
カッコイイ自然食品店はどこにあるか
ファーマーズ・マーケットはどこで開かれているか
が細かく書かれています。
「食と農業」好きな旅行者にとって、ちょうどよいガイドブックになっているのです。
というわけで、「ザガットサーベイ マーケット特集」を手に入れたら、
さっそくファーマーズ・マーケットに出かけてみましょう。
ファーマーズ・マーケットといういのは、日本語でいうと「産地直売所」です。
ファーマーは「農家」の意味です。
マーケットは「市場」の意味です。
アメリカの「ファーマーズ・マーケット」は、都会のまんなかで開かれています。
たとえば混雑するニューヨークのマンハッタン。
ロサンゼルスの、セレブリティが行きかうハリウッド。
こういうところに、大きな産地直売所が出現しています。
農家さんが自分で直売所に立ち、自分の作った農産物を売るのです。
都会のまんなかに、こつ然と農業が姿をあらわすわけです。
このミスマッチが、都会の人の心をひきつけるのでしょう。
ファーマーズ・マーケットは、いつも同じ場所で開かれているのもあれば、曜日によって場所を転々としているものもあります。
何曜日にどこに行けばいいのか、という情報も
「ザガットサーベイ マーケット特集」
に載っています。
ファーマーズ・マーケットでは、おおぜいの農家さんが、それぞれ自前のテントを張って農作物を販売しています。
ゆっくり回って、面白そうな野菜、珍しい果物などを探してみましょう。
もし話しかける勇気が出るようだったら、
「畑につれてってくれ」
と交渉してみてください。
ひょっとしたら、そのまま連れて行ってもらえるかもしれません。
今回はここまで。
次回(その2 怒涛編)では、アメリカの農業について書く予定です。
(追伸)
余談ですが、アメリカにはCIAと呼ばれるものが2つあります。
ひとつは、あのスパイのCIAです。
もうひとつは、ニューヨークにある有名な料理学校の名前です。なかなか厳しい料理学校だそうです。
「CIA出身の料理人」に出会っても、スパイではありませんので、引かないように。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
キューバは有機農業で有名な国だと書きましたが、現地で聞いたところでは、はじめは有機農業をするつもりがなかったそうです。
化学肥料や農薬をふつうに使い、ふつうのスタイルの農業をするつもりだったようです。
それがなぜ「有機農業先進国」になったかというと…
キューバはソビエト連邦と仲よくしてました。
ソビエト連邦が元気だったころは、ソビエトからお金も物資も送られてきて、キューバの生活もまあまあ豊かだったらしい。
でもソビエト連邦は崩壊しましたよね。ベルリンの壁も壊れたし。
それ以降、お金や物資を送ってくることがなくなり、キューバは経済的に困窮しました。
化学肥料や農薬を買うお金が、なくなったのです。
そのために、キューバは国を挙げて有機農業に真剣に取りくむようになったそうです。
◆◆◆
(前回までのあらすじ)
なんの前触れもなく突然マンゴーの輸出を禁止したキューバは、ものすごくよく分からない国だった。
「誰に聞いたら何が分かるのか、が分からない」
そんな国に迷い込んだオニイサンと僕。
大使の紹介で「軍隊のエライ人」に会うことになるのだが、果たして…?
では、続きをお読みください。
◆◆◆
「軍隊のエライ人」はホセ・なんとかという名前でした。
発音できない名前は、覚えないことにしています。
体の大きい人でした。軍服を着ています。
一般人の農業は政府が管轄しているそうですが、
軍人の家族の農業はこのホセ・なんとか氏が仕切っているそうです。
オニイサンと僕は、
「ただっ広いのに応接セットがひとつしかなく、ほかに誰もいない部屋」
に案内され、そこでホセ・なんとか氏と面談しました。
通訳がわれわれの用件を伝えると、ホセ・なんとか氏は言いました。
「そうか、わかった。マンゴーは輸出禁止になっているのか。それはイカンな」
「分かってくれましたか」とオニイサンが言いました。「じゃあさっそく、輸出禁止を撤回してください」
「よし分かった。では今から、誰がそんな禁止令を出したのか、調べてみよう」
(えっ。アンタ知らないの?)
