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日本食育大学未来学部

2010.03.13 15:52

メタボ狩り その7 策謀編


 

松宮園生です。

 

ある日のランチタイム。

仕事の手を休め、ひとりでファミレスで食事をしていると…。
メタボ警察の回し者、食育ロボットのアンドリューがやってきて、僕の向かい側に座りました。

「なんだよ今度は。もうメタボじゃねーかんな。見ろよ」
僕は自分の臍のあたりを指さします。
「あなたの腹囲が縮んだのは認めます。メタボ刑務所に服役してたわけですから。服役中のヘルシーな生活で、腹囲が縮んだのです」
アンドリューが涼しい顔でいいました。

涼しい顔?
自分で書いといて何だけど、どんな顔だっけ。
ていうか、アンドリューはロボットなんだから表情いつも一緒だし。

「メタボ狩りじゃないなら、何の用?」
「あなたが食べているそれです」
「これ?」
「そうです。問題があります」
「娑婆(しゃば)に出たら何を食べようと勝手だろ」
「ふつうの人はそうです。しかしあなたには前科がありますから、出所後3年間、わたしの監視下に置かれます」
「何だよそれ。聞いてねえぞ」
「当然です。言ってません。紙に書いて渡しただけですから」
「なんだそりゃ。一休さんのトンチかっつーの」

「さっそくですが」アンドリューはまたもや涼しい顔でいいました。「何を食べているのですか」
「カレーライスだよ。見りゃ分かるだろ」
「カロリーはチェックしましたか」
「したよ。メニューに書いてあった」
「何カロリーですか」
「それはだな…。メニューを見たら分かる」
テーブル上のメニューを開こうとした僕の手を、アンドリューが押しとどめます。
「カンニングはいけません。言いなさい」僕の手を掴んだまま離さないアンドリュー。「何カロリーですか」

「カンニングって、あんた…。700ちょっととかだったかなあ。正確な数字なんて覚えてねえよ。いいじゃんか。高カロリーのものを選んだつもりはないしさ。仮にカロリー高くてもだよ、ランチだぜ。寝る前にドカ食いするわけじゃないんだから」
「そんなことは問題ではありません、この前科者。あなたがカロリーの数値をちゃんと頭に入れていないことが問題なのです。では次の質問」
「次の質問?」
「塩分の量を確認しましたか?」
「そんなこと、するわけないだろ」
「ここのメニューには塩分量が書いてあります」アンドリューは僕の手を離し、自分でメニューを開きました。「ほら、見なさい、前科者」

塩分量が書いてありました。
カレーライスは、2.5g となっています。

「もうひとつ質問です」
「まだあるの?」
「当然です。あなたは前科者なのですから。…トランス脂肪酸の量を確認しましたか?」
「トランス脂肪酸?」
「さてはこれもチェックしてませんね」
「するわけないだろ。そんなもの、メニューに書いてないじゃん」
「書かれていなかったら、お店に聞きなさい。答えられない店だったら、入ってはいけません。それにしてもダメですねあなたは。カロリーもうろ覚え、塩分量 も見ていない。トランス脂肪酸のことも頭から抜けている。とても刑期が終わった人とは思えません。罰として、このカレーライスは値上げします」
「は?」

おもむろに店長を呼ぶアンドリュー。
やってきた店長に向かってアンドリューは言いました。
「わたしはメタボ警察のアンドリューです。このカレーライスはいくらですか」
「しょしょ、消費税込で、は、880円になります」
「では、『メタボ撲滅推進法』にもとづき、この人だけ今回、価格10倍の8,800円にしてください」
「ちょっと待て。え? 8,800円?」僕は思わす立ちあがりました。「そんなムチャクチャな」

さすがにこれには店長も、
「そ、そんなことしたら、こ、このお客様は、も、もうウチに来、来てくれなくなりなります」
「そうだそうだ」僕も便乗しました。「そんな店、もう来ないぞ」
アンドリューは首を横に振りました。「そうはいっても、『メタボ撲滅推進法』という法律で定められているのです。…店長さん、ちょっと2人でヒソヒソ話をしましょう。前科者のマツミヤさんはここにいなさい」
「前科者、前科者って、言うな」

