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日本食育大学未来学部

2010.02.09 20:32

メタボ狩り その3 風雲編

 

松宮園生です。

前回のあらすじ)
食育ロボット、アンドリューがメタボセンサー(メタボ発見器)
を内蔵し、改造ロボットとなって登場。
メタポリスの新兵器としてメタボ狩りを始めます。
迫害を恐れた市民はアンドリュー・レーダー(アンドリュー探知機)
を開発し、食育ロボットの魔の手を逃れようとしました…。

◆◆◆

秋葉原でアンドリュー・レーダーを手に入れた僕。
メタルボディの、洒落たデザインです(メタボだけに…)。
レーダーにはバイブレーション機能が備わっており、アンドリューが近づくと、ぶるぶる震えて教えてくれます。
値段は大奮発の、42,000円。
消費税込みです。
高かったけど、これでひと安心。

すっかり図にのった僕は、青山通りを闊歩していました。
カナダ大使館の近くで打合せがあったのですが、天気がよいのと、時間に余裕があったので、地下鉄に乗らずに青山通りを歩いていたわけです。
そのとき。

ぶるぶるぶるぶる。
ぶるぶるぶるぶる。

反応するアンドリュー・レーダー。
さっそく警戒態勢です。

あわてて見回すと、表参道の交差点付近をアンドリューが疾走しているのが目に入りました。
誰かを追いかけているようですが、僕ではないようです。

視線をずらすと、新橋系サラリーマンが人混みをかきわけながら必死の形相で逃げているのが分かりました。
カツラなのでしょうか、風に当たった髪の毛が不自然な方向に流れています。

なんだ、自分じゃなかった。
ほっとする松宮。

◆◆◆

ほっとしたものの、じつは改造アンドリューは1体だけではないのです。
他にもいるかもしれません。
気を休める余裕はないのです。
アンドリュー・レーダーは、アンドリューの存在を知らせてくれるだけで、撃退してくれるわけじゃないし。
くわばらくわばら(←死語)。

危険だから、外を歩くのはやめよう。
目の前に地下鉄銀座線の入口があったのをよいことに、僕は急いで階段を下りました。

目印となるカナダ大使館は、地下鉄銀座線でいうと、赤坂見附駅と青山一丁目駅のあいだにあります。
どちらで降りてもよかったのですが、なんとなく赤坂見附で下車。
行き交う人の群れに押し流されるように、改札を出ます。

そこで異変に気がつきました。
ジャケットの胸のあたりがやけに軽いのです。
内ポケットに手をつっこんだ僕は、
「しまった」
と思わず口走りました。
財布がありません。

落としたのか。
スリにやられてしまったのか。

とほほ(←死語)。
ついてねえ…。

いつまでも嘆いてはいられません。
たしか地上に交番があったはずです。
僕は階段を駆け上りました。

すると、地上にアンドリューがいました。

◆◆◆

正確にいうと、アンドリューは50メートル先にいました。
50メートルというのは、彼のセンサーの「射程距離内」です。
もっと深刻な問題は、アンドリューがこっちをじっと見ていることでした。
目が合ってしまっています。

アンドリューがおもむろに歩き始めました。
まっすぐ、僕に向っています。
間違いありません、僕を狙っています。
目は点滅し、耳からは蒸気が噴出していました。

どんどん接近するアンドリュー。
いまさら逃げられない。
全身に冷気が走ります。

ど、どうしよう。

パニックになるまいと必死で自分に言い聞かせながら、アンドリューをかわす方法を考える僕。
しかし何の有効な知恵もわかないまま、時間が秒単位で消えていきます。

もはやアンドリューとの距離は10メートル。
その手に握られているメタボメジャーに、太陽光が鋭く反射して、本物の剣のように見えました。

(以下次号)








 

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2010.02.06 19:38

メタボ狩り その2 怒涛編

 

 

松宮園生です。

(前回のあらすじ)
2XXX年。
「メタボ警察」
が、メタボな人をつかまえ、裁判にかけ、
「メタボ刑務所」
に送り込むというキツーイ時代が始まりました…。

◆◆◆

メタボ警察。
またの名を「メタポリス」。
腹回り85センチを超えた男性が捕らえられるわけです。
むろん女性も取り締まりの対象ですが、女性の場合は腹回り90センチが基準なので、検挙者の数は男性ほどではありませんでした。