そういいかけた言葉を、僕は飲みこみました。
その横で、オニイサンが果敢に言いました。
「たぶんお国の農業大臣とか、農業長官とかが出したんじゃないですか?」
「かもしれんな」ホセ・なんとか氏はいいました。「誰が大臣をしているのか調べてみよう」
ここ、ずっこける(←死語)ところです。
調べとくから、明日また来なさい。
ホセ・なんとか氏にそう言われ、オニイサンと僕(とメキシコで雇った通訳)は
「ただっ広いのに応接セットがひとつしかなく、ほかに誰もいない部屋」
をスゴスゴと退出したのでした。
建物を出ると、そこに別の軍人が立っていました。
通訳によると、
「せっかく日本から来た客人だから、農場でも案内してあげなさい」
とホセ・なんとか氏に言われ、迎えにきたのだそうです。
というわけでわれわれは、首都ハバナから車で2時間のところにある軍隊農場まで、連行されたのでした。
太陽がカンカンに照っています。
連行された農場は、遠くからみると何もないただの白っぽい荒地に見えるのですが、近づいてみるとたしかに農場でした。
ただし、人の姿はありませんでした。
盛り上がった畝が、何本も何本も、遠くまで延びています。
そこに、赤く実ったマンゴーが転がって並んでいました。
問題はここです。
皆さんのなかに、あれっ? と思った方がおられるかもしれません(全員かも)。
そうです。マンゴーって、木になるんですよね。
スイカみたいに地面に転がっているわけではありません。
僕の頭には不思議な記憶があって、そこではマンゴーは地面に転がっていたのです。順序よく整然と。
でもありえないですよね。
記憶違いだと思います。なのになぜか僕の頭には…。
じつは農場での記憶はここで途切れています。
はっと気がつくと、オニイサンと僕(と通訳)はそれぞれビニール袋いっぱいのマンゴーを抱え、軍人の運転するワゴン車に揺られていました。
太陽が傾きかけています。
オニイサンはニコニコしています。
そのまま何事もなかったように、ワゴン車はわれわれが泊まるホテルに帰ってきました。
「バカかおまえは。おまえもマンゴーを木からもぎとってたじゃねえか」
これが、地面に転がるマンゴーの話をしたときの、オニイサンの反応でした。
どうやら、へんな記憶を植えつけられているのは僕だけのようです。
(キューバ軍が、ややこしい日本人をうまくかわすために、記憶を誤魔化すような神経ガスでも使ったのか)
と、ちょっと思ったのですが、オニイサンの様子をみるかぎり、そんなことではなさそうです。
それに、たとえそういう神経ガスを使ったとしても、僕の記憶を誤魔化してマンゴーを地面に転がしたところで、いったい何になるでしょう?
その日はそういうことで暮れました。
ちなみに、あらかじめお断りしますが、「地面になるマンゴーの記憶」の件はオチがありません。
いまでもアレはなんだったのか、謎のままです。
その日の夜、オニイサンと僕(と通訳)はマンゴーを食べるのに大騒ぎしました。
ホテルでナイフとスプーンを借りようとしたのですが、
例によって
「誰に聞いたら何が分かるのか、が分からない現象」
がここでも起きたのです。
フロントに聞いても、どこにナイフがあるのか分からない。
どこにスプーンがあるのか分からない。
隣接するレストランは閉店準備をしていましたが、
店員に「ナイフとスプーンを貸してくれ」と聞いたところ、
「申し訳ないがよく分からない」
という、よく分からない返答しかかえってこない。
というわけで、その夜は結局、ナイフもスプーンも入手できず。
アーミーナイフみたいなものを誰も持っていなかったので、自分たちでなんとかすることもできず。
疲れ果ててマンゴーを食べるのをあきらめたのでした。
翌朝。
朝日のまぶしさに目をしばたたせながら、オニイサンと僕(と通訳)は再び、「軍隊のエライ人」ホセ・なんとか氏を訪問しました。
昨日とは別の、会議室らしい部屋に案内されました。
そこには数名の男女がおり、どうやらホセ・なんとか氏の部下のようでした。
挨拶もそこそこに、ホセ・なんとか氏は部下にむかって話し始めました。
通訳の話では、
「マンゴーを輸出禁止にした張本人を知らないか?」
「いえ、知りません」
という会話が交わされていたようです。
ひとしきり議論があり、ホセ・なんとか氏はたちあがってわれわれに握手を求めました。
部下の人たちも、順番にわれわれと握手をし、去っていきました。
最後に、オニイサンと僕(と通訳)だけが会議室に残りました。
どうやら面会は終わったようでした。
「今のは何だったの?」オニイサンが呆然とつぶやきます。
「ようするに」通訳が答えました。「調べてみたがよく分からない。幸運を祈る、ということのようで…」
(次回 その4に続く)
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回 その2 の復習)
Aさんの姉(広告代理店勤務)が授けてくれた、プレゼンテーションのポイントは3つありました。
聞き役であるサラリーマンに、
「サラリーマンのこと、けっこうよく分かってるねえ」