アンドリューと店長が、僕の聞こえないところで立ち話をしています。
しばらくして、2人が握手をするのが見えます。
アンドリューはそのまま、立ち去っていきました。

店長が僕のテーブルに戻ってきました。
「お、お客様、お、恐れ入ります。や、やはり、こ、これは、ほ、法律だそうで、ここ、今回は、は、8,800円を、せ、請求させていただきます。ま、誠に恐れ入ります。ここ。これが8,800円の、で、伝票です」
「おいおい、待ってよ。本気か? だったらもうこんな店、2度と来ないぞ。つーか、その話し方、なんとかしてくれよ」

店長はニコニコして答えました。
「だ、大丈夫です。や、やむを得ません。いい、いまアンドリューさんから、こ、こういう説明を受けたんです。

アンドリュー: あの客、死ぬまでにこの店にあと何回来ると思いますか、店長さん?
店長: ど、どうでしょうか、じゅ、10回くらいでしょうか。
アンドリュー: じゃあその10回分のお金を今もらってしまえば、もう来なくても大丈夫ですよね。
店長: なな、なるほど、そ、それはそうです。
アンドリュー: だから8,800円なんです。しかも追加のコストがかからない。トクでしょ。

でで、ですって。
な、納得しちゃいま、ました。さ、さすがはロ、ロボット、たた、巧みな計算をするものですねえ。あ、あはははは」

あ、あはははは、じゃねえよ…。

「そそ、それから、あ、アンドリューさんから、で、伝言があります」店長は続けました。「『次がありますのでもう出ますが、夕食時に、また会いましょう』、とのこ、ことです」

 

 

 

 

 

 

 


 

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2010.03.11 13:48

メタボ狩り その6 飛翔編

 

 

松宮園生です。

メタボ警察の片棒をかつぎ、メタボな人を追いかけて捕まえては
メタボ刑務所に送り込む、食育ロボットのアンドリュー。
天才科学者ロバート・シトピッチャン教授が開発した人間型ロボットです。

その食育ロボットですが、それがアナタ、驚きましたよ。
アンドリューのやつ、ブログを書いてやがったのです。
こんなブログです。

 

◆◆◆

 

ブログの題名: 「愛ロボット」

 

<アンドリューさんのプロフィール>

わたしはアンドリュー。
正式には「アンドリュー77型 製造番号14」であります。
日本食育大学のロバート・シトピッチャン教授によって開発された食育ロボットです。

* 身長: 170センチ
* 体重: 89チログラム。数字だけ見ると肥満でありますが、メタル製ですので身長のわりに重いのであります。
* 職業: 食育
* 好物: 交流電気(とくに50ヘルツ)
* 趣味: 罰を与えること
* 得意技: 徹夜
* 苦手なこと: 暗算
* 貯金: 883円
* その他: ロボットではありますが、合体とか巨大化とかはお断りいたします。

(チログラム?)

 

<アンドリューさんの最新日記>

「うららかな食育日和」(3月11日)

今日はいい天気。
「こんな日は、お外で食育したい」と思い、
わたしはアースカラーのダウンジャケットを羽織って太陽の下へ。
わくわく気分で、縄張りを巡回しましたあ。

(服、着るのかよ)
(縄張り? 巡回? ←猫か)

むかうは近くの公園。
いつのまにか桜が…。
春色の空に、白紅色の花びらが顔をチラチラさせていて愛らしいのであります。

池のほとりでデジカメをバシャリ。
最近、アンドリューの心に美意識が芽生え始めましたよ。

親子がお弁当を食べています。
ちょっと拝見。
おやおや、コンビニ弁当をお弁当箱に詰め替えただけじゃないですか。
ダメダメ、そんなことじゃあ。

若い母親に愛のロケットパンチをお見舞いするアンドリューなのです。

でもロケットパンチをしたあとは、落ちた拳(こぶし)を拾いにいかなくちゃいけません。
遠くに飛んでいった拳(こぶし)を探すのに30分もかかっちゃいました。
やっと発見し、ついていた血のりをぬぐってから、装着。
それから池のまわりを1周。
遠くで救急車のサイレンの音。