メタポリスの警官はピーポくんブランドのメタボメジャー(腹回りを測定する専用巻尺)を所持しています。
目を爛々と光らせた警官が、音をたててメタボメジャーを引き延ばしたり縮めたりしながら、獲物を探し求める姿に、人々は怯え、逃げまどいました。

しかし何といっても飽食の現代日本。
メタボの数が多すぎます。
メタポリスの警官の数も限られています。
このままでは十分な取り締まりができないと考えたメタポリスは、日本食育大学のロバート・シトピッチャン教授が開発した食育ロボット、「アンドリュー77型」に目をつけました。
アンドリューを改造して使うことにしたのです。
どのように改造したかというと、電子頭脳のなかに「メタボセンサー」を組み込んだのです。

腹回りの大きな人がアンドリューの100メートル以内に近づくと、メタボセンサーが反応。
ただちに追跡を始める、という仕組みです。
これも天才ロバート・シトピッチャン教授の発明であることは言うまでもありません。

◆◆◆

繁華街をパトロールするアンドリュー。
おおぜいの老若男女が、往来していきます。

プシュー!
そんなアンドリューの耳から突如、蒸気が噴き出しました。
両眼が交互に点滅しはじめました。
メタボセンサーが反応したのです。
近くに、メタボがいる。

「あ、あたしじゃないわよね」
「お、オレじゃねーよな」
「わ、わしじゃないとよいがのう」
通行人が、不安な表情でアンドリューの動作を見つめます。

ゆっくりと周囲を見回すアンドリュー。
その眼が、歩きながら携帯電話で談笑している中年の容疑者をとらえました。
アンドリューの存在に気がついていないようです。

アンドリューは腹部にある格納ボックスからメタボメジャーを引き出すと、それを片手に100メートル13秒くらいの実力で走りはじめます。
蜘蛛の子を散らすように逃げ去る通行人。
容疑者は何が起こったのか分からないうちに、アンドリューのメタボメジャーを巻かれてしまいます。

「89センチ。大問題です。あなたを逮捕します」
言うが早いか、アンドリューは容疑者の上着の襟をつかみ、どこかへ引きずっていきました。

◆◆◆

市民側も負けてはいられません。
メタポリスに対抗し、「アンドリュー・レーダー」が開発され、飛ぶように売れました。
アンドリューがあなたの100メートル以内に近づくと、レーダーが反応。
ブルブルと震えて(=バイブレーションで)、あなたに合図を送ります。
メタボ気味なあなたは、ただちに逃げの態勢に入るというわけです。

アンドリューが早いか、人間が早いか。
日本列島のあちこちで、ロボットと人間の追いかけっこが展開されました。

かくいう僕も秋葉原でアンドリュー・レーダーを買いました。
赤・黒・メタルの3種類あったのですが、メタルにしました。
消費税込みで42,000円でした。
安くはありませんが、仕方がありません。

「ついでに佐久間象子レーダーも欲しいんだけど」
冗談で店員さんにそう言ったら、何を思ったか、店員さんは奥の倉庫から地震計を出してきました。

さて、買ったばかりのアンドリュー・レーダーを内ポケットにおさめた僕。
これでひと安心だと思っていたのですが…。

その後に、予想外の災難が待ち受けていたのでした。

(以下次号)

 

 

 

 

 

 

 

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2010.02.03 00:36

メタボ狩り その1 黎明編

 

 

松宮園生です。

2XXX年。
国会で、
「メタボ基本法」
がついに可決されました。
メタボを取り締まる法律です。
「メタボ警察」
が、メタボな人をつかまえ、裁判にかけ、
「メタボ刑務所」
に送り込むというキツーイ法律です。
メタボ刑務所では厳しい保健指導が行われ、メタボから脱却するまで出所できません。

そんなわけで、全国各地でメタボ裁判が始まりました。
メタボ警察はメタボな人をどしどし検挙します。
世間の人はそれを
「メタボ狩り」
と呼び、恐れました。

検挙された被告人は弁護士を雇って裁判にのぞむのですが、メタボ狩り専門の弁護士は
「メタ専」
と呼ばれました。

◆◆◆

裁判で有罪となったら、「メタボ刑務所」行きです。
メタボ刑務所に服役中の囚人は、刑務官(管理栄養士)の保健指導を受けます。
コミュニケーション上手な管理栄養士が刑務官に選ばれていますので、保健指導自体には人気がありました。