「えっ、そんなことも知ってるの?」
「食育の話ではこの人には勝てないな」
と思わせることでした。
◆◆◆
以下、広告代理店姉さんの話の要約です。
まずは、
「サラリーマンのこと、けっこうよく分かってるねえ」
と思わせるにはどうしたらよいか。
これは、サラリーマンの実態(日々の悩みとか)を知る、という意味ではありません。
彼らのボキャブラリーを知る、という意味です。
「日本サラリーマン研究所」が一昨年に出したレポートによれば、会社のことを奥さんに話したいと思うサラリーマンは少なく、2割にも満たないそうです。
つまり、ダンナさんからこうしたボキャブラリーを得るというのは難しい。
サラリーマンのことを理解するには、彼らが読む新聞や雑誌に目を通すことです。
といっても、サラリーマン向けに出されているゴシップ系大衆紙を読む必要はありません。グラビア女優の誰々がバスト何センチであっても、どうでもよいことです。
スポーツ新聞も無用。松坂の契約料が何億円であろうと関係ありません。
島耕作シリーズのマンガを読む必要もありません。ああいうサラリーマンはいないので。
Aさんが相手にするサラリーマンは、課長さんとか部長さんとか呼ばれる人が多い。
この人たちは、
「サザエさん」に出てくるような、お気楽サラリーマンでもなければ、
「笑うせぇるすまん」にときどき出てくるような、アホサラリーマンでもありません。
いま課長さんとか部長さんと言われる人たちのたいがいは、若かりしころ過酷な受験戦争に打ち勝った人たちです。
彼らと話があうためには、たとえばこういう会話を理解する必要があります。
「グローバルスタンダードとか言うけどさぁ、結局アングロサクソンに都合がいいだけじゃん」
「ウチの会社、ビジョンとかないよなあ」
「キャッシュフローちゃんと見とかなきゃだめだよ」
あと、
副部長と部長代理はどっちがエライのか。
顧問と参事はどう違うのか。
経理と会計はどう違うのか。
会長っていうけど、なんの会の会長なのか。
シーイーオーというのは、運動会で騎馬戦をするときの掛け声ではない。
こういったことも、知っておいたほうがいいです。
つまり、ビジネスで実際に交わされている言葉を理解する必要があるのです。
そのために読んでおくと役に立つものを書いておきます。
いちばんいいのは、たぶん日経新聞です。
ただ、新聞ですので毎日来るし、あれを毎日読みこなすのはキツイ。
したがい、次善の策として、雑誌を買いましょう。
ダイヤモンド
東洋経済
WEDGE
このあたりから1つ選び、最初から最後まで読むようにします。
意味が分からなくても読む。
できれば何回か読む。
余裕ができたら、わからない言葉をウィキペディアかなにかで調べる。
こうして調べた言葉ですが、実際にポンポン話せなくてもよいです。
ただし、会話に出てきたら(=相手が言い出したら)、何のことか大雑把に分かる程度には知っておく。
プレゼンテーションの場では、そうした雑誌をわざとテーブルの上に置いておきましょう。
あなたがそういう雑誌も読む人間であることを、アピールするのです。
今回はここまで。
「えっ、そんなことも知ってるの?」
「食育の話ではこの人には勝てないな」
の2つが残っているので、次回以降に書きます。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
前回(その1)で、就農センターをちょっとからかったような文章を書きましたが、その続きを書きます。
日本の農業人口(=農業をする人の数)はすごく減ってます。
手元に数字がないのですけど、たしか200万人くらいしかいないはずです。
1億2000万人の食を支える人口が、200万人しかいないのです。
それもどんどん減ってます。
その200万人の平均年齢は65歳です。
5年後には、70歳になります。
僕は農業は日本の宝だと思ってます。
新規に就農した若い人は、ダイヤモンドです。
ダイヤモンドに輝いてもらうためにも、農業人口がどんどん減っていくこんな状況を、黙ってみていることはできません。
でも僕1人が農業を始めたところで、この状況は解決しないです。
農林水産省も危機感を強く感じています。
農業を始める人を増やすために、あのテこのテの政策を打ち出しています。
一方で不思議なことが起きています。
ある調査によると、
「都市部に住む20代の男性の8割は、将来農業をしたいと思っている」
「サラリーマンをリタイアする予定の男性の7割は、リタイア後に農業をしたいと思っている」
だそうです。
(どのくらい本気でそう思っているか、という問題もありますが)
1年ほど前に、東京で、20代男性向けのビジネススクールでちょっとした講演をする機会がありました。
(僕は有名人ではありませんので、講演する機会は珍しいですけど)
生徒さんは50人いました。50人ちょうどです。
講演の最初に、こう言ってみました。
「将来、農業したいと思ってる人、手をあげて?」
するとビックリ。
50人中、48人が手をあげたのです。
単純に考えると、不思議ではありませんか?