池の散策を堪能したあと、看板に惹かれてオーガニック・コーヒー屋さんへ。
「本当にオーガニックなの?」
「有機JAS認証を見せてください」
「トレーサビリティはしっかりしているの?」
「フェアトレードって知ってますか?」
さんざん追及するアンドリュー。
バイトの店員が泣きだし、マスターが怒り出します。

ちょっとやりすぎちゃったかな。
でも食育は大切なんです。
くじけませんよ。

ところで、実を言うとわたしはコーヒーを飲むことができません。
頼んだコーヒーはそのまま手をつけず、電源コンセントを借りて自分をチャージしながら、読書を楽しみました。

帰る途中で、デパチカ探訪です。
電卓をたたきながら、並んでいる食品やお惣菜の自給率をチェック。
わたしは、メニューを見ただけで食材の自給率がだいたい分かるんです。

このデパチカの平均自給率は22パーセントでした。
ちょっと低すぎますね。
隣のデパートは、28パーセントでしたよ。
わたしは「責任者を呼べ」と大声をだし、あたりは騒然となります。
やってきた責任者に、愛のスペシウム光線をお見舞いするアンドリューなのです。

スペシウム光線はロケットパンチと違い、出しっぱなしで済むので助かります。
何かを拾わなくてもいいので…。

担架で運ばれる責任者。

その哀れな姿を尻目に、わたしは「完全地産地消! あらゆる材料が国産でできた鍋焼きうどんセット」を購入。
ルンルン気分(←死語)でお家に帰りました。
自分では食べないんですけど、こういう「食育商品」を見つけると仕事の励みになります。
どうせ仕事をするなら、イヤイヤじゃなく、ハッピに。
自分がハッピになる工夫をしていきたいのであります。

(ハッピじゃなくてハッピーだろ)

そんなこんなで、いい天気の中、ゴッキゲン(←死語)な1日を過ごしました。

 

◆◆◆

 

こんなブログでした。
よくある「わたしの生活ってステキでしょ」系の文体なのに、内容がコワイ…。

 

 

 

 

 

 

 



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2010.03.06 20:06

ファッショナブルな食育

 

松宮園生です。

 

<ファッショナブルな食育>

ファッション誌には、よくこういうのが記載されていますね。

ジャケット(タケオ・キクチ) 72,000円
シャツ(コム・デ・ギャルソン) 22,000円
ネクタイ(ドルチェ & ガッバーナ) 12,500円


さて。

ファッション系のブランド各社が、農作物を作り始めたとしましょう。
料理雑誌の書き方がこんなふうに変わったりして。

「マッシュルームのリゾット オレゴン風」

マッシュルーム(コムサ・デ・モード) 250円
シイタケ(カルバン・クライン) 200円
タマネギ(メンズ・ビギ) 120円
長粒米(トゥモローランド) 120円
参考商品:パルメザンチーズ(福助)

 

 

<非ファッショナブルでキケンな食育>

夜の繁華街の路上で、こんな会話が交わされたりして。

「そこのイケメンのお兄さん」
「え? おれのこと?」
「そう、あ・ん・た。最近、メタボ対策してる?」

「メタボ対策? そういえば、このところご無沙汰だなあ」
「でしょー。だってお腹、出てるし」
「そんなに出てるかなあ」
「しっかり出てるよ。それ、ヤバい。彼女、逃げちゃうよ」
「いやー、参ったなあ」

「いただきますって、ちゃんと言ってる?」
「うーん、そういえば、このところ言ってないかなあ」
「でしょー。だって顔色、よくないし」
「いただきますを言わなかったら、顔色悪くなるわけ?」
「決まってるじゃない。学校で教わったでしょ」
「そっかー、言われてみればそんな気もする。参ったなあ」