しかし毎朝6時に朝礼があり、
「脱メタ宣言」
を大声で合唱させられるのには囚人たちも閉口しました。
こんな内容です。

<脱メタ宣言(食事・食育編)>
作詞・作曲: 管理栄養士 佐久間象子


早寝早起き朝ごはん
神に誓ったその日から
あなたとわたしの本能寺
忘れ敵(かな)わぬジャンクの味を
忘れてみるのもテクニック
食で養生、大往生
ピンピンコロリと来たもんだ
オーガニックに全粒粉
カルタ覚えて紙芝居
家族団らん地産地消
レッツビギン、ラララ
レッツビギン、ラララ

歌詞はまだまだ続くのですが、書いてて恥ずかしくなったのでここで止めます。

◆◆◆

「メタボ刑務所」での刑期(保健指導)を終えて出所するときは、こんなベタな場面が繰り広げられます。

服役囚 「お世話になりました。おかげさまですっかり痩せました」
刑務官(=管理栄養士) 「もう2度と、こんなとこ来ちゃだめよ」
服役囚 「へえ。これからは心を入れ替えて真面目な食生活に励みます」
刑務官 「リバウンドしないでね」
服役囚 「決していたしません」

服役囚は塀の外に出て、ベタにこう言います。
「ああ、シャバの空気はうめえなあ…」
「あなた」
振り向くと、妻が小さな女の子の手を引いてて立っています。
妻の目には涙が。
「お帰りなさい…」
「ただいま…」
見つめあう2人。
妻が娘に向かって言いました。
「あなたのお父さんよ。こんにちはって言いなさい」
しかし女の子は恥ずかしがって母親の陰に隠れてしまいました。

なんつて。
こんなん書いてて恥ずかしいのは、こっちだよ。

◆◆◆

メタボとの戦いはこれからも続くのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2010.01.25 20:32

スローライフ・ラプソディ

 

松宮園生です。

「スローフード」とか「スローライフ」という言葉が人々に
支持されるようになってだいぶ年数がたったように思います。
それっぽい飲食店もいろいろ誕生していますね。
しかし、その一方で「ファーストフード」のお店は根強く残っているし、
「我が社はスピード経営じゃ。スローライフなんて言う社員はいらん」
と息巻く会社もたくさんあります。
つまり、日本の大都市あたりはスローなものとファーストなものが混在している感じです。

そんな傾向が激しくなった未来の日本を想像してみました。

◆◆◆

20XX年のある日。
長いことオーストラリアに住んでいた柴山純夫さんでしたが、日本に帰国することになりました。
本人はもっとオーストラリアにいたかったのですが、いろいろ事情があったようです。
そのへんの事情に深入りするのはやめておきましょう。

数年ぶりに成田空港に到着した柴山さん。
入国審査で役人からこんなことを言われました。
「ファーストライフとスローライフ、どっちに入国しますか?」
「は?」
「いや、ですから、ファーストライフとスローライフ、どちらかを選んでください」
「選ぶんですか? 意味が分からないのですが」
「飛行機の機内で説明があったはずですがね。今の日本は、ファーストライフ地域とスローライフ地域に分かれているのです。両者のあいだを行き来するときは、パスポートが必要です」
「し、知らなかった…」
「柴山さんは、今晩はどこにお泊りですか?」
「はあ。これから住むためのアパートを探すんですけど、探しているあいだは池袋の西急ホテルに泊まる予定です」
「それでしたら、ファーストライフ地域になりますね」
言いながら、入国審査官は柴田さんのパスポートに「FAST」というハンコを押しました。

入国審査と税関をパスして先に進むと、大きな電光掲示板に
「ファーストライフの方はこちら」
「スローライフの方はこちら」
と表示されているのが目につきました。
その指示に従ってファーストライフのほうに進むと、東京の都心にむかう電車が待っていました。

いきなりこんなアナウンスが流れました。
「東京行き特急ウサインボルト2号は間もなく発車です早く乗ってください間に合いませんよ切符がまだの方は急いで買ってください切符売り場は改札の隣りにありますあと30秒で出発しますカウントダウンを始めます30、29、28…」
ものすごい早口のアナウンスでした。
その場にいた人々が津波のように切符売り場に押し寄せます。
SUICAやPASMOを持っている人々は全力疾走で改札を抜けてゆきます。
柴山さんはわけもわからずに切符を買い、周りの人々の真似をして電車に向かってダッシュしました。
「7、6、5…」カウントダウンが続きます。「3、2、1、ドアが閉まります危ないからもう乗らないでください乗り遅れた人は3分後に次の便が出ますからそれに乗ってください」