かたや、農業人口を増やすために、国もあのテこのテを考えています。
かたや、農業をしたい人はけっこうたくさんいます。
↓
にも関わらず、実際に農業をする人は増えていないのです。
農業をしたい人が農業できないような、見えない巨大な壁が立っているのでしょう。
僕にはそれがダムのように見えます。
なんとかしてこのダムを決壊させたい。そう思っています。
見えないダムの壁をどうやって決壊させるか。
今回はここまで。
次回(その3)のテーマは、「ダム決壊作戦」です。
松宮園生です。
(今回は、よもやま話です)
いまでこそ食(食育)に関する仕事をしていますが、かつては違う世界で仕事をしていました。
食の世界に転向したのは、7年前のことです。
転向したてのころ。
中途採用で食品の貿易会社に就職しました。
仮にテケテケ商事と呼ぶことにしましょう。
このテケテケ商事で、僕は3年働きました。
テケテケ商事はリスクの高い相場商品をたんと扱っていたわりには、地味な社風の会社でした。
あまり会話がないのです。
オッサンたちは昭和っぽい腕章をして黙々と仕事してたし、女性社員はOLというより女子社員という感じでした。
商事会社のくせに人の出入りも少ない。
僕が配属になった部署の室長さんは、僕より3ヶ月前に有名な大手商社から転職してきた人だそうですが、なんだか商社マン出身とは思えない地味な人でした。
そんなテケテケ商事に初めて出社した日。
地味な室長さんに
「キミの机は僕の隣です」
と言われてそこに座った僕。
デスクトップ・コンピューターが設置されています。
新品ではありませんでした。
最近まで誰かほかの社員が使っていた形跡があります。
コンピューターを立ち上げようとすると、室長さんが言いました。
「あらかじめ言っときますが、ウチの会社のパソコンはインターネット通じません。よろしく」
貿易会社なのに、パソコンがインターネットから切り離されているのです。
地味にもほどがあります。
まあ初日ですから、キレるわけにもいきません。
聞こえないようにため息をつき、コンピューターのスイッチを入れる。
しばらくすると、なぜか分かりませんが表計算ソフトの「エクセル」がとつぜん開きました。
そこにはただひとこと
「メキマンが来る」
と書かれていました。
メキマンが来る。
「メキマンって、なんですか?」
僕は地味な室長さんに聞きました。
地味な室長さんは「メキマンが来る」を数秒間みつめていましたが、
「分かりません。わたしもこの会社に来て日が浅いので」
と残念そうにいい、張子の虎のように首をふりながら男子トイレに行ってしまいました。
メキマンが来る。
誰が来るんだろう? 食品業界のヒーローか?
純真な僕は悩みました。
次の朝も、出社してコンピューターを立ち上げると、昨日とおなじくエクセルが勝手に開いて
「メキマンが来る」
の7文字が出現。
妙だったのは、社内の誰に聞いても教えてくれなかったことです。
というか、誰も答えられませんでした。
メキマンが来る。
このコンピューター、以前は誰が使っていたんだろう?
その人物なら知っているはずだ。
地味な室長さんに聞きました。
地味な室長さんは自分のあごを数秒間なでていましたが、
「誰が使っていたんでしょうねえ。さあ分かりません。わたしも日が浅いし、わたしが来たときはすでにこのパソコンはここにありましたよ」
と残念そうにいい、張子の虎のように首をふりながら男子トイレに行ってしまいました。
メキマンが来る。
コンピューターを立上げる → エクセルが勝手に開く → メキマンが来る
これが僕の日課となりました。
メキマンの意味がわからないまま、3年が過ぎました。
テケテケ商事を退職する日、僕は社内のおもだった人たちに挨拶まわりをしながら、メキマンの意味を聞いてまわりました。
やっぱり誰も知りませんでした。
とうとう謎はとけないまま、僕のテケテケ商事での3年間は終わったのであります。
◆◆◆
メキマンの謎は、いまでも解けていません。
ただ、ひょっとしたらメキマンというのは
「メキシコ産のマンゴー」
という意味なんじゃないか、と今では思うようになりました。
「メキマンが来る」
というのは、
「メキシコ産のマンゴーが日本に輸入される」
という意味なのかもしれません。
今日はここまで。
明日からまた、食育の話と農業の話を書いていきます。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
なんの前触れもなく突然マンゴーの輸出を禁止したキューバ。
その原因をさぐるために、果物会社のオニイサンと僕はカリブ海へと旅立った。
しかしオニイサンの動機はいまひとつ不純であった…。
◆◆◆
日本からキューバに行くルートは主に2つあります。
ひとつはカナダ経由。
もう1つはメキシコ経由。
アメリカ合衆国はキューバと仲が悪いため、飛行機は飛んでいないのです。
オニイサンと僕はまずメキシコに行き、そこでスペイン語の通訳を雇い、絶妙な味のマルガリータをがぶ飲みしました。
二日酔いで常夏のハバナ(キューバの首都)に入ったのは、その翌日です。
ところで、日本を出るまえにキューバの旅行ガイドを買ったのですが、そこには気になることが書いてありました…。
『この国(キューバ)では、誰に何を聞いたら、何が分かるのか、ということが分からない。観光客は必ず道に迷う。
なぜかというと、人々が自分の国について何も知らないからだ。
たとえば、道行く人を呼びとめ、
「×××を探しているんですが、どこにありますか?」
と聞いたとしよう。
まず間違いなく、誰も答えることができない。
答えたくないとか、答えることを禁じられているのではなく、本当に知らないのだ。
「誰に聞いたら分かりますか?」
この質問すら、答えられない。