「農作業してる?」
「は? おれ農家じゃないけど」
「農家じゃなくたって、農作業はやんなきゃ。援農ボランティアとか、市民農園とか、あるでしょ」
「うーん」
「農作業しないと、自給率、下がっちゃう…」
「それって、おれの問題というより、国の問題じゃね?」
「なに言ってんの。そんなことじゃ、農業の活性化は進まないわよ」
「そうかもねー」

「だからさ、たまには楽しく食育でも、どう?」
「食育ねえ…」
「安くしとくわよ」
「どうしようかなあ」
「たまには、いいじゃない。思い切り弾(はじ)けちゃいなよ」
「食育って、弾(はじ)けるものなの?」
「そうよ。ね? だから一緒に食育しましょうよ」

「そっかー。そうだなあ。たまには、食育もいいかなあ」
「そうこなくっちゃ。ではご案内します。…お一人様、ご案内でえす」

 

 

 

 

 

 

 



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2010.03.01 01:46

ナチュロパシック・ドクター その2

 

 

松宮園生です。

 

アメリカに
「ナチュロパシー」
と呼ばれる分野があります。
世界各地に伝わっている健康法や治療法、食事療法なんかを総合的に研究しています。

ナチュロパシー専門の大学もいくつかあります。
こうした大学で6年間かけてしっかり学び、州政府が実施する試験に合格すると
「ナチュロパシック・ドクター」
として認定され、開業することができます。
いわゆる医者(メディカル・ドクター)とは違うのですが、治療みたいなことをすることが許されています。

メディカル・ドクターで食の世界に詳しい人は少ないです。
しかしナチュロパシック・ドクターは大学で食の勉強もしっかりやりますので、
「食にやたら詳しい医療技術者」
というイメージがあるようです。

◆◆◆

友人のヨロオネ先生はナチュロパシック・ドクターです。
シアトルにある「バスティーア大学」を卒業し、試験にうかって開業しました。
(バスティーア大学は全米でも有数のナチュロパシー大学です)

ヨロオネ先生はケイン・コスギにちょっと似ててまあまあの男前です。
さすがに身体能力はケインほど高くはないと思うけど。
マジメ系で、礼儀正しいイメージもなんとなく似てます。

彼は人気のあるナチュロパシック・ドクターです。
人気の秘密は何だと思うかと聞いたところ、
「ナチュロパシック・ドクターといえども、大事なのは知識やスキルじゃなくて、人間。人間を理解する力ですよ」
というのがヨロオネ先生の答でした。

人間を理解?

たとえばこんなことがあったそうです…。

◆◆◆

春もうららなある日。
若いきれいな女性がヨロオネ・クリニックにやってきました。
「サンドラ・ジョーンズといいます」診察室で、彼女は上目づかいにモジモジしながら言いました。「先生あのね、太ももの内側が赤く腫れて痛いんです」

「そうですか」
ヨロオネ先生は警戒しながら応えました。
ここで気軽に「どれどれ拝見」というわけにはいかないのです。
セクハラと思われないような対応をしなければなりません。

ヨロオネ先生は落ち着いて言いました。
「患部を私に見せて治療を受けますか? それとも見せずに治療を受けますか?」

「見せるのはとっても恥ずかしいんですけど」とサンドラ。「先生にだったらいいわ、あたし…」
スカートに手をかけたサンドラを、ヨロオネ先生はあわてて押し止めました。
「ちょっと待ってください」
先生はアシスタントの女性を呼び、立ち会うよう指示しました。

女性アシスタント同席のもと、ヨロオネ先生はサンドラの内股を診察しました。

サンドラの腿(もも)の内側にたしかに腫れ=炎症箇所があります。
きわどい位置に、全部で2箇所。
左右の腿にひとつずつです。

ヨロオネ先生は5秒で診察を終え、サンドラにスカートをはくように言いました。

◆◆◆

「さて松宮さん。ここでクエスチョンです」
と、ヨロオネ先生。

ここでクエスチョンです、って、「世界・ふしぎ発見」かよ!

中途半端なツッコミには耳もかさず、ヨロオネ先生は続けました。「あなただったら、サンドラにどんなアドバイスをしますか?」
僕は首をかしげました。「いやさっぱり分かりません。ていうか僕はドクターじゃないし」
「ドクターかどうかは実は関係ないんです」と、ヨロオネ先生。「ここで人間を理解する力がものを言うんです」

どゆこと?