さりげなく4が飛ばされています。

バシュ!
自動ドアがものすごいスピードで閉まりました。
なんとか間に合った柴山さん、吊革にぶら下がってぜーぜー息をしています。
「次の便が3分後に出るんだったら、こんなに慌てなくていいじゃん」
息が荒いにも関わらず、そんなツッコミを思わず口にしてしまうところが、さすが柴山さん、余裕です。

なんて余裕をかましている場合ではありませんでした。
電車が、5Gくらいの加速で走り始めたのです。
柴山さんの体は、持ってきたカバンもろとも、後方に転がっていきました。
同じように転がっている乗客が、ほかにも大勢いました。

柴山さんが入った「ファーストライフ地域」では、何もかもがこんな具合でした。
お腹が空いたので池袋駅前の回転寿司店に入ると、なんとテーブルがF1レースのようなスピードで回っています。
柴山さんの好物のイクラの軍艦巻きが見えたので手を出したのに、出したときには皿は遥か彼方に走り去っていきました。
他のお客さんはどうしているかというと、ものすごいスピードで皿をつかんでいます。
まるで、カメレオンが素早く舌を出して昆虫を捕まえるような、そんなスピードです。
「これは練習をしないと、食事もできないぞ…」
焦る柴山さん。
さらに恐ろしかったのは、ほとんどのお客さんが入店してから1分くらいで満腹になって出て行ってしまうことでした。

缶コーヒーを買おうと自動販売機の前に立つと…。
ガチャン!
お金も入れていないのに、コーヒーが出てきました。
柴山さんが茫然とその場に立っていると、自動販売機から自動音声で
「早くお金を入れてください入れてくれないと警察を呼びますよあと10秒で警察を呼びます10、9、6、5…」
「また数字を飛ばしてる!」と文句をいいながら、柴山さんは慌ててお金を入れました。

西急ホテルのフロントでは、ホテルマンがこんなことを言いました。
「いらっしゃいませお客様チェックアウトでしょうか?」

◆◆◆

「だめだ。こんなところにいたら死んでしまう」
柴山さんは西急ホテルに泊まるのをやめ、その場でまわれ右をしました。
「スローライフ地域に移動しよう」
そう思ったのです。

ホテルの外に出ると、偶然、「スローライフ地域行き」のバスがありました。
「乗るの載らないの?乗るなら急いで乗ってお客さんぐずぐずしてると出ちゃうよ」
と、運転手が柴山さんに声をかけました。
柴山さんは大急ぎでバスに乗り込み、言いました。「スローライフ地域行きのバスなのに、運転手さん、あんたはずいぶん性急なんじゃない?」
「ここはファーストライフ地域ですからこちらの法律にしたがっていなくちゃいけないんですところでパスポートはお持ちですか」
運転手は昔のカセットテープを早回ししたような声で答えました。

柴山さんがパスポートを見せると、運転手は今度は「SLOW」というハンコを押しました。

バスはまたもや5Gで加速し、高速道路でもないのに時速110キロで都心を爆走しました。
それでも後続のクルマにどんどん追い抜かれています。
10分後に、バスはスローライフ地域に入りました。

とつぜん、バスが停止しました。
運転手が、今度は妙に間延びした声で
「スローライフ地域に到着しましたよー。ここから先は徒歩になりまーす。気が向いたら降りてくださいねー。中にいたければ明日の朝までだったらいてもいいですよー」
運転手自身が今度は大あくびをし、帽子を顔に載せて居眠りを始めました。
柴山さんはあきれましたが、西急ホテルをキャンセルしたせいで今晩泊まるホテルがないことを思うと、朝までバスにいられるのは大助かりです。
風呂には入れませんが、贅沢は言えません。
柴山さんもひと眠りすることにしました。
オーストラリアからの長旅の疲れが、どっと出てきました。

ぐっすり眠った翌朝、さわやかな気分でバスを降りた柴山さん。
とりあえず何か食べようと周囲を見回すと、意外なことにハンバーガーショップが停留所の近くにありました。
「おやおや、スローライフ地域なのにハンバーガー売ってんだ」
他に選択肢もなかったため、とりあえず入ってみると…。
「いらっしゃいませ、こんにちはー」可愛らしい女性の店員が、笑顔で柴山さんを迎えました。「何になさいますかー?」
ちょっと赤くなった柴山さんでしたが、「じ、じゃあ、この100%オーガニック・ダブルサイズ・バーガーをください」
肉も、バンズ(ハンバーガーのパンのこと)も、レタスも、調味料も、すべて厳選された材料で、かつオーガニックにこだわったものだと、メニューには書いてありました。
店員はふたたびにっこりし、
「はーい。ありがとうございまーす。ではお会計、920円になりまーす」