ふつうだったら、「あそこに観光案内所があるから、そこで聞きなよ」くらいの答が返ってきそうなものだが、それもない。
観光案内所がどこにあるのか、誰も知らないのだ。
知らないだけならまだいい。
質問された通行人は、その場を乗り切るために、
「ああ、それならあっちにあるよ」
と適当にデタラメを言って、去ってゆくことが多い。
しかも、そのデタラメには悪気がないのだ』
…こんなことが書いてあるのです。
日本でいうと、奈良に到着したガイジン観光客から
「大仏はどこにありますか?」
と聞かれて、地元の人が誰も答えられないようなものです。
またはデタラメに、「それって京都にあるよ」と答えるようなものです。
一抹の不安を抱えたままキューバの首都ハバナに入ったわけですが、通訳がキューバ慣れしていたおかげで、観光地めぐりで道に迷うことはありませんでした。
ちなみに、通訳は日系の人で、磯野波平に少し似ていました。
照りつける太陽のもとで観光したのはこんなところです。
「キューバ危機のときに、核ミサイルを搭載する予定だった発射台」(地下にロシアの秘密基地があるとかないとか)
「アメリカ軍が攻めてきたときに迎え撃つ砲台」
「ヘミングウェイが通ったバー」
このブログは旅行記を書くブログではないので、観光の話はここまでにします。
問題はマンゴーです。
オニイサンと僕はまず、日本の大使館に行きました。
実際には、道行く女性ばかりながめているオニイサンを引きずるようにして、大使館に入ったわけです。
動機の不純なオニイサンでしたが、日本でうまく根回しをしたのでしょう、なんと大使と面会の約束をとりつけていました。
オニイサンと僕は、緊張しながら、あらためて大使にマンゴーの話をし、マンゴーを輸出禁止にした張本人は誰なのか、その人に会いたいと告げました。
すると大使は言いました。
「じつはその、わたしにもよく分からんのです。キューバというのは難しい国で、どの大臣がどんな業務を担当しているのかがよく分かりません。誰に何を聞いたら、何が分かるのか、ということが分からないのです」
「分からないのですか?」
「分からないのです。ほんとにこの国は妙な国です。わたしはここに赴任して2年になりますが、まだカストロに会ったことがありません。ほかの国ではありえないことです」
出発前に抱いた「一抹の不安」は、こんなところで的中しました。
誰に何を聞いたら、何が分かるのか、ということが分からない…。
「とりあえずわたしにできることは」と、大使はいいました。「軍の幹部を紹介することです。たまたま知っていますのでね。キューバの兵士は農家の出身がほとんどです。兵士たちの農地を管轄しているのが、この男です。この男ならなにか知っているかもしれません。いまからこの住所に行ってください。アポイントメント(面会の約束)は取ってあります」
大使に渡された住所をたよりに、オニイサンと僕はその軍隊のエライ人のところへと向かったのでした。
(次回 その3 に続く)
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回までの復習)
健康な人はますます健康な食生活をし、
不健康な人はますます不健康な食生活に走る
そのギャップが大きくなった。
これを「フード・ディバイド」といいます。
フード・ディバイドのせいで、アメリカ人のメタボはあまり減りませんでした。
◆◆◆
フード・ディバイド関連でもう少し。
先月(2月)なかばのこと。
UNICEF(ユニセフ:国際連合児童基金)が、ある報告書を発表して話題になりました。
OECD(経済協力開発機構)に加盟している21ヶ国を対象に、
「その国の環境が、子供が育つのにどのくらい適しているか」
を調べた報告書です。
OECD は、アメリカ・ヨーロッパ・オセアニアの先進国の集まりです。
べつの言い方をすると、
「横文字を使う先進国の集まり」
です。
こう書くと、ヤマトダンジとしてはなんとなくムカつきますね。
タテ文字の日本は OECD に加盟していないので、調査対象にはなっていません。
ユニセフのこの報告書は「イノセンティ・レポート」と呼ばれています。
どんな調査をしたかというと、
1.物質的な豊かさ
2.健康と安全
3.教育の質
4.家族のきずな
5.生活習慣
6.本人(子供たちのことです)の幸福感
以上6つの項目それぞれで、OECD加盟21ヶ国を比較しました。
その結果。
金メダル:オランダ
銀メダル:スウェーデン
銅メダル:デンマーク
…(中略)…
最下位から2番目:アメリカ
最下位:イギリス
こういう結果になりました。
ダメ出しされたアメリカとイギリスはだいぶプライドが傷ついたらしく、マスコミもちょっと騒然となりました。
まあでも、うなずける結果ではあります。
◆◆◆
イギリスのことはよく分かりませんが、アメリカでは子供の肥満も深刻です。
フード・ディバイドのせいもあり、生活習慣はちっとも改善していません。
「ガストリック・バイパス手術」という肥満治療が、大人のあいだで流行っています。
胃を小さくする手術です。
胃を小さくする→早々と満腹感が味わえるようにする→食べる量が減る→痩せる
カンタンにいえばこういう理屈です。
4日?6日間の入院、1ヶ月程度の自宅療養、費用は2万ドル前後(250万円くらい)だそうです。
本来これは大人向けの手術でしたが、このところ子供が受けるようになっているそうです。
年間1000人くらい、受けているらしい。
そういうアメリカを横目でみていたヨーロッパ(EU)は、
「あんな国になっちゃいけねえ」(←江戸か)
ということで、ファーストフードの広告を禁止することを検討しています。
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
「産地直売所」という言葉をご存知ですか?