続きを読んでみましょう。

◆◆◆

ヨロオネ先生が処方箋を書いているあいだ、サンドラは口をとがらせて文句をたれます。
「先生。たった5秒しか診てくださらないなんて、ひどいわ。5秒で何が分かるんですか。あたしが嫌いなの?」
その質問は黙殺されました。
「もう、先生ったら」

ほどなく、患部に塗るための混合ハーブの処方箋を、ヨロオネ先生はサンドラに渡しました。
「ミス・ジョーンズ」先生はようやく口を開きました。「私の推理ですが、ひょっとして、あなたの彼氏はハーレー・ダビッドソンに乗って、皮ジャンを愛用するタイプじゃありませんか?」

サンドラの目は驚きで丸くなりました。
「そ、その通りです。どうして分かったの…?」

「やはりそうでしたか…」
ため息をつくヨロオネ先生。
「では、その彼氏に私からの伝言を届けてもらえませんか?」
「伝言?」
「はい。伝言の内容はこうです。『おたくのピアスは本物のゴールドじゃないぜ』」

 

 

 

 

 

 



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2010.02.25 00:10

ナチュロパシック・ドクター その1

 

松宮園生です。

アメリカにはナチュロパシック・ドクターという専門家がいます。
食育と東洋医学を足したような領域のお医者さんです。

シアトルにバスティーア大学という有名な大学があります。
ナチュロパシック・ドクターになりたい人が通う大学です。
日本人留学生もちらほらいます。

友人の1人、ドクター・ヨロオネが2年前、念願のナチュロパシック・ドクターの
ライセンス試験に合格し、昨年クリニックを開業しました。

ナチュロパシック・ドクターのところに来るのは、
「病気を治したいが、西洋医学には頼りたくない人」
「病気ではないが、専門家の力を借りて病気予防をしたい人」
こんな人たちです。

◆◆◆

 

ある日。
ヨロオネ先生の診察室に、派手な格好の年配の女性がやってきました。

「今日はどうしましたか、ミセス・メープル?」患者に安心してもらうため、優しく話すヨロオネ先生。
「オナラがでるのよ、先生」と、ミセス・メープル。「オナラが出るんです」
「人間なら誰でもオナラくらいしますよ」
「わたしの場合は、1分に1度、オナラがでるのよ。1分に1度ですよ。昨日の朝からずっとこんな感じで」
「そうでしたか。それはお困りでしょう」
「ホントですよ。理由は分からないんですが、音も匂いもしないのがせめてもの救いですわ。これで音や匂いがしようものなら、恥ずかしくて外出できませんもの」
「はあ」
「なんとかしてください先生。オナラが出続けるなんて情けなくて、情けなくて」
「分かりました」ヨロオネ先生は何種類かの薬草を混ぜ合わせる処方箋を書き、ミセス・メープルに渡しました。「バスティーア大学の付属薬局にこれを渡してください。ハーブのサプリメントを処方しておきました。3日たったらまた来てください」
ヨロオネ先生は、ハーブを使って治療をするのが得意なのでした。

3日後、ミセス・メープルが眉をつりあげて診察室に入ってきました。
「先生。先生の処方したハーブのサプリメントを飲みましたよ。そしたら症状が悪化したじゃないですか」
「悪化しましたか?」
「そうですよ。オナラは相変わらず続いてます。1分に1度、出てます」ミセス・メープルはメガネの奥からヨロオネ先生をにらみつけました。「悪化したように見えるのは好転反応です、なんて怪しいことを言うんじゃないでしょうね」
「どう悪化したんですか?」
「音が出るようになったんですよ、今朝から。昨日まで音がしなかったのに。音が出るんですよ。どうしてくれるんですか。医療ミスですか」
「そうですか。それは良かった」
「なんですって?」
「ミセス・メープル。これであなたの耳は治りました」ヨロオネ先生は言いました。「次はあなたの鼻を治すハーブを処方しておきましょう」

 

 

 

 



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