ダブルサイズで、すべてオーガニックだと思えば、920円もまあ、なんとか納得感があります。
柴山さんが920円を支払うと、店員が番号札を渡してくれました。
「この番号札をお持ちになって、お待ちくださーい。お呼びいたしますからー」

「さすがはスローフードだな。ハンバーガーも、ちゃんとオーガニックになってるし」
スローライフ地域がすっかり気に入った柴山さん。
受取った番号札を握りしめ、近くのテーブルに向かいました。
透明な窓から柔らかな朝日が、腰かけた柴山さんの背中に降り注いでいます。

◆◆◆

番号が呼ばれたのは、2日後のことでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2010.01.21 18:40

21世紀神様の悩み その2

 

 

松宮園生です。

繁栄にあぐらをかき、飽食をむさぼる先進国。
彼らに鉄槌を下すことにした全能の神様は、
「ウエルネス天国」
「メタボ地獄」
を作りました。
ストイックに生涯を全うしたらウエルネス天国行き。
飽食におぼれメタボのまま死んだらメタボ地獄行き。

そんな世界観で展開される人間ドアラマ、第2回です。

◆◆◆

「最後の審判の日」時計(Doomsday Clock)
というのが本当にあるのをご存じでしょうか?
宇宙戦艦ヤマトじゃないけど、
「人類滅亡まで、あと××分」
というのを示す時計です。

シカゴ大学にあります。
「原子力科学者ブレティン」
という名前の科学雑誌がその時計を管理しています。

時計の針は進んだり後退したりします。
核戦争の可能性とか、地球温暖化などの環境問題とかを考慮して、
「人類滅亡まで、あと××分」
が決められています。
ちなみに、今日現在は
「人類滅亡まで、あと6分」
となっています。

本当に6分後に滅びるという意味ではありませんが、
「あと6分しかない、くらいに人類や地球のことを真剣に考えなさい」
ということを警告しているわけです。

◆◆◆

死んだばかりのある男が「メタボ地獄行き」を天使から宣告され、空港に到着しました。
これからメタボ地獄行きニュートリ航空459便に乗るのです。
指定された搭乗口にむかって、男はしょんぼりと歩いています。
「そんなに落ち込まないでよ、おじさん」見送りの天使が男の肩を軽くたたきました。「模範囚として認められたら、メタボ天国に行けるからさ」
「そんなこと言うたかて、わて、情けないわ」

男がなにげなく顔をあげると、コンコースの壁に無数の時計がかかっているのが目に入りました。
「時計がぎょうさんありまんなあ」男は言いました。「なんの時計でっしゃろか?」
「ああ、それはね」天使が答えました。「食育時計っていうんだ」

「食育時計?」
「神様が眉をひそめるような食事をしたら、時計の針が進むんだよ。暴飲暴食したりとか、ジャンクフードを食べたりとか、野菜を食べなかったりとか、寝る前に甘いものを食べたりとかすると、針が進む」
「そりゃまた、ごっつい時計でんなあ」

「あそこにロココ風のデザインの時計があるでしょ?」
「あれでっか」
「そう。あれはマザー・テレサの時計だよ」
「マザー・テレサでっか」
「マザー・テレサの時計はまったく針が動かなかった。彼女の食生活は完璧だったんだ」
「はあ…」

「それから、向こうに大きな振子時計があるの、分かる?」
「向こうの、あれでっか」
「あれはアンドリュー・ワイルという人の時計だよ」
「はあ」
「食育の世界では世界的に有名なお医者さんだよ」
「はあ」
「ワイル先生の時計はね、まだ2分しか針が動いていない」
「2分」
「要するに、今まで2回だけ、メタボな食事をしたことがあるってこと。あとは全部、立派な食事をしている」
「わてには真似できまへんわ」
「大丈夫。メタボ地獄に行ったらできるようになるから」
「ひー」

しばらくして、男が言いました。
「そや。わての時計は、どれでっか?」
「うん、それがね」天使は言いました。「おじさんのは、ここには、ないんだ」
「どこにありまんねん?」
「おじさんが生きてるあいだ、時計は神様のオフィスに置いてあったよ。まだ置きっぱなしだと思うけど」
「神様のオフィスでっか」
「うん。近ごろは天国も温暖化しててね。神様のオフィスで、扇風機がわりになってた」

 

 

 

 

 

 

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