農家さんが、採れたての農産物を売っているところです。
「産直所」ともいいます。
畑の多い地域に行くと、道ばたの小屋みたいなところで採れたてのトマトやニンジンやカボチャを売ってますよね? アレもその一種です。
「道の駅」ってありますよね?
クルマを運転する人のための休憩施設です。
「道の駅」の施設内にも、農家さんが農産物を持ち寄り、産地直売所を開いたりしています。
皆さんがスーパーマーケットで100円のトマトを買うとします。
この100円のうち、農家さんが受け取る金額はいくらだと思いますか?
だいだい、20円?30円くらいだと言われています。
残りのおカネは、スーパーマーケットや、卸売り業者に分配されるのです。
これが産地直売所だと、皆さんが払う100円のトマトのおカネは、全額とはいきませんが、けっこうそこそこ、農家さんのところに入るわけです。
農家さんにとっても、産地直売所はわりと魅力的だということです。
(ちゃんと売れればの話ですが)
さて、アメリカにも
「ファーマーズ・マーケット」
という言葉があります。
ファーマーは「農家」の意味です。
マーケットは「市場」の意味です。
ファーマーズ・マーケットというと、「農家の市場」という意味になります。
日本語の「産地直売所」と似ています。
似ていますが、ただし、大きな違いがあります。
アメリカの「ファーマーズ・マーケット」は、都会のまんなかで開かれています。
たとえば混雑するニューヨークのマンハッタン。
ロサンゼルスの、セレブリティが行きかうハリウッド。
こういうところに、大きな産地直売所が出現しています。
また、アメリカでは農家さんが自分で直売所に立ち、自分の作った農産物を売ります。
これが、「ファーマーズ・マーケット」です。
都会のまんなかに、こつ然と農業が姿をあらわすわけです。
このミスマッチが、都会の人の心をひきつけるのでしょう。
(最近は日本でも、都会のまんなかにファーマーズ・マーケットができはじめています)
ところで、都会に住むアメリカ人の心を魅了する「ファーマーズ・マーケット」ですが、
じつは農家さんのなかには
「けっ、都会の連中は気に食わないね。チャラチャラしやがって」
と内心思っている人もいます。
今回はそういう農家さんの話を友人が送ってきたので、例によってへたくそな翻訳でみなさんにお伝えします。
正直、今回は笑えるかどうかというとビミョーですが…
◆◆◆
「都会のやつら」
ロサンゼルス近郊の2人の農家??ボブとジョン??は、映画の街ハリウッドのファーマーズ・マーケットに出店していた。
売れ行きはよく、2人は上機嫌だった。今朝収穫した野菜を店頭に並べると、それが次々に売れていった。
しかしその上機嫌も長続きしなかった。ボブがとつぜん不愉快な表情をジョンに向けたのだ。
ボブが言った。
「オレはもう帰りたくなったよ。ハリウッドのやつらにゃ、我慢できねえ。イライラする」
「ハリウッドがどうしたんだ?」ジョンが言った。「大切なお客さんだぞ。さっきの若いニイチャンなんか、高いスイカをふた玉(2個)もお買い上げしてくれたじゃねえか。ちがうか?」
「ああそうだよ」ボブは言った。「だがハリウッド野郎にスイカを売るのはもうまっぴらだ。いつになったらあいつら、皮のむき方を聞いてくるのをやめるんだ?」
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◆◆◆
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(前回の復習)
ポルトベロー・マッシュルームのソテーを愛し、サプリメントを毎日山のように飲む内科医チイタッタ博士。
博士の日常を見ているうちに、僕は日本とアメリカの栄養学の違いを考えるようになりました。
◆◆◆
チイタッタ先生は、疾病予防と治療の両方を行っています。
患者さんのことを患者さんと言わず、クライアントと呼んでいます。
どんな予防や治療を行っているかというと、
「サプリメントを適切に飲むことによる疾病予防」
「サプリメントを大量投与する治療」
をしています。
Orthomolecular Medicine (オーソモレキュラー・メディスン)というそうです。
なんでも、ノーベル賞を2度受賞したライナス・ポーリング博士の理論からきているとのこと。
詳しいことは僕は専門家じゃないのでよく分からないんですけど。
アメリカには、チイタッタ先生みたいにサプリメントを主役に予防や治療を行う医師が、7万人くらいいるそうです。
この数字は数年前の数字なので、今は増えているのではないかと思います。
「サプリメントを適切に飲むことによる疾病予防」
と書きましたが、この「適切に」というのがアメリカ流で、チイタッタ先生の場合はそれが30粒もの数になるわけです。
毎食後に、30粒のサプリメントです。
30粒というとちょっとびっくりしますが、ひと粒あたりの大きさも、日本のものよりひと回り大きいです。
そんな大きさのものを30粒飲むわけです。
「喉につまったりしないんですか?」
「いや全然」と、チイタッタ先生はなにごともなく言います。
「サプリメントを喉につまらせて死んだ人とか、いないんですか?」
「聞いたことがないね。そんなことより、オマエも飲め。オマエの分も用意してある。オマエにはどんなサプリメントが必要かだいたい分かるから、処方箋も作っておいた。いっとくけど有料だぞ」
「ひぇー」 (←死語)
で、ターザン栄養学の話ですが…。
ターザンがサプリメントを飲んだらどうなるか。
ターザンは大自然のなかに住み、食べたときに食べ、眠りたいときに眠り、サラリーマンみたいなストレスもなく、ある意味とても健康な生活をしています。
そのターザンは、サプリメントを飲む必要があるのでしょうか?
日本人は、
「ターザンにサプリメントは不要だ。むしろ健康を損なうだろう」
と考えます。
チイタッタ先生をはじめとするアメリカ人は、
「ターザンがサプリメントを飲んだら、もっと健康になる」
と考えているようです。
つまり自然の状態に手を加える(ターザンがサプリメントを飲む)ことにより、人工的に「より高いレベルの健康」を得られると考えているのです。
この、「人工的に作り出すより高い状態」のことを、
Optimal Health (オプティマル・ヘルス)
といいます。
日本でもときどき「オプティマル・ヘルス」という言葉が使われたりしますが、日本で使われているときの意味はわりとアイマイです。
「なんとなく、個人個人に最適なすごくヘルシーな感じ」
みたいな意味合いだったりします。
しかしチイタッタ先生に言わせると、「オプティマル・ヘルス」には厳密な定義があり、要は
「自然に得られるいちばんヘルシーな状態を、人工的にさらにアップさせた極限値」
ということのようでした。
自然と共存してきた農耕民族の日本人と、自然を征服してきた狩猟民族のアングロサクソンとの違いが、こういうところにも出ているわけです。
どっちが正しいのかは分かりませんけど。
今回はここまで。
次回はアメリカのサプリメントの歴史について、ちょこっと書きます。
(追伸)
サプリメントを喉につまらせて命に関わった例って、ホントにないのでしょうか?
日米問わず、そういう例をご存知のかたがおられたら教えてください。
今のところ、誰に聞いても「ない」という答えなのですが、ホントかな…。
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チーフの松宮園生です。
いきなりですけど、農業の関連でキューバの話をします。
キューバはカリブ海に浮かぶ島国です。
(地図です。虫眼鏡で見てください)
作家のヘミングウェイが好んだ国としても有名で、あと、葉巻なんかも知られています。
「キューバ危機」というのがありました。
アメリカ合衆国とソビエト連邦が、もうちょっとで核戦争、というところまでモメたことがあります。
半世紀近く前の話です。
キューバで一番エライ人はカストロという人です。
こんな濃ゆい顔してます(左側の人)。
キューバは有機農業の国です。
サトウキビ、パイナップル、バナナ、マンゴーなどが作られています。
数年前、僕はこの国に農業探検に行きました。
何しに行ったかというと…
地中海ミバエ、という名前の昆虫がいます。
ハエの一種です。
日本にはいません(いないはずです)。
地中海ミバエはマンゴーに卵を産んだりします。
卵が日本に入ってくるのを恐れる日本の政府は、「地中海ミバエのいる国」からのマンゴーの輸入を禁止しています。
たとえばインドはマンゴー王国です。マンゴーのなかでも王様と言われるアルフォンソ・マンゴーが豊富にとれる国です。
しかし日本政府から「地中海ミバエのいる国」という扱いをされていたため、日本にインドのマンゴーが輸入されることは最近までありませんでした(去年、解禁されましたが)。
島国キューバには地中海ミバエがいません。
しかもキューバはカンペキな有機農業の国です。
それで、キューバのマンゴーは日本人に喜ばれました。
キューバ人はせっせと、マンゴーを日本に輸出していたのです。
ところがある日のこと、キューバのマンゴー輸出会社から日本の果物輸入会社にメールが来ました。
「日本の皆様ゴメンナサイ。政府の命令で、来年からマンゴーの輸出ができなくなりました」
と、そのメールには書いてありました。
さあ大変です。
マンゴーが輸出禁止!
キューバのマンゴーは日本で人気があったので、突然の禁止で果物業界は大騒ぎになりました。
しかし一方で、果物業界の人々は首をかしげました。
今回の禁止令は、
「輸入する側の日本」が出したものではなく、
「輸出する側のキューバ」が出したものでした。
キューバはマンゴーを輸出して外貨を稼いでいます。
つまり、キューバは基本的にはマンゴーを輸出したいはずです。
なぜ、「外貨を稼ぎたい」キューバが、自国のマンゴーの輸出禁止令を出すのでしょうか?
誰にも分かりませんでした。
不思議なことに、メールを送ってきたキューバの会社も、その質問に答えることができませんでした。
「政府の命令だから」
この一点張りでした。
果物業界の人々は、今度はキューバ大使館に出かけて同じ質問をしました。
大使館も応えられませんでした。
「本国の命令だから」
この一点張りでした。
このころ僕は貿易会社の下請けのようなことをしていましたが、仕事がなくてヒマで今より貧乏をしていました。
そんなある日、果物会社のオニイサンが僕の事務所にずかずかとやってきて、こう言いました。
「あんた、おれと一緒にキューバに行ってくれないか。キューバの政府と話して、マンゴーの輸出禁止令を解除してもらおうと思う」
「へ? キューバ? 行ったことないスけど…」
「いいんだよ。オレも行ったことないんだから。まあとにかく行こう。きっと美人がうじゃうじゃいるぞ」
というわけで、僕は動機不純なこのオニイサンのおともでキューバ農業探検に行くことになったのです。
(次回 その2 に続く)
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チーフの松宮園生です。
(前回の復習)
「食育基本法」という法律ができ、霞ヶ関の3省がそれぞれ独自に食育活動を展開しています。
その様子を、1800年前の中国を舞台にした「三国志」になぞらえて解説します。
厚生労働省は、蜀(しょく)という国に
文部科学省は、呉(ご)という国に
農林水産省は、魏(ぎ)という国に
それぞれ、ちと強引に、独断と偏見で、なぞらえてみます。
◆◆◆
今回は文部科学省の食育です。
文部科学省は、年間12億円くらいの予算で、食育を進めようとしています。
この金額は、厚生労働省より少し多く、農林水産省よりだいぶ少ないです。
農林水産省>>文部科学省>厚生労働省
という図式です。
三国志の3国の規模もこれと似ており、
魏>>呉>蜀
となっています。
つまり、文部科学省のポジショニングは、呉とよく似ています。
三国志の呉という国は、揚子江の南で勢力をのばした国です。
いわゆる南国でした。
蜀や魏がわりと冷淡というか、シニカルというか、人を小ばかにするようなところがあり、まあ中華思想的なところがあるのに対し、呉はちょっと一本気で熱いところがあります。
文部科学省の食育もある意味、熱い。
この省の食育の大目的は「しつけ」です。
それはそうですね。文部科学省というのは教育を管轄する省なのですから。
たとえば「箸の持ち方」。
厚生労働省や農林水産省にとって「箸の持ち方」はどちらかというとドーデモイイことなのですが、文部科学省にとってはそうではありません。重要なことです。
たとえば「いただきます」「ごちそうさま」を言うことの意味。
これも厚生労働省や農林水産省にとっては2次的なことですが、文部科学省にとっては大事なことです。
What time is it now? (いま何時?)
を覚えるのに、
「掘ったイモいじるな」
という語呂合わせを使うことがありますね。
同様に、ガイジンに「いただきます」を教えるとき、僕はときどき悪ふざけで
Eat a dirty mouse. (汚れたネズミを食べろ)
という語呂合わせを教えてます。
こんなふざけたこと、「文部科学省型食育軍団」に知られたらきっと処刑されてしまいます。
たとえば
「食育というのは、知育・体育・徳育と並ぶ、人間形成の基本だ」
というのも、文部科学省の食育路線です。
「食事は家族団らんで食べるべきだ。これが失われつつある風潮には問題がある」
という主張も、この路線です。
そういう性質があるため、文部科学